2026.01.10
 最近、講演の際に、事前にパワーポイントの資料を送ってください、と言われることが多くなりました。
 うーん、講演ってそういうものでしたっけ。私の経験からすると、演壇に一人で立って、その話術で聴衆を魅了する、というのが良い講演なのですが。そういう大人になるべく、頑張ってきたのですが。
 なぜか、今年は講演の仕事が多かったです。私が断らなかったからかな。できるだけ、幼稚園の仕事に穴を空けないようにしていたんですが、幼稚園も学部も、過疎っぷりが恐ろしいほどになってきて、学部と園の名前が少しでも出るならいいやあ、と来るもの拒まずになりまして。あ、それは言い過ぎか。授業や行事と被ったら、そりゃあ断ります。
 そのうち2つは、資料映像なしでした。2つはありで。
 私としては、前者の方が王道だったし、手応えもあったと思うのですが。
 アンケートの結果として、スライドを使った方が好評。もう、資料がない時点で、手掛かりなしというか、どのように聞けば良いのかわからないようです。それから、パワーポイントを使うと、それを印刷したものを資料としてお渡しするので、良いお土産になるみたいです。
 私がパワーポイントを使った講演をよしとしないのは、本来ならば講演とは一期一会の相手と、目と目を合わせて語るものだと思っているからです。パワーポイント出しちゃうと、あなたも私もスクリーンを見てしまうので、視線が交わりません。

 もしかしたら、人間は以前よりも視覚優位になっているのかもしれません。言葉だけでどうにかしようという場面は少なくなってきました。メッセージのやり取りだって、スタンプだけでもできますし。これは、障害のある人にも使いやすくなるのが大きなメリットで、我が家もその恩恵に預かっています。
 もともと、発達障害の子は視覚優位であることが多いと言われています。言葉の理解(特に行間を読むような)が良くないので、必然的に視覚的な情報に頼ってしまうからでしょう。
 例えば、うちの次男が幼稚園の遠足に行ったときのこと。バスに乗る、遊ぶ、お弁当を食べる、もっかいバスに乗る、をイラストにして、確認することで、見通しを立てて、みんなと同じ行動をすることができました。家で書きながら一回。早めに登園して、バスに乗る前に一回。ポケットに入れて帰ろうとしたら、先生から「いただけますか」と言われました。チラシの裏の殴り描きなので、と遠慮したのですが、ぜひに、と。よく考えたら、遠慮するほどのものですらないですよね。上手である必要はなく、次男に伝われば良いわけですからね。
 子ども達が小さい頃、我が家では、イラスト入りの置き手紙がコミュニケーションツールとして大切な役割を担っていました。トワイライトスクールが苦手で、できるだけ家に帰りたい子達だったので、おやつと手紙はそれぞれに、ほぼ毎日置いていました。
 となると、次男にだけイラスト入りなのは、不公平ですよね。だから、文字だけで充分な長男と長女にも、いろいろと書き込んでいました。
 こんなことを言うと、人は退化しているとか、つまりは障害児レベルだと?とか言われそうです。失礼極まりない言い分ですが、そう言う言い方、今でも良くあります。でも視覚情報を頼るのは、そもそもの本能的なものなのかもしれませんね。なんでも視認するのが基本ですから。人は文字を持つ前から、視覚情報を使って身を守ってきたんです。
 
 講演が言葉のみで語られるものであったのは、そうするしかなかったから。目を見交わしていたのは、見るものが目しかなかったから。もっと便利なツールが出てきたら、それに頼るのも、よりよく活用しようと言うのもあたりまえ。スライドを使うことによって、わかりやすくなったという意見が多いなら、私もよりわかりやすい資料を作る努力をしなきゃです。
 というか、見せていい、という事実を目一杯利用しないと。
 もしかしたら、ここはチャンスかもしれません。年長のときの遠足で、彼は特別に視覚的な情報を使うことを許されていましたが、最初から視覚的な情報があれば、問題ないですものね。
 ああ、でも最後は言葉でわかってほしいな。人類の持つ、宝だから。
 言葉で生きてきた人だから、私は。


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