2016.09.10
           スマホさん降臨
            
                         堀田あけみ

 オハラ家家訓「ケータイは高校生になってから」

 マナト ‥「ケータイは持ちたくない」と拒否。代わりにiPad miniを買う。
 カイト ‥ 電車に乗っての一人通学を始めるにあたり、見守り携帯を買う。
 コトコ ‥ 当然、持っていなかった。先週までは。

 諸般の事情で、大変な苦労と共に、この4月、マナトは予備校生となりました。で、そろそろケータイが必要なのでは、という話になりまして。大きな問題は、急激な体調の変化があった場合。今までは、保健室の先生が知らせてくださったものですが、予備校はそこまで親身にはなってられないだろうと。自分の教室が決まってて、担任の先生がいてくださるわけでもなく。せめて、帰りが遅かったら、こちらから、電話を鳴らせるようにしたいものです。メールだけじゃ、読んでるのかどうかもわかんないし。
 なのでauショッップに行きましょうよ。うん、そうしよう。
 とはならなかったのが、今年の事情。
 今年、いつになくおとうさんの取材が長引き、年末から一学期の終わり頃まで、ほとんど家にいませんでした。 非常に解放的な日々を過ごしておりました。はい。でも、マナトいわく、こういうことはおとうさんの方が強そうだから、おとうさんと相談して決めたいとのこと。日頃、反発してても、こういうところでは認めてるんですね。
 そして7月、夏休みの始まりと共に、おとうさんは帰って来ました。いち早くダウンロードしたポケモンGOのスクリーンショットをメールで送りつつ。 翌日、予備校も休みだし、ということで、早速ビックカメラに行きます。最初は、マナトの携帯問題だったんですが、カイト愛用のiPadも画面に大きな罅が入り、かなり年季の入ったものなので、買い換えようということになりました。iPhoneとiPad、どちらも新品では困ります。中古を見に行くと、おとうさんが言い始めました。想定内のことですが。
「コトコにも、ケータイいるんじゃない? 友達と遊びに行くことが多い子だし、塾や空手で遅くなるでしょ」
 コトコは、いらないと言ったのですよ。高校生になってから、とおかあさんと約束したから。
「いいよね、おかあさん」
 よくない。
 でも、いう通りにしないと、きれる、すねる、「へえ、コトコが事件に巻き込まれても死んでもいいんだ」とか、わけわからんこと言い出す、何時間も続く、家族全員が疲弊する、という経験をいやというほどしております。彼のいうことは、絶対です。生活費も出さないくせに。
「誰が買うんだ」
 と言っても、子供にケータイ買うのは母親の役目でしょ、と言われて終わりです。
 厄介なことに、一度、私の意見を求めるので、
「何考えてるの、そんなの絶対だめじゃん、こっちにしないと、ありえないよ」
 と頭っから全否定して、聞く耳持たない(話し合っても無理、反論しているうちに、相手を傷つけることが目的に変わるから)にも関わらず、話し合って合意したことになってしまいます。学習能力がないので、強いです。
 私とマナトはまともな学習能力を持っていますから、逆らって、疲弊して、家中の雰囲気が悪くなることを知ってしまいました。
 しかし、強いのはコトコだ。
「私、いらない。おかあさんと、高校まで我慢するって約束したから」
「でもね、(以下略 )」
 結局買うんだな。
 だが。
「ポケモンGOダウンロードしてあげるよ」
「え? やんないよ、私」
 最近のコトコさんの得意技です。相手の神経を逆なでするような言動。やられると心底腹が立ちますが、傍観するのは、なかなかに面白いのが厄介です。
「なんで? おとうさんと一緒にゲットしようよ」
「特にやりたくない」
 数日後、友達がやってるからという理由で、ダウンロードしました。この暑いのに、友達と東山公園で1日中、ポケモンゲットしてました。
 マナトは、何事もなく、普通にiPhoneユーザーとなり、真っ先にポケモンGOをダウンロードしました。予備校の夏期講習が終わるのが、夜の九時だったりするんですが、その後で、歩いてポケモンの様子みながら帰ってくることもあります。でも、生活そのものに変わりはありません。
 コトコは、変わりました。ほぼ1日中、ケータイを見てる、ように思えます。そのように指摘したら、「違うもん!」と切れられました。LINEだけは、高校生になるまで待ってもらっていますが、ショートメールを使っているので、しょっちゅう着信音が鳴ります。
 主な使用目的はポケモンです。だから、みんなが画面見ながらでも、家族の会話があるのが、救いかな。炭水化物やゲームが脳を破壊すると信じているおとうさんは、ケータイ画面を見続けることには、何の危惧も抱かないらしいです。家族といる時間のほとんどは、ケータイの画面見てる。フェイスブックで繋がってるお友達の方が大事って言われても、驚かない自信があります。当然、コトコがケータイに釘付けでも、全く問題を感じていません。
 私は、そういうのは嫌なので、話しかけたり、他のことをさせたりします。それをうるさがるほどには、子供たちも害されていません。
 デジタルにはアナログで対抗する。
 この夏、おかあさんが起こしたブームは百人一首です。
 詳細は、また今度。
 今のところ、マナト、コトコ、カイトの順で強いんですが、驚異的な記憶力を持つカイトが、この後、どこまで追い上げますかね。手が遅いのが難点ですが。



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