2015.12.12
さあ 駆け出そうよ
堀田あけみ
無事に、帰って来ました。
カイトが、職業実習先から。
私の不勉強から、高校生が実習するようなところではなく、大人になってから手帳を持った人が働く現場になりました。例外的に受け入れてもらえたものの、普段、知的障害の人はいないとうことで、今までのように、愛されキャラで押し通すことができないのでは、と不安に思っていました。ケーキ屋さんなので、作業も複雑です。お台所のお手伝いは、してくれるけど、すぐに、
「疲れました」
なカイトです。
結果として、今回も万事OKなカイトでしたけどね。
いつだって、杞憂に終わるので、カイトを信頼して、もっと安心してていいんじゃないかと思うこともあるんですが、いや、油断しちゃ駄目だ。そういう人生だったろ、今までだってずっと。ましてや相手は、発達障害ですもの。
どこに行っても評価されるのは真面目さ。
そして、問題だと言われるのは、言語能力の低さ。入力が良くないタイプなのが、厄介です。出力は、テンプレートを獲得していて一定以上のレベルがあるので。要は、見当違いのことを口数多く言ってしまうタイプ。働いているときは、必要以外に口をきかないそうですが。それでいて、必要なことは言えるので、扱いやすい。でも、細かい指示が理解できなかったり、職場での雑談に混じれないっていうのは、社会人として、そこそこ大きな問題なんですよね。
今回は、カフェで三日間ということで、初日はお皿洗い。二日目はプラス、クッキーの卵塗り、三日目にはクッキーの成形もしたそうです。
今まで、実習の制服というと灰色の作業服だったんですが、今回は白いシェフズコートの上から、茶色いエプロン、共布の三角巾でとっても可愛らしい服装でした。カイトの日記には、「『まれ』みたいになりました。」とありました。
今回は、ずっと私の授業がある日だったので、送迎はおとうさんに任せましたが、行きと帰り、一度ずつ、一人にしています。ちゃんと行けるし、帰れます。こういうときに見守り携帯って便利。便利以上かな。見守るどきどきもくれますから。最後の日、反省会をして、先様にお礼を言って、実習生じゃなくなってから、おとうさんに家族分のケーキを買ってもらいました。お土産に、カイトの成形したクッキーも持たせていただきました。
どんな作業も、真面目に集中して続けていたそうです。ケーキとクッキーに囲まれた店で、お弁当だけを食べて、お皿を洗い続けるって、カイト、本当に頑張れる人になったんだね。
おとうさんが許可をいただいて、実習先で撮った写真をみながら、カイトが朝ドラ「まれ」の主題歌を口ずさんでいました。
「さーかーけーだーそうよーいますぐにー」
ドラマ自体は全く面白くないどころか、見るのが苦痛になってきたので、テレビ切ったら、朝の時間配分がうまくいかなくなって、結局いらいらしながら最後までみてしまいました。歌も、全然良くなくて、後番組のAKBによる主題歌が比較して上等に見えるレベル。でも、実習先でのカイトには、ぴったりでした。
でも、どうして主題歌知ってるんだろう。いつも、朝ドラ始まる前に家を出るのに。
土曜日と夏休みのせいか。
字もしっかり書けるようになったカイトは、もう誰にも頼らずに、実習ノートも表紙から何から全部自分で書くし、チェックも一人でできます。偉いものです。
実習先によって、昼食の形態が違うので、そのチェックも重要な項目です。カイトの場合は。
「おべんとうおじさん」
言いたいことはわかるけど、ごめん、どうしてもアンパンマンのキャラクターの一人としか思えない。