アスペ・エルデの会

長崎市における少年の殺人事件に関する
報道に対する緊急提言

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NPO法人アスペ・エルデの会 理事長・統括ディレクター  辻井正次
統括顧問   杉山登志郎

 去る7月1日に発生した長崎男児殺害事件は許すことのできない凶悪な犯罪です。この事件で亡くなられた種元駿ちゃん並びにご遺族の皆さまに深く哀悼の意を表します。

この事件に関しまして、犯人の少年が広汎性発達障害、あるいはアスペルガー症候群(アスペルガー障害)という鑑定結果だったという報道がなされています。
私たちは、この事件によって偏った報道が行われることを恐れ、またこの様な不幸な事件が再び起こらないために以下、提言を行います。

アスペルガー症候群および高機能広汎性発達障害が犯罪に絡む可能性は非常に低く、これは例外的な事件である。もとより子どもの起こす犯罪や殺人事件はそのものが子どもの未熟性によって、説明が困難な飛び抜けた事件になることが多い。その意味ではこれらのハンディキャップを抱えた青少年による事件も、それ以外の子どもの生じた事件と同一である。

わが国において、高機能広汎性発達障害を持つ青少年によって生じたとされる殺人をはじめとする重大な犯罪が、この数年の間に何件か生じていることは事実でありそれを否定することは出来ない。だが、この様な場合はいずれも<未診断、未治療>であり、診断を受け治療教育を受けてきた青少年においては、犯罪や触法行為は極めて例外的である。従って、もっとも確実な予防法とは、このグループの児童・青年について、早期に診断がなされ、きちんとした治療が行われることである。

わが国においては、高機能広汎性発達障害へのケアシステムの構築は極めて不十分であり、さらに不採算性の為、高機能広汎性発達障害の診断や治療が可能な専門家は著しく少ない。

従って、この問題の解決の為には次の推進が必要不可欠である。
  1. 乳幼児健診の精度を高め、高機能広汎性発達障害の早期発見を可能にする。
  2. 幼児期から地域で高機能広汎性発達障害への療育を行うシステムを作る。
  3. 小児の心のケアについて、保険診療においても採算が合うものとする。また、この領域の専門家を十分に増やす。恐らく、現在の10倍は必要と考えられる。
  4. 学校教育において高機能広汎性発達障害の児童が十全な教育を受けることが出来るシステムを作る。また、それが可能になるための教員の(実習を伴う)研修を充実させる。
  5. 就労に関して援助が可能なシステムを作る。障害者枠での就労が可能になる諸制度を整備する。
  6. コミュニティレベルでの日常的で総合的な支援が可能になるように、NPO、親の会などの活動が市民活動として活発化できるような施策を充実させる。