俗に三食昼寝つき、などと申します。
　私は、美人でもなく、スタイル良くもなく、親が金持ちでもありません。羨ましがられるようなことは何もない。自分で努力して、一端の社会人にはなりました。若い頃、すごく苦労して納めた夫の年金（彼は自分で納める気が、全くなかったので。でもって、未納の人には大曽根の年金事務所から、めちゃくちゃ意地の悪い電話がかかってくる時代だったんですよ）が、亡くなってから雀の涙程度にしか戻ってこないくらいの年収は得ています。頑張って頑張って、稼げるようになったから、食費削って納めた年金、返しませんってのは、マジで鬼だと思いましたけど。まあ、早死にした夫が全て悪いんですが。
　ただね、人として女として、結構持ってる奴だとは思います。まず、健康。どうやら免疫が強いらしく、病気にならない。幸い私側の遺伝を受け継いだ子ども達も頑丈。滅多に風邪もひかない。その分、何年かに一度、誰かが病気すると軽いパニックになる我が家。全員健康を前提に生きているから。この歳になって、肩凝りはあるけど、腰痛は無い。特に身体に不調が無い。一度、眼底出血があって、失明するか、三ヶ月に一度の眼球への注射を一生続けるかだと言われたけど、一回の注射で完治してしまった。欲しいと思ったら子どもを授かったし、お産が軽かった。
　更に、幸運なのは、料理をすることが苦だとは思わない性だったこと。洗濯も掃除も嫌じゃない。但し整理整頓と断捨離は苦手。
　おまけに、本人還暦なのに、母がめちゃくちゃ元気。だから今でも、時々実家に顔だして、三食昼寝付き生活します。ありがてえ。
　こんな私でもそう思うんですよ。
　だから、料理を作るのが得意ではない人にとって、三食を作ってもらえるのが、どれだけ有難いか。逆に、作らなきゃいけないことが、どれだけ大変か。買い物する、作る、片付ける、だけでは無いんです。考えなきゃいけないんだもん。
　長期の休みの大問題が、それです。一日中、家にいるとか、あちこち連れて行かないと収まらないとか、そんなことは年が大きくなるに従って、手がかからなくなるものです。でもお昼ご飯は食べないわけには行かないし、作らないわけには行かない。
　カナダの離島で２ヶ月の子育てを経験したとき、お昼ご飯がパンかパスタしかないことに頭を抱えました。日本のお昼ご飯て、バラエティに富んで豊かなんだなあ。
　私は、母が家事の天才だったので、昭和の子どもとして、大変に充実した日々を送っておりました。後に、仕事先に母の同級生という方がいらして、「学校始まって以来の秀才で、どの学校でも行ける、何にでもなれる人材だから、高校にやってくれ」と中三の担任の先生に土下座されたのに、あの糞爺が無視して、どっかの馬の骨にとっとと嫁にやってしまって惜しいことをした、と教えてくださいました。「糞爺」が私の祖父で、「馬の骨」が父だというのは置いといて、なんか、納得いったものです。つまり、東大行けそうな人が家事と育児に全振りすると、ああなるんだってことですね。
　夏のお昼ご飯も、定番の麺類から、サンドイッチ、チャーハン、ちらし寿司、おにぎり等、毎日が楽しみでした。残り物をタッパに詰めただけの「お弁当」ですら、わくわくしたものです。
　小さな子ども、それも複数持ちとなると、料理が得意だ得意じゃないの前に、とにかく忙しいから、お昼作るのが加算されると大変なんだ、というものありますが、やっぱり得手不得手は大きいです。そして、不得手は悪いことじゃありません。子どもが手料理を必ずしもありがたがるものでもありません。古い価値観は、もう捨てちゃって大丈夫です。
　私は、夫と結婚したときに、夫の仕事先のマスコミ関係の方にご挨拶に伺うと、いつも「料理なんかしないでしょ」てなことを言われました。学者で作家、つまりはばりばり働く女だから家事が苦手、という決めつけもなんだかな、なら、
「いえいえ、この人、すごく楽しそうに美味しいもの作るんですよ」
とにこにこ顔で自慢する夫も、なんか違います。普通に作りますよ、でいいです。
　今は冷凍やコンビニ、スーパー、通販を上手く使えば、手をかけずに乗り切れます。手のかからないものは高くつきがちという問題がありますから、その辺のバランスを上手くとって乗り切りましょう。気分転換に外食、ハッピーセットもいいですよ。
　昨年の夏の終わり頃、お昼近くに窓の外から、小学生高学年の男子でしょうかね、大きな声が聞こえました。
「そうめんだったら、絶対食わんからな」
　夏中、一杯食べたんでしょうね。
　でもね、大きなお鍋にお湯をぐつぐつ沸かして、茹で上がったらしっかり水で冷やして、そうめんだって手のかかるメニューなんです。
　文句言わずに食え。