2021.04.10
 小さい頃は、聴覚過敏で拘りが強くて、大変でした。
 何故か、映像が嫌いで映画が見られない。お友達の家に行っても、一緒にビデオを見ていられない。
「カイちゃんは優しいから、戦隊ものは怖いのよ。大好きな『アンパンマン』を見せてあげましょう」
 そんな思いやりあふれるママ友さんの行動を、テレビのある部屋からの逃亡で台無しに。

 同じ靴しか履きたくなくて、破れても買い替えさせてくれないから、やっと見つけた同型の靴は3サイズ分買いました。
 不機嫌な声が嫌い。手が出ちゃうこともある。今から、大変な偏見を言葉にします。
 モンスターペアレントの子って、不機嫌度高いよねっ!
 いやもう、同じ幼稚園の子、見てるとそう思いますわ。
 なので、トラブルに進展したときに大変。
 それがなんでしょう、これほど適応の良い、正しい社会人になるとは。
 トラブルの少ない人になるということは、過敏や過鈍も目立たなくなるということで、同時に、サヴァン的な能力も抑えめになってくるということ、一般的にはどうかわかりませんが、次男を見ているとそう思います。
 随分と普通になり、あれ、どうしてこんなことまでわかるの? という経験も少なくなりました。
 すごく遠くを歩いている子どもの着ている服の模様がアンパンマンだと言ったり、知ってる声優さんの声は、どんなトーンでどんなちょっとした声でも聞き当てたり。かつては音楽の耳コピができましたが、今、できるんでしょうか。

 ところが最近、久しぶりにそういうことがあったんですよ。
 話は、前回の続きのようなもの。コロナが落ち着いたら、どこへ行こうかなあ、と独り言を言いながら、動画サーフィンをしていたときのことです。
 あ、この独り言というのも厄介で、形式的には独り言なんですね。でも、誰かにかまってもらえることを前提に話している。だから、私か長男か、気付いた人が声をかけてあげることになっています。長女は、意地でもかけません。
 やっと一人での外出ができるようになって、休日にまるっと一日彼がいない日もあって、寂しかったり心配だったりする反面、開放感も半端ねえ、という話をしてきたと思います。それが、緊急事態宣言が出ると一気に自粛に。彼は公的機関に勤めていますので、職場で感染に気をつけるように強く言われます。真面目なので、そこんとこはきっちり守って、緊急事態宣言が出ている間は、仕事以外では絶対に一人で外出しない。
 三月に入って、新規感染者数が再度上昇する前に、養老公園とモゾに行っといてよかった。ガス抜きになりました。という状況です。まだ、宣言には至っていませんが、自粛した方がよくない? みたいな時期、次に行く場所を探っていました。
 〇〇が良いと思います、と私の知らない公園だかショピングモールだかの名前を言います。そこが良い理由が、どこかからマリオの遊具の音が聞こえるから、なんですね。何かが写っているわけではありません。BGMというより、背景としての音です。これは、今までにないパターン。
 今更、聴覚がより鋭くなるとも考えにくいので、新しい情報を求めるあまりのことなんでしょうなあ。
 ここに行きたいです、と言われても知らんよ、愛媛県だし。
 耳をすませば、新たなマリオ情報が得られる、という手段を新しくゲットしたとしたら、それはそれで厄介です。私にとっては、進歩とか、可能性の開発とかそう言った問題ではない。
 新しい能力の解放は、正論では良いこと。でも、実際の生活の中では、余計もんになる可能性もあるって経験は山ほどしてきました。ただ、それを余計だと切り捨てないで、新しい才能と認めた上で、共存していきたいと思っています。今まで、散々してきたみたいに。

 そんな親心を知ってかしらずか、
「今度は、ラグーナに行こうかなあ」
 あそこも、バッテリーカーあるもんね。バッテリーカーも彼の拘りの一つ。海の近くだけあって、大好物のたこ焼きも美味しいんだよ。でも、蒲郡駅からどうやって行くか知ってる? いつも、お父さんの運転する車で行ってたよね。 
「あー、知りません、てへぺろ」
 失言や失策は、「てへぺろ」で糊塗するという知識は、どこで身につけたんだい?
 まあ、蒲郡駅からシャトルバスが正解なんだけど。
 蒲郡も、電車の本数がそれほど多くないし、名鉄とJR両方通ってるから、めんどくさいんだよ。養老電鉄乗れる人だから、それくらいは大丈夫か。
 親が気に病むほど、子どもは子どもじゃない。
 でも、忘れた頃に、SOSの電話かかってくるしなあ。
 とりあえず、しばらくラグーナはやめときなよ。
 今、「鬼滅の刃」のコラボイベントで、えらいことになってるらしいから。



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