2017.02.10
正しいおつきあい
堀田あけみ
我が家が全員、携帯持ちになってから、ほぼ半年が過ぎました。
子どもに携帯電話を持たせるタイミングは、難しいものです。普通に、小学校に入ったら持つもの、という感覚のおうちもあるし、親は買い与えない、自分で買えるようになるまで、ということもあるし。
我が家では、高校に入ったら、という線を引いていたはずですが、思い通りに行ったのはカイトくらいです。これは、ひとり通学をするにあたって。GPS機能のついた見守りケータイを選びました。通話とメールの基本は教えましたが、使ったのは一度だけです。マナトが高校を卒業する日、カイトが何年かぶりの熱を出しました。で、お留守番してもらったわけです。一通り、お別れを惜しんで、12時半ごろ携帯をチェックしたら、正午から着信12件。腹が減ったというより、12時だからご飯を食べないと落ち着かない。着信が途絶えたのは、諦めたのではなく、期末試験で早くに帰宅したコトコ(本人は学校でランチを終えて)が、カップ焼きそばを作ってくれたからです。
マナトは変わり者なので、自分から携帯を持つことを拒否しました。高校生にもなると、親としては携帯くらい持っててもらった方が何かと便利だと思うのです。でも、本人の意思は大切。私も長いこと携帯を持つことを拒否していました。理由は、行方不明になる自由が欲しいから。だから、マナトの考えもちょっとはわかる気がして。iPad miniを代わりに持っていたので、メールで連絡だけは取れました。
そんなマナトのスマホデビューに合わせたのかコトコです。友達と遊びに出かけることの多い子なので、おとうさんが急に買おうと言いだしました。マナトのスマホを買いに出かけた日、店頭で。ビックカメラで買ったので、コトコのは中古にしました。
高校までは持たない、はコトコとおかあさんのお約束でした。だから、コトコもいらないと言ったのです。でも、おかあさんの不在時に、コトコがどこかに行っちゃって、連絡がとれなくなるのは、おとうさんにとっては大きなストレス。だから、持ちなさい、という図式です。娘の方が買って欲しいというパターンが多そうなのに。
「でもLINEはしないから」
と、コトコは言いました。高校生になってから、必要に応じて、と。おにいちゃんがやはりLINEが苦手で、どんなに仲の良い友達から誘われても断り続けているのを知っていたからです。でも、根本で自由でいたいマナトと、誰かと一緒にいることで安心を得たいコトコが同じ行動原理で動くことは不可能です。すぐに部活のLINEに誘われて、どうしても参加したいと言いだしました。そりゃそうでしょうとも。
「でも課金はしないから」
スタンプやゲームアプリに、お金を使わないという信条は、今のところ守られています。ときどきお買い物したりすると、無料スタンプのカードをもらえたりして、それが 結構可愛くもあるので、耐えきれない不自由でもない。見栄を張らなくていい友達と一緒だということなのかもしれません。それから、十時になったら電源を切る、ということも自発的にしています。それ以降は返事をしない、と友達も理解してくれているそうです。
現時点では、ほぼ正しく、最先端の文明とお付き合いできているようで安心です。みんなが普通に手にしているのに、お付き合いが難しいのが携帯電話。ほんとは、お付き合いなんて言い方しなくていいんですよ。相手は機械です。一方的に制御したら良い。でも、その向こうに、必ず誰かがいるものだから、その人のことを考えると、単なる機械として扱うのも憚られるのです。
ほぼ、と言ったのは、コトコ、やっぱりスマホの画面見る時間が長すぎるなあ、と感じるので。でも、母親ってそういうものだし、指摘されるのは嫌に決まってるし、振り回されてはいけないって自覚もあるし。
休日の朝なんか、私が炊事・洗濯・掃除と動き回っている間、他の家族が全員液晶画面見てる(カイトはiPad)状況にはちょっとストレス感じますけど。ちょっとじゃすまないと思っているそこの方、慣れですよ、慣れ。