2014.07.09
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2014、7号

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     堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第98回
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◇◆果報な中学生

 六月初旬、カイトは修学旅行に行って来ました。うちの学区は、関西方面に行きます。若干地味目のプログラム。
 どうしても、自分自身の経験と比べてしまいますね。
 小学校は、私は伊勢。これは、当時の愛知県の小学校としては、とてもポピュラーなもので、名古屋駅から二階建ての修学旅行専用列車も出ていたと記憶しております。廃止もニュースになっていたと思います。対する子ども達は京都・奈良。
「小学生なのに? 僕、高校で行ったよ」
 と、おとうさん。そりゃ、関東ですからね。高校くらいにならないと、そんな遠方には行きませんわ。
「え? そんな遠くに一泊で?」
 と、義理の母。親子だ。発想が。名古屋と京都の距離を考える気が無い。
 中学校は東京に行きました。ディズニーランドは無かったので、後楽園遊園地でジェットコースターに生まれて初めて乗りました。今も、東京と言うか関東地方へ行く学校は多いと思います。そして、修学旅行でディズニーランドに行かない学校には、かつて先輩達がミッキーを池に落としたからという武勇伝がついて回っています。都市伝説呼ばわりすると、「うちだけはほんと」と言われるのも共通していて微笑ましい話題です。だとしたら、過去に何回、ミッキーはシンデレラ城前の池に落ちてんだ。うちはドナルドだから、真実味が違います、という主張にもお会いしました。で、うちの学区が東京に行かない点についても、同様の都市伝説が。子どもではなく、お母さんからPTAの懇談会で聞きました。マナトが中一のときです。ミッキーを池に落とした後の出禁って、何年間って区切りがあるんですよね、うちの子の修学旅行に間に合いますか、ディズニーランドにして欲しいんですが、という内容でした。周囲のお母さん方の反応は、冷ややかなものでした。ディズニーランドは、名古屋からならほとんどの子が行ってるので、家族では体験出来ないところがいんじゃないかって。
 とうわけで、カイト達の修学旅行は新幹線と在来線を乗り継いで、和歌山県の由良町というところに行くことから始まります。集合は名古屋駅。マナトは一人で行きましたが、カイトは連れて行きました。新幹線の駅の下の地下街が集合場所ですが、行って驚いたのが、複数の学校が集まっていること。場所について、地図で丁寧に知らされていたのは、こういうことだったのかと思いました。中学生が集まっているからここかな、と思って違う学校に並んでしまいかねません。
 初日は、体験学習。沢山コースがある中から、カイトが希望したのは梅干し作りとマリンアート。でも、クラス全体の意見が梅ジュース主体だったので、梅ジュース作りとイカの一夜干し、貝殻のキーホルダーを作って来ました。ここでは梅を積んで持ち帰るので、家でも梅ジュース、作りました。マナトのときもそうしたので、そのときの容器を使ったんですが、カイト、マナトの倍くらい穫ってきてるなあ、別の容器も使わないと入り切りませんでした。目下、良い具合にエキスが出て来ています。
 そこから、神戸へ移動して、震災学習と市内散策。ハーバーランドや南京町に行きました。マナト達は異人館がメインだったそうですが、多分、興味がなかったんでしょうね。夕食は、マナト達がディナークルーズだったので、カイトも期待していたけれど、ジンギスカンになっていました。因みに、特別支援学級の3年生は6名で、引率の先生はお二人。全員に、肉を焼いては食べさせるのは大変だったようです。そして、宿泊はANAホテル。
 最終日は、USJで遊んで、バスで帰宅しました。
 残念なことに、ヤフーの天気情報では、3日とも雨。可哀想に、と思っていたら、現地では奇跡的にずっと降りそうで降らなかったそうです。傘は一度も使ってないとのこと。お土産に、神戸のお洒落なショッピングモールで買ったチョコラスクと、USJのクッキーを買って来てくれました。マナトは、こまごまとしたお土産をいろいろ買って、民芸風のストラップはずっとおかあさんが愛用していたし、おばあちゃんに梅干しなんかもあったのですが、まあ、そこまでは、ということです。楽しそうに戻って来たのが一番。事故も無かったし。基本的に楽しかったものの、他のお子さん絡みのトラブルで、ちょっと残念なことのあったマナトより、ずっと旅行を楽しんで来たみたいです。
 弟思いのマナトは、相方が戻って来てくれることが一番。コトコの関心はもちろんお土産ですが、おいしいお菓子は及第点。おとうさんには、もう一つ、カメラを持たせていたので、何を撮ってくるかという、大きな楽しみがありました。が、これはほぼ空振りでした。おとうさんにとっては。こちらとしては、いかにもカイトらしいオチがついていたので、それはそれで楽しかったのですが。
 先生が撮ったらしい、本人も写った記念写真的なもの。校長先生と肩を組んだツーショットもあります。先生に促されて撮ったんでしょう、USJ前の地球儀のオブジェ。全然力が入ってない。それから、神戸アンパンマンこどもミュージアムの入り口と、やたら上手く写っている、由良町のゆるキャラ由良の介。由良の介が実に良いショットなんですよね。何故。多分、これが一番撮りたかったのでしょう。再度問う。何故。
 でも、先生方が一杯写真を撮ってくださっているようですから、大丈夫。業者さんの写真もあるし。こちらも、一杯買ったつもりで注文を忘れてしまい、結局なんの思い出も手元に残っていないマナトより、ずっと好条件です。
 大好きなお友達と先生と、楽しく3日間を過ごして来たカイト。普通に修学旅行が巡って来て、楽しんで来るのが、実は当たり前ではないことを私はよく知っているつもりです。だから、カイトは幸せな、恵まれた子どもだと思っています。良い学校に通って、良い友達に出会って、良い先生に導いていただいている。
 カイトは果報な子どもです。
 そして、私達は果報な親です。
 幼稚園から始まって今までずっとそうでした。そして、次の4月から始まる新しい生活でも、どうか果報者でいられますように。
 そんな風に強く思う、一つの区切りの旅でした。


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