2016.02.10
             次の問題
                         堀田あけみ


 子ども達が既に手のかからない年齢に達していることを、同僚から羨ましがられることは多いです。こちらは、小さい子のいる生活が羨ましくてしょうがないのですが。でも、冷静に考えてみると、本当に隣の芝生は青いっていうか、喉元過ぎれば熱さ忘れるっていうか(でも、この諺、正確じゃないと思う。人間、何かと懲りないもんだけど、熱いものをうっかり飲み込んだときに、辛いのは、腹に落ちてからの数十秒です)。今でこそ、自分の時間を持てて、あらあ、子育てって楽しいじゃありませんか、などと余裕ぶっこいていられますが、時間、なかったもんなあ。本当に、つい最近まで。
 起きてる間、ずっと眠かった。大好きな紅茶をゆっくり飲めるのは、子ども達が寝てからしかなかった。三人が寝付いたら、まずお茶を淹れていたものです。小説を読まなかった。長期間かけて一冊の本を読むので、ストーリーを忘れてしまうのです。大好きな歴史関連の新書や文庫ばっかり読んでたな。一方で、アスペ・エルデの会以外の原稿は、早くあげてました。いつ書けるかわからないから、保険をかけて早め早めに書いていたから。えーと、この原稿は身内みたいなもんなのでね、お察しください。
 ただ、子どもが大きくなったら、問題が無くなるわけではありません。むしろ、メンタルの面ではこちらが大変です。第一、可愛くないもん。いや、我が子なんだから、60歳になっても70歳になっても(子どもがだよ。100歳で死んだ私のおばあちゃん達は、死ぬまで子どもを案じていたと思う)可愛いよ、心情的には。でも、ぱっと見て可愛い、子猫が可愛いとか、ハムスターが可愛いいとか、ないじゃん。傍目に微笑ましいこともしないし。
 心情的には可愛いのが、余計に厄介というか。反抗期だろうが、くそ生意気だろうが、自己中心だろうが、可愛いからしんどいんです。
 ものすごく俗っぽいことを言うと、小さい子ってまず、お金がかかりません。お稽古事から始まって、学費が必要になってくるのは、大きくなった証拠です。また、大きくなるとかかるお金も大きくなるわけで。学費が一番高いのは大学ですよね。もちろん大学や学部にもよりますが。高校までは、公立だったらお金かかんないし、とか油断してると、子どもの性質によっては、私立のほうが合ってることもあるし。私立だと、面倒見がいいから塾に行かなくても大学受験に臨めますが、公立だと塾必須で、どっちが経済的かわからない、というのもママ友さん達との話から、実感します。
 でもって、誤魔化せなくなってきます。向こうは向こうで、一人前の主張を持ち始めるわけですから。
 今、その点で厄介なのはコトコです。表面的には、一番手がかからないように見えて。
 最近、友達だけで遊ぶことが多くなったコトコ。友達と遊ぶから、家族と一緒に行動しない、ということも間々あります。だったら、そこで諦めてもらえたら、話は簡単なんですが。
 そうはいかないことが多いです。
 コトコが来ないんだったら、お兄ちゃん達だけ連れて、映画行ってくるね、と出かけると、後から「自分も行きたかった」ってうるさい。結局、再度連れてくことになったりします。それこそ、友達と一緒に行けばいいのに、趣味が合わなくて断られるのが怖いんですね。
 コトコに付き合わなければ、貴重な時間がずいぶん浮くのに、とも思います。でも、突き放さないのは、しばらくしたら向こうから離れていくんだろうな、とうのがわかっているから。
 とことん付き合っておかないと、後悔するのは老後の私。
 だと思うので。



BACK NEXT

Copyright(C) 2004,Asperger Society Japan.All Rights Reserved