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大阪維新の会 大阪市会議議員団御中


要 望 書

大阪維新の会市議団が検討されている、「家庭教育支援条例(案)」における発達障害の理解は間違っており、多くの発達障害児者本人とその家族、関係者を困惑させる内容となっております。すでに、2004年12月3日にわが国は「発達障害者支援法」を成立させ、その文面に発達障害の基本的な定義として、生来の脳の機能的な問題が基盤にあることを規定しています。
ところが、貴市議団の条例案では、発達障害が親の育て方で生じるという理解に基づいて、第4章の第15条では、「乳幼児期の愛着形成の不足が軽度発達障害またはそれに似た症状を誘発する大きな要因」、第18条では「わが国の伝統的子育てによって発達障害は予防、防止できるもの」としていること等は、極めて問題です。もしも、こうした条例案の第15条や第18条が正しいとするなら、それに対応する科学的根拠を明確にお示しいただきますようお願いいたします。
親の子育ての仕方によって発達障害が生じるという考え方は、すでに完全に否定されており、貴市議団の主張を支持する科学的な知見は存在しないと理解しております。今回の貴市議団の条例案は、これまで正しい理解を促進していこうという努力を進めてきた当事者団体の取り組みを踏みにじるものです。
発達障害に関しては、早期に発見し、子どもの障害特性にあった育て方をしていくことで、子どもたちが適応的な行動を学んでいけるようにし、子育て支援・保育から特別支援教育を経て、就労における支援までのライフステージを通した支援のなかで、本人と家族が取り組みを進めていくものです。

発達障害に関連する政策立案においては科学的知見を最大に配慮し、これまでの当事者たちの取り組みに理解を示した上で、当事者の声を聞きながら取り組んでいくことを強く求めます。
私ども、特定非営利活動法人アスペ・エルデの会は、発達障害当事者や家族、支援者・専門家たちから構成される団体で、大阪を含む全国に支部的な関係団体をもっております。
わが国は民主国家でいろいろな考え方があるのは理解しますし、「親学」の考え方そのものを頭から否定するわけではありませんが、それを発達障害に直結させる発想そのものに強い憤りを感じます。

どうか、発達障害について、科学的な知見のもと、正確な知識と具体的な方策、当事者たちの取り組みに理解を示したうえで、政策立案に取り組んでいただくことを強く求めます。
私どもは、大阪大学の連合小児発達学大学院の発達支援部門(社会支援学)の責任者を、理事長の辻井が客員教授として、母体となっている子どものこころの発達研究センターの発足時から担っており、科学的な根拠を基盤とした支援施策をすべきだという考えのもと、センターの研究に積極的に協力してきています。
政策立案に必要な最新の知見などをわかりやすく提言する等のご協力は惜しみません。
大阪を、そして、日本全体をよりよくし、発達障害のある当事者と家族、関係者だけではなく、全ての子どもたちが幸福に過ごせるよう、取り組みをお願いします。


平成24年5月7日
特定非営利活動法人アスペ・エルデの会 理事長  辻井正次