2014.10.09
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2014、10号
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第101回
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◇◆来い来いハードル
カイトは中学三年生なので、来年度から特別支援学校の高等部に行きます。名古屋市は4校5学科の特別支援学校高等部があり、基本希望者は全入です。五月に見学会があるので、おとうさんが撮影の合間を縫って、5学科すべてに連れて行ってくれました。そこから、2校の志望校を選んで、夏休みに面接があります。こちらは、おかあさん担当。
以前は、定員が決まっていることが多かったようですが、特別支援学校は全国的に希望者全入の動きになっているようです。ただ、自治体によっては、まだ入るのが難しいところもあります。そして、全入の地域では、どこも人数が多くて大変になっています。
名古屋市は、基本全入だから、中卒で行くところがなくなるってことはないんだけど、と話したら、
「え、公立高校希望したら、無試験で入れるの?」
と訊き返されたことがあります。障害者特権で、そうなってるのかと思われたらしいです。入りたくもないし、入れたくもない。なんか、障害児は普通校に行きたいけど、特別支援校で我慢してると思ってる人って、今でも多いんですね。わかんない授業を聴かなければいけないなんて、なんの修行だってくらいの難行苦行ですわ。隔離とか、排除だって思ってる人も多い。私が一番苦手なのは、勝手にそう思い込んで、私も同じ考えを持ってるとも決めつけて、「カイちゃんを排除するなんて、許せないわあ」とか、どや顔で言ってくる人です。
特別支援というのは、読んで字の如くで、特別な配慮をしてもらえる場所です。それが、充実しているのは、とても有難いことなので、感謝しながら、存分に利用させていただいています。
まあ、どこも名古屋市立の特別支援校だし、同じようなものでしょ、と思っていた私は、いちいちあっちだこっちだと見学に行くのはめんどくさい、というのが本音でした。おとうさんは、見なきゃわかんない、という人です。でも、どの特別支援校も、行きにくいところにあるんだよ。設立当時は、スクールバスでしか通えない子を対象としていたのでしょうか。
小さい頃から、高等部から特別支援校に行くつもりでしたので、家の近くのスクールバスの停留所に、よく連れて行っていました。
「大きくなったら、ここからバスに乗って、学校に行くんだよ」
ここまで、一人で歩いて来られるように、なろうね。
学校のホームページで、バスのルートも調べました。ふむふむ、こうやって帰って来るのか、結構時間遅くなるな、学校でトイレ行っとくようにさせなきゃ。
「乗れませんよ」
と言われたのは、中学一年生の家庭訪問のとき。今日びの家庭訪問は、玄関先が定番ですが、うちの学区は中学のみ、勉強する場所の(多くは子ども部屋)視察が入ります。特別支援級の場合は、そこで小一時間お話しされますし、複数でいらっしゃいます。そのときです。
「重度の子から乗るので、カイトくんだと、何があっても回って来ません」
そうだったのかー。
名古屋市や区全体での、特別支援校・級の行事は幾つかあるので、近隣の学校の子だと、顔くらい覚えてしまいますが、通勤するときに、ほとんど発話の無い子が一人で電車に乗ってるのに、よく会ってたんですよね。親さんの方針で、敢えて一人で通学させてるのかと思ってたんですが、そうか、乗れないんだ。
そのときは、ちょっと残念でした。あくまでも、ちょっと。私は、カイトにバスと電車と自分の足があれば、どこへでも行けるんだ、と教えるように心掛けて来ました。だから、あと三年間、ちょっと頑張れば、一人で通学できるようにするくらい簡単だって。そして、今となっては、スクールバスの来ない学校にも行けるんだという、プラスの出来事でした。
制服を着て、電車に乗って、見学と面接に行って、カイトは変わりました。きちんとしなければ、高等部に行けないんだと、思うようになったようです。ご縁があって、障害者雇用の現場を見学したことで、ますます、その傾向は強くなりました。
高等部に行く為に、そして、お仕事をする為に、自分はどんな人間になるべきなのか。
おそらくは、三人きょうだいの中で、一番先に社会人になるであろうカイト(そうあってほしいです、本当に)は、まだおぼつかない形ですが、考えています。
カイトは、有難いことに、新しい環境が苦手ではありません。むしろウェルカム。確かに、小学校の就学前検診のときは、嫌がって校門を入れませんでしたが、入学式の後は、ひまわり学級の教室で、とても幸せそうに、のりのりで遊んでいました。その後、どこに行くにも、お兄ちゃんが道筋をつけていてくれたせいか、抵抗を示したことはありません。むしろ、何らかの目標があった方が、できるようになるタイプです。
大人になる為のハードルは低くない。でも、ハードルの無い人生はつまらない。
だったら、カイトみたいに次のハードルを待ち構えて生きて行った方がいいと、心底思っています。
そのハードルは、障害があるから高いんじゃないんだ。誰にだって、あるものなんだって、忘れないように。
子ども達のハードルを見守りながら、私自身も次々と現れるハードルを飛び越えて行きます、必死で。
ちなみに、今見えてるので、きついのは、更年期障害だと思います。