2021.05.10
二十年ほど前になりますが、私の実家の近く、本当に数軒向こうの方が痛ましい事故でお亡くなりになりました。深夜の交通事故でした。小さい子供を持つママ友同士でカラオケに行った帰りのタクシーが事故に遭ったのです。その方以外にも複数のお母さんが亡くなりました。ただでさえ居たたまれない悲痛な葬儀なのに、お姑さんの怒りで参列者も泣くに泣けない状況になったとのことです。
つまり、
「赤ん坊を夫に預けて、深夜にカラオケとは何事?」
ということなのです。午前二時と事故の時間がはっきりしていたのも怒りに拍車をかけ、
「死んだのは自業自得だけど、仕事がこれからだというときに、乳飲み子を一人で育てて行くうちの息子をどうしてくれるのか」
と我が子を亡くしたばかりのご両親に迫るという地獄絵図だったとか。
はっきり言いましょう。私だったら、子育て中、深夜にカラオケなんて行きませんよ。それは、音痴だから。人生56年、カラオケ行ったことありません。それに、都会でいい年になってから母親になったんで、腹が括れてたんです。というか、バブル期に一番やりたい放題した年代ですからね。お立ち台で踊ってたのは、もう少し下の年代だけど、バリバリ働いて、めちゃくちゃ稼いで、時間とお金を全部自分のために使った、本当にバブル期を満喫したのは私達の世代じゃないかと。20代のうちにやりたい放題やり尽くしたから、30代は子育てに専念で痛くも痒くもない。周囲にはそんなお母さんが多かったと思います。
でもね、若いお母さんが、ときには夫に子どもを預けて遅くまで楽しむのって。
自業自得まで言われなきゃいけないことですか。
何も悪いことはしていないんですよ。スピード違反の車がぶつかって来ることさえなかったら、普通に朝が来て、楽しかったねー、これでまた頑張れるねー、またいつか、こういう機会があったらいいね、で日常が続いていくはずだったんです。
悪かったのは、お母さん達じゃない。運でもない。ルールを守って運転しなかった人です。
そして数年前、「あたしおかあさんだから」という歌が炎上しました。お母さんだから、いろんなことを子ども優先で我慢する、もしお母さんじゃなかったらこんなことしたい、でもお母さんになれてよかった、そんな歌です。これが、ワンオペ育児を正当化し、母親の自己犠牲を賛美するものだとして批判された訳です。作者は、「お母さんへの応援歌として作った」とコメントしました。謝罪と言っていいのかな。歌った横山だいすけお兄さんへも「母親の味方だと思っていたのに裏切られた」と非難が飛び火しました。
うーん、応援歌というには、実際の母親の心にそえてないかな、とは思います。最終的には自己犠牲賛美であることには変わりないし。でも、これで素直に泣けるお母さんもいたんじゃないかと。うんうん、しんどいけど、あなた達のお母さんになれてよかったよ、と言える人もいたんじゃないかと思います。
炎上させるほどのことじゃない。わかってねえなー、と苦笑いして済ませてやりゃいいじゃねえか、って案件です。
ていうか、あなたが我慢するのは勝手だけど、私は好きにするからってのも、お母さんとしてありですもん。
あ、言っておきますが、私は我慢する派です。でも、それは自分の為。我慢することで、自分は母親として「あり」、と自分を納得させる為なんで。
うちは末っ子が大学受験の年で、私もそろそろ子育て終了です。次男の障害とも、長男の病気とも、これからは大人の家族として付き合っていきます。ということは、ママ友さん達も、そんな季節を迎えているわけで。
そうなると、自分の為に使う時間も増えていくわけで、これが遊びに向かう人と趣味に向かう人がいて、創作をする人もいて、そっと私に見せてくれたりもするわけです。でも、どういうわけか、「あけみさんだけよ、誰にも内緒にしてね」で、特に家族には知られたくない模様。
わかるなあ、十代の頃とか、誰にも見せられない詩やイラストをかいてませんでしたか? 私は十六歳のときに書いた小説が、今でも書店で普通に売られていますから、人生罰ゲームみたいなもんですよ。誰にも知られずに処理してもらえると思って出版社に送ったのに。
でも、今の子は創作を簡単に発表できるサイトがたくさんあるから、そういうところにアップして、見せているようです。ペンネームを使って、正体がバレないようにしてですけどね。それにしたってメンタル強いなー。
でも、子育て真っ最中でもいいのよ。お母さんだから、創作してる暇あったら家事や育児頑張れってのは、暴論だし、自らそれに縛られているのなら、そうじゃないって知った方がいいと思います。気持ちリフレッシュメントして、また頑張れたらいいじゃないくらいに考えましょう。本人も周囲も。
お母さんだって、自分のしたいことをしていいんですよ。
ご本人の許可を得て、最近の事例を挙げますね。
私は筋金入りのオタクです。子ども達もその血を継いでいるので、共にオタ活に勤しんでおります。こういった方面にとんと疎い夫は、理解できないようですが、理解してもらおうとも思いません。
それを知っているママ友さんが、Twitterのアカウントを教えてくれました。ときどき絵を挙げてるの、見て、よかったら感想をちょうだい。とても上手です。セクシーな絵も描きます。それが旦那さんにばれて、ちょっと揉めました。セクシーなイラストを書く妻は、自分の知らない人みたいだったのかもしれないなって思います。まあ、最終的には丸くおさまりました。好きな絵を描くのは止めないけど、男性を描くとき、服は着せてくれ、だそうです。
これまた微妙だなあ。女性だったら着なくていいのかしらとか思っちゃうなあ。それに、創作は創作として認めてほしいところもありました。それに、彼女が本当に描きたいのは、セクシーな男性じゃないかとも思ったので。
彼女が「大丈夫」というから、本当に? と訊いたら、にっこり笑って言いました。
「裏垢作るから」
懲りてねえ。
でも、そんな人だから、長い間、仲良くできるんですよね。ネタにする許可もくれるし。