2014.12.09
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2014、12号

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     堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第103回
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◇◆努力・友情・勝利

 というのが、「少年ジャンプ」のテーマなんですと。なるほど、日本人の心の琴線にばっちり触れそうです。それがあっての、400万部なんですな。
 そういった熱い情熱とは、無縁なところで、ゆるうく生きているように見えるカイトにも、ちゃんとそういった試練はやって来るわけで。
 例年通り、今年もやって参りました。中学校の合唱祭ざんす。公立の中学とは思えない規模と様式で行われます。特別支援級も参加します。もちろん。更に、今年はカイト達にとっては最後の合唱祭ですので、力も入ると言うものです。
 もちろん、毎年が誰かの最後の年なので、毎年、力が入っていなければいけないのですが、おそらく今年は指導してくださる先生にとっても、一段と力が入ったのではないかと推測しております。
 というのは、カイト達の学年、6名が入学するまで、特別支援級はいつも数人だったのです。合唱祭に参加はしましたが、それほど大規模な演出が出来ませんでした。カイト達が来て、更に次の学年も6名で、見栄えのするパフォーマンスが可能になったのです。1年生のときは、みんなで振りをつけて「世界に一つだけの花」、2年生のときは楽器を持って「風になりたい」。このとき、カイトはキーボードを担当して、主旋律を演奏しました。そして、今年は「遠い日の歌」です。カイトは、やはりキーボードを弾きました。
 この選曲を知って、私は意外に思ったものです。ちょっと不満でもありました。ごく普通の合唱曲なので、過去2曲のように、観客を引き込んで(若干無理矢理)感動させるタイプの曲ではなかったからです。「ネタ切れか?」とも思いました。
 でも、本番を観て、なんとなくわかったような気がしました。合唱を指導してくださるのは、担任の先生です。専門は音楽。カイト達の入学と同時に赴任した、その年には新任でした。だから、カイト達と一緒に一年ずつを積み重ねて来たのです。今までの曲は、文句無しの高評価を得ました。でも、それは障害のある子達がこの曲をやったら、そりゃ聴き手も感動するだろうよ、というものでもあったのです。だから、今年は本物の合唱曲で勝負をかけようとしたのではないでしょうか。
 そもそも、カイトがキーボードという重要なポジション(指揮、曲目紹介と並んで、アナウンスされる)を任されることになったのは、いわゆる耳コピ、聞いたメロディを鍵盤で再現することが出来たからです。でも、好きな曲だから、再現するわけで、興味が無いものを弾くだけのモチベーションをつけるのは、できないんじゃないかと思っていました。だから、去年の「風になりたい」のときにも、大丈夫かなあ、と心配したものですが、これは主旋律と言うことで乗り越えられたと思います。でも、伴奏だからなあ。カイトにとっては、無意味なメロディだからなあ、難しいし。
 こんなとき、重宝するのはおとうさんです。乗った乗った。ノリノリのり平(アンパンマンに登場する、海苔のキャラクター)だ。鬼と化して、日々の特訓を致しましたさ。カイトは五線譜を読めないので、ドレミで書かれた楽譜を使いました。でも、最後にパッヘルベルのカノンのメロディが入るところは、カイトのなんちゃって運指では完全に弾きこなせません。ですから、連絡帳で先生に運指の指導をお願いした上に、学校にiPadの持ち込みを許可していただいて、先生の運指を動画で録って、それを観て練習しました。両手か片手かでも、日によって気分の変わるおとうさんが、その都度、連絡帳で先生にお願いするように指示して来ました。
 わかりましたと答えて、無視しました。
 おとうさんの、気まぐれや自己中心(自分さえ良ければ良い、のではなくて、世界で正しいのは自分だけ)にさんざん振り回されて、たくさん傷ついて、対外的に回復不可能なほど信頼を失った幾つかの経験と、振り回されてちゃ駄目だ、違うと思ったら反論しなきゃ、と一念発起したら、余計に傷ついた、という経験を嫌んなるほど重ねた結果、「はいはい」と答えてして、実行しないのか一番だと、ようやく分かったからです。


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