2013.02.20
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 NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2013、2月号

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メルマガを始めた頃に小学生だった息子達も、大学生と社会人になりました。
嬉しいことも悲しいことも色々ありますが、自分のペースで楽しみながら
味わい深いこの人生を歩んでいきたいと思っています。
いよいよ、次回、3月号をもちまして最終回とさせていただきます。


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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第81回
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◇◆空気読まんか

 最近の、カイトに対するコトコの口癖。
「空気読め」
 うーむ。無体だ。自閉症に向かって、空気読めとな。
 だって、こいつ、先天的に空気読めない障害ですよ。
 それは、コトコの気持ちもわかります。ここで言わなくてもいいこと、言うもんね。
むしろ、ここでは絶対言っちゃいけないこと。わざわざ言うもんね。
 でも、それ言うんだったら、カイトに空気読めって、君が一番空気読んでないわ。

 空気を読めって、不思議なことばですよね。いつから言い出したんでしょう。

 その場の雰囲気でもない、相手の表情でもない、空気を読めって。小学生なら言い返し
そうです。主に、窒素と酸素と二酸化炭素ですかねえって。だって、そういう屁理屈、
小学生男子の本能みたいですよ。職場に外国人のママさん教員もいますが、そちら
お子さん(ミックスではなく、純然たる外国人)が、前にも言ったでしょというお母さんの
注意に、
「いつ言ったの、何時何分何秒、地球が何回まわったとき?!」
 ね、本能でしょ。
 というより、カイトが、も少し頭よかったらマジでいいそうな台詞でもある。

 自閉児や児童に空気読めって、無体ではあるんですが、今、一番そういいたいのは、
おかあさんだったりします。ただでさえ繊細な子が、生まれて初めての受験を控えてるんだから。
 まず、カイトには、むやみやたらと構ってもらいたがるのをやめてほしい。マナトが気分転換
していときだけ、うまいこと相手してやってくれたら、最高なんだけど、うん、無理だね。
 コトコには、とにかく黙っていてほしい。いっちょかみもここに極まれり、という性格のコト
コは、何にでも口を挟みます。知らないことなら黙っていてほしいのです。それは、うるさいか
らではなくて、そういう人間がいかに社会で煙たがられるかを知っているので、我が子がそんな
存在であることがいたたまれないのです。でも、黙ってろっていうと、怒るか泣くかするんだよね。
なので、連日、マナトのためを思っての安請け合い、それも大安売り、という具合で、精神衛生に
悪いことこの上ない。
「大丈夫、絶対うかるって、マナト、賢いもん」
「がんばってるもん」
「マナト以外の子が落ちるよ」
 これって、逆効果だよな。聞いてて、不愉快だし。
 それが、不愉快だと読めないコトコさん。更に、
「いいか、俺の前で、落ちると滑るはいうな」
 と言われ、
「なんでー、なんでー、ねー、なんでー。なんで落ちるとか滑るっていいっちゃいけないのー」
「いいから」
「なんでー」
 耐えかねておかあさんが、
「入試に失敗することを落ちるとか、滑るとかいうんだよ。いうだけじゃなくて、ものを落とすの
もだめ、自分で滑るもの駄目」
 何回「落ちる」「滑る」って言わすんだ。
 自室は無い、勉強机は段ボール、おまけにこんな妹が一日中、ストーカーのように張り付いてい
て、よくぞ、ここまで成績を保っていると、我が子ながら感心しています。

 でも、さすがのマナトもストレス感じて、カイトに八つ当たりをするようになりました。マナト
とカイトのコミュニケーションは、多いほど良いと思っています。たとえマイナスのものであっても、
男の子ってそういうものでしょう。でもちょっと度が過ぎる。
 マナトにも言い分はあります。
「おとうさんは、めんどくさい。コトコは泣く。カイトしか相手がいない」
「おかあさんは? 受け止めてあげるよ」
「受け止めてくれるけど、根に持つ」
 おー。
 確かにカイトは根に持ちません。記憶力はいいけど。
 重ねて、さすがだと感心すると同時に、不憫にもなりますね。だって。
 一番空気読めてる子が一番損をしていますから。

 本番まで後少し。
 弟妹までは無理でも、おとうさんくらいは空気読んであげてほしいものです。
「マナトー、頑張れよー。すべったらゲーム禁止だぞー」
 あーあ。

 ◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第81回
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 子育てで最も大切なことの1つは待つことだと言われます。例えば子どもにはそれぞれに
興味の順番があります。早くからお勉強のような活動に興味を持つ子もいれば、じっとして
いられずとにかく身体を動かすことが大好きな子もいます。どちらが良いとか悪いとかでは
なく、また、長い目で見ればいずれは皆同じことに興味を持ち、一通り同じような経験をし
ていくのですが、何にいつ興味を持つのかという順番については個性があるように思います。

 そこで親が興味をまだ持てない子に無理に教えよう(やらせよう)としても、あまり上手く
いきません。年齢が経つと、やりたいやりたくないに関わらずやらねばならないことが出てきて
、そうは言っていられないこともありますが、できるだけ子ども達にはその子らしい自然な
流れ(ペース)で成長をさせてあげたいものですね。
 
 また、子育ては植物を育てるのとよく似ています。きれいな花が咲き、実がなるためには、
あせらず慌てず、水や日光なども少なすぎずやりすぎず、日々丁寧に育てることが大切ですが、
子育ても同じで、慌てず、焦らず、欲張らずにやるのが一番幸せなのかもしれません。
 「這えば立て、立てば歩めの親心」という言葉があるように、昔から親は子どもの成長が常に
待ち遠しく思うものですし、特に現代は物事の結果を早く求めるような風潮ですが、しかし、
だからこそ、子どもの成長を待つことの大切さを忘れずにいたいものですね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務


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