2013.12.09
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2013、12月号

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     堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第91回
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◇◆共に在るということ
                          
 秋は、カイト達にとっては、合唱祭の季節です。
 運動会は9月末なので、まだ夏で。
 今年は、やってくれましたよ、カイトは。
 私は残念ながら、一番忙しい水曜日だったので、行けませんでした。

 今年の特別支援学級の曲目は「風になりたい」です。
 事前に、カイトの友達のお母さんから、情報がありました。
 カイトがピアノを弾くとのことでした。確かに、いわゆる「耳コピ」ができる子なので、鍵盤でのメロディー再現はお手のものですが、人様の前で披露するような腕前でもありますまい。本人に訊いたら、「やらないよ」と答えてたし。
 なんかの間違いだね、うん。

 じゃありませんでした。
 カイト達の担任の先生の中には、音楽の先生もいらっしゃいます。特別支援の先生の、本来の専門は何かなんて、確認はしませんが、昨年の合唱祭で伴奏をした際、手元も譜面も見ないで、子ども達の方を一心に見ていらした様子からは、相当の腕前であることが見て取れます。
 今年は13人と賑やかなので、楽器を演奏しようということになり、打楽器やウクレレが登場しました。そこでカイトの担当が、キーボードになったのです。去年の「世界に一つだけの花」にはいなかった指揮者もいます。
 各クラスの発表の前には、アナウンスがあります。曲目紹介・指揮・伴奏の子の名前が呼ばれます。ほとんどが女の子なのは時代ですね。父親がピアニストだったおとうさんは、あそこでマナトの名前が呼ばれたらかっこいいのに、とずっと思っていたそうですが、万事に消極的なマナトは、指揮にも曲目紹介にも手を挙げることはありませんでした。
「伴奏、オハラカイトさん」
 まさか、カイトがその思いに応えてくれることになるとは、想像してもいなかったそうです。うん、しないね、普通。応えてくれたのは、カイト、なのかな。先生なのかもしれないと思っています。
 おとうさんが録画しておいてくれた演奏は、実に感動的なものでした。緊張の強い子も、新しい環境に弱い子も、みんなで舞台に立って5分間の演奏を完走しました。録音だと、歌がちょっと聞こえにくかったかな。でも、贅沢言ってはいけません。それは、客席の手拍子が大きかったせいだから。

 最近、「共生」という言葉が流行っているようです。障害児・者の周辺に。でも、なんか違う受け止め方もある気がします。
 なんでもかんでも「普通」にしなきゃ、みたいな。
 私、文句言われることもありますよ。特別支援教育を肯定する発言をあちこちでするから。差別主義者だって。
 だって、カイトが普通級にいたら、伴奏者になれないよ。クラス代表で、努力賞の表彰状受け取りに、壇上に登れないよ。
 普通のクラスは、みんなで並んで、直立して合唱します。カイト達は「特別」だから、去年は踊り、今年は楽器を使いました。普通級なら、反則技だけど、特別だから文句は言われない。文句どころか、手拍子で応えてくれます。
 お互いの違いを直視した上で、互いに認め合う。
 ほんとは、こういうものじゃないのかな、「共生」って。
 あの場所に、リアルタイムでいられなかったけど、歌う子ども達と、手拍子する子ども達、先生や保護者のみなさん。
 確実に、共にそこにいたと思います。



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