2013.01.13
◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆

  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2013、1月号

◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆

 新年も、はや半月が経ちましたが
 今年が皆さまにとって、希望の光に満ち溢れた年となりますよう
 心よりお祈りいたします。

 長い間ご愛読いただきました「楽しい子育て応援団」は、2013年3月号を
 もちまして終了させていただきます。
 残すところ、2回となりましたが、堀田先生・宮地先生の子育てエッセイを
 どうぞお楽しみください。

■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第80回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
◇◆ 野暮言っちゃいけません
 
 年末には、我が家にもサンタさんがやってくるのです。ガチで来てた時期もあり
ました。近所におとうさんがサンタに扮して子どもにプレゼントを手渡しするお家が
あって、ついでに我が家にも来ていただいておりました。折角,着たんだし。本番は、
あくまでも枕元なので、この時はお菓子をもらいます。インターホンが鳴ると、おか
あさんがお迎えに。サンタさんは「ハロー」と挨拶して、やってきます。
 そんなときのおかあさんとサンタさんは、マンションの玄関から我が家のドアの前
まで歩きながら、どんな会話をしているのかというと。
「最近、うちの上のがサンタは俺じゃないかって気付き出したらしいんですよ」
「…中学生ですもんね」

 どうも、うちの中学生もサンタは親だと気付いたようです。小学生も中学年にな
ると、友達から本当は親だと吹き込まれるもののようで、私も訊かれました。
「信じてないと来ないけど、いい?」
 わあ、あけみさんて怖い。こう言われたら、信じるしか無いじゃん。
 まあ、中学生なら自然に目に見えないものは信じなくなります。その割に、占い
とか信じちゃうのが、けったいだけど。そして、弟妹には黙っていてあげるという
大人の対応も出来るわけで。
 普通に考えると、2年前のアメリカ旅行がきっかけかな、と。マナトをマナティと
泳がせよう、というおやじギャグのようでいて、オハラ家としては大真面目な企画が
ありまして、24日に日本を発ったわけですよ。20時間近い度の後、ついたところは
時差の関係で、まだ24日夜のフロリダ。とにかく子どもを寝かせる。そして、親は
寝ないで頑張る。なんとしても、子どもの枕元にリクエスト通りのプレゼントを置い
ておかなければいけないからです。その為に、苦労して日本から持って来たんだもの。
綺麗にラッピングしたプレゼント。でも、親も眠いから、早いとこ、配りたかったん
ですね。寝たと思って忍び込んだけど、起きてたとは言わない、でも、眠りが浅かっ
たみたいです。人が来たのがわかってたというか。それに、アメリカにいるのに、日
本のものが来たしね。そもそもリクエストが日本製の玩具なんだけど。

 コトコは、まだ信じているようですが、矛盾にも気付いています。お決まりの、
煙突が無いのにどこから入ってくるのかから始まって、世界中を一人でフォローして
るのかとか、ときどき微妙にリクエストと違うのは何故かとか。
 学習しないオハラ家の両親は、毎年、ぎりぎりになってから準備をします。個性的に
見えて、どうもオハラ家の子ども達は、すごーく一般的な嗜好を持っているようです。
毎年、欲しいものは売り切れてる。だいたいネットのオークションにお世話になります。
でも、対処しきれないこともありますから。
 いつまでも、信じててほしいものです。でも、そうはいかない。そうであっても困る
のです。以前、教え子で本気で信じてた子がいました。私の教え子ですから大学生です。
今だって、枕元に時計やアクセサリーが置いてあるって。えらいご両親だ。結婚するとき、
どうするんでしょう。ご両親から旦那さんに、クリスマスの朝には枕元になんか置いと
けって指示するのかしら。でも、そのままおかあさんになっても、自分の子どもにプレ
ゼントは用意出来ませんね。だって、サンタさんが持ってくる筈だもの。
 まあ、よほど純粋に育たない限り、いつか気付くものでしょう。

 マナトが、大人になったからって、良い気になって、妹の夢を壊すような男の子にな
らなかったことに今は感謝しています。妹だけじゃない、周囲に対しても、まだ信じてると
も受け止められる言動をしています。そんなこと言って、子ども扱いされちゃかなわん、
なんて考えてはいないようです。
 それがほんとに大人になってるってことにも、まだ気付かずに。だって、野暮ですもん、
大人だって認められたくて、夢を壊すなんて。
 そして、15の冬にも無事にサンタさんは来るのです。ゲームの設定資料集持ってね。
これが一番高かったよ。
 サンタの正体がわかってんなら早く言え。親孝行したいんなら。
 なんて野暮も言わないよ。お互い様だからね。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第80回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
 
 現代は自由な時代だと言われることがありますが、それは「正解が1つではない時代」
という意味なのでしょう。つまり、価値観も考え方もやり方も、およそ正しい
(間違ってはいない)と思われる範囲はあるものの、 その範囲内であれば何を選択し
ても良い時代ということです。それはそれぞれの人の選択の幅を広げ、新たな可能性と
自分らしさを追求しやすくなったというメリットとともに、頼ったり反発したりする、
いわば自分が考える際の基準が不明確になったというデメリットもあるのでしょう。
 
 そんな時代の子ども達が求めるのは、およそ正しいと思われる範囲の目安と、その範
囲内の答えにはどのようなものがあるのかということなのかもしれません。そしてそれは
もっと具体的に言えば、私達大人(親)だったら、その時何を考えどのようなことをする
のかという説明なのではないかと思います。大人(親)が語る自身の“考え方”や
“やり方”は、子どもにとって将来自分らしい答えを見つけ出していくための、大切な
参考意見(考える際の基準)の1つとなっていくでしょう。
 もちろん、先が読みにくい現代では大人(親)も答えが分からないことも少なくあり
ません。しかしその場合でも、大人(親)が何を思い何を悩むのかを教えることは大切で
あると思います。

 つまり、「正解が1つではない時代」だからこそ子ども達が求めるのは、“答え”ではなく
“考え方(のヒント)”なのかもしれませんね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務


****************

NPO法人アスペ・エルデの会
  「楽しい子育て応援団」

  http://www.as-japan.jp/

****************


BACK NEXT

Copyright(C) 2004,Asperger Society Japan.All Rights Reserved