2026.08.10
 7月中旬の時点で、今年の夏は結構いける、と思っていました。
 私の勤める幼稚園は、名古屋の住宅街のど真ん中にありますが、園庭には巨木古木が多く、夏でも涼しい場所に恵まれていると思います。戦前から同じ場所にあり、そのまま残っているのです。
 5月の連休を過ぎた辺りから、園内のあちこちに熱中症アラートが鳴る機械を設置してあります。5月には早々に反応があったのですが、6月7月とおとなしくて。1学期、アラートなしで行けんじゃね? と思っていたものです。あながち間違ってはいませんでした。酷暑が名古屋に到来したのは終業式の日。通常保育では、1学期最後の日まで、普通に外遊び(この時期なので水遊び)ができました。
 終業式の後、3連休に突入し、それが明けてからが地獄。まさしく地獄。
 私は一週間大学におりましたが、とても暑かった。星ヶ丘がとても暑く、覚王山が涼しいってことはないんだろうなあ、と幼稚園を気にしつつ、珍しく大学の業務に集中しておりました。暑くても、風があればどうにかなるというのが私の持論です。しかし、その風が熱風。風がこんなに暑いのは初の体験では? と思います。冷たいのは夫のお陰でカナダで散々体験したんですが。

 さて、毎年夏になるたびに、こんなこと言ってるわけです。でも、昔は30°超えなんて滅多にありませんでしたよね。どうして、あんなに暑いと思っていたんだろうと不思議になります。でも、エアコンなしでよかったし、外で走り回ってたから、それなりの気温だったんですよね。
 この「災害級の暑さ」って、いつ頃から言われてるんでしょう。
 多分、コロナの少し前。
 いわゆる温暖化については、もっと前からです。29歳の長男が0歳児だった頃に、いつもは3月に凍っているセントローレンス湾が凍りませんでした。でも、35°超えが続くなんてなかった。
 初めて「災害級の暑さ」と言われたとき、私は非常勤の共学校でゼミを持っていました。過去形になっているのは、入学試験に関与してない教員が、卒業論文の単位を認定すのは捻れではと思って退職したからです。そちらの大学では、ゼミの人気は専任の先生に集中するので、非常勤の仕事は専任の先生からはねられた学生のサルベージでした。その中には、発達的特性を持っていると思われる学生が結構いました。
 その中でも一際印象深かった男子がいます。文章を書くとシュールで素晴らしい。造形の才能もあり、わにが大好きなので、立体的なわにのマスクを作って、授業もそれをかぶって参加する。人の顔を直接見ると、とても緊張して、発言しにくくなるそうです。でも、専任の先生の話では、最終課題を出していなかったり、テストに現れなかったりで、単位がほとんど取れていなかったとのことでした。遠方から通っており、最寄りの駅が遠いので、家から原付自転車に乗っていると言っていました。推測するに、一人暮らしが無理なことは、ご家族も理解しておられたのだと思います。
 U S Bの使い方がわからず、作品を皆と共有することができないと言っていたので、使い方を教えようと、パソコン持ってこられる? とききました。返事は、普通に「はい」でした。
 翌週、デスクトップ型のパソコンを大きなカバンに入れて持ってきました。私が指導教員で良かった。「あ、そうきたか」で済んだので。そうでなければ、先生がパニックになりかねません。場合によっては、強く叱責したかも。
 本が大好きなのに、図書館の使い方がわからなかったので、これも一緒に図書館に行って覚えてもらいました。入学時に行われる集団でのガイダンスでは把握しきれなかったのでしょう。
 彼が3年生のときです。最初の「災害級」は。こちらも慣れていないので、塩タブレットを全体に配ったりしていました。彼を1人で帰すのは心配だったので、せめてと思い、塩飴を二つとスポーツドリンクを渡しました。「気をつけてね」と言えば、「はい」と答えることはわかっていました。そして、本当に理解している保証はないということも。だから、丁寧に具体的に教える。そこまでしなければいけないのか、ということまで。
飴を一つ、授業が終ったら舐めること。電車に乗る前にスポーツドリンクを飲むこと。全部じゃなくて、一口でも良いので、水分は体に入れること。バイクに乗る前に、残りの飴を舐めること。
学期が終わるまで、3回ほどこれを繰り返しました。特に体調を崩すことなく、夏休みを迎えました。
私の対策が、どの程度効いたかはわかりません。もしかしたら、何もしなくたって、彼は無事だったかもしれない。でも、もし何かあったら、私はとても混乱したと思います。私が何かしていたら、変わったかもしれない。
夫の病気がわかったときもそうでした。助かるかもしれない、もう駄目かもしれない。後悔しないためには、今、できることは全部する。結果、助からなくても後悔だけはしなかったので。
そこまでしなくてもいいんじゃない?
そう思ったら、そこまでしましょう。特に、健康に関わることは。
健康、すなわち命、なので。



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