北海道石狩市の少年による主婦殺人事件に関する見解2/3
近年わが国において、高機能広汎性発達障害の少年による重大犯罪が相次いでいることは、何よりもこのグループへの発達支援(治療および教育)のシステム作りが遅れていることを反映している。 われわれは厚生労働科学研究において、このグループの反社会的行動の調査研究を行って来た。その結果、あいち小児保健医療総合センターを受診をした高機能広汎性発達障害の児童青年の4.6パーセントに(軽微なものも含む)何らかの触法行為が生じていた。これは言い換えると、95パーセント以上は、あらゆる触法行為とは無関係と言うことである。触法行為に結びつく特徴としては、1)
診断が遅れ、誤った対応を受け続けてきたこと、2) 子ども虐待やいじめなどの迫害体験の存在、3)
適応が極めて不良な状況の3点が認められた。この少年においても、あるいは長崎の事件にしても、事件の前に診断を受け、適切な対応がなされていればこの様な犯罪が生じるには至らなかったと考えている。実際に、継続的な支援を受けている場合には、重篤な犯罪を起こす場合は皆無であり、むしろ、騙されるなどして、犯罪の被害者となるリスクが高いことが指摘されている。
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