2013.09.10
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2013、9月号

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     堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第88回
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◇◆夏休みファンクラブ

 夏になれば、夏休みはやってきます。長いようで、気が付くと終わりに近くなり、まだ片付いていない宿題に私が頭を抱えることになるのが、ここ数年のパターンです。何故、本人ではなく母親なのか。こっちが訊きたい質問です。なんで平然としてるんだ、子ども達。おまけに急かすと、こっちにも都合があるから、親の都合で振り回さないでほしいとか、お、おお、親の都合ちゃうわ!と我を忘れることになります。
 それにしても、長期休暇に入ると、狭い部屋にずっと子ども達がいるので、暑いもんがさらに暑い、という日々になりがちですが、今年のオハラ家はそうでもないのです。まず、マナトが家にいない。前半は、学校のサマーセミナーでイギリスに。寄宿舎の飯がまず過ぎ、胃が縮むというおまけつき。帰って来たと思ったら、お盆休みを挟んで補習が始まります。平日は午前中だけだけど、毎日学校に行きます。カイトも日間賀島に行くし、コトコも空手の合宿があるし、おとうさんの仕事も入れると、5人全員が家にいる状況はあまりありません。カイトと二人きりの週末もありました。
 こうなると、夏休みのお約束を果たすのも大変です。オハラ家のノルマは、3泊4日の帰省、家族旅行、プール(以前は海水浴もしくは湖水浴もありましたが、親の体力がついて行かなくなりました)、ポケモン映画。できたら、他の映画も見たいし、科学館にも行きたいのです。夏はいい企画やってるから。因みに今年は「深海」です。でも、最低のノルマも確保が難しい。
 何分ノルマですから、プールなんてマナトの補習が終わってから、強行します。ほんとは、ラグーナ蒲郡に行って、ジブリ展見たいんですが、ナガシマで我慢します。
 自分の子どもの頃は、帰省して、一泊旅行して、それ以外にはありませんでした。あ、毎日そろばん塾には行ってました。近所の子、ほぼ全員が。毎朝、ラジオ体操もやってた。でも、基本日中は家でぐだぐだしていて、別に困りませんでした。
 夏休みが一番忙しかったのは、20代の後半のバブル期です。独身で、バブルの恩恵を存分に受けていた私には、折角の夏の間にしておかなければいけないことが、沢山ありました。浴衣で夏祭りに行く、友達と旅行する、花火を見る、野外ライブに行く。東京で一週間、定宿に泊まって、各社の編集者と打ち合わせをするなんて贅沢もしていました。水関連がないのは、子どもがいなけりゃ、積極的に自分で行きたいとは思わなかったので。その為のお金も惜しみませんでした。だって、本なんて新刊が幾らでも売れたもの、ブックオフもネットも無くて、景気が良かった頃は。そして私は、いろいろしていないと、とても寂しかったのだと思います。良いものを買って、好きなものに囲まれて、あちこちに行っていないと。家族は実家にしかいないし、今はちやほやされてて、どこに行っても気後れしないけど、どんどん年はとっていくし。今年の夏を楽しまなければ、来年はもうないかもしれないと思っていました。確かに楽しかったけれど、自分が楽しめることともう一つ、人から羨ましがられることが、条件だった気がします。ちょうど、独身と既婚者が同級生の中で半々になるようなお年頃、世間が既婚者を幸せという見方をするから、こんなに幸せな私を演出しなければ、生きていけなかったのです。一人が自然体だと、言っていられない私だから、結婚しなければいけないなと思っていました。
 お金も時間もなくなった今、でも、子ども達と走り回る夏休みが私は幸せです。あの頃のように、塞いでもしみ出して来る寂しさと戦わなくてもいいから。
 長い間、子育てをしているので、マナトのときの子育てが、コトコのときには通じなかったりして。
 コトコとお買い物に行く道で、入道雲が余りにも立派だったから、「夏休みファンクラブ」の歌を歌っていたら、
「それ、何の歌?」
 って。昔のポケモン映画の主題歌だよ。丁度、マナトが生まれた頃かな。当然、映画館で見てはいないけど、マナトとカイトが小さい頃は、いつもビデオを借りてみていたし、子ども番組も定期的に見てたから、レンタルで見たんだね。マナト、大好きだったから、この映画は何度も借りたわ。
 コトコは、お兄ちゃんやそのお友達に囲まれて、いつも人といたせいか、映像があまり好きでない子だったので、テレビやレンタルの映像に対して、お兄ちゃん達のような食いつきを見せませんでした。だから、知らないのです。
 知ってるとばかり思っていたのに。
 暑くて、予定が追いかけて来て、宿題に何故か親が頭いためて、お昼ご飯の献立に悩んで。
 でも、幾つになっても、夏休みと言われると心がときめきます。いつまでも、学校で働いてるせいかもしれません。
 このまま一生とは言わないけど、退職までは夏休みファンクラブの会員でいたいな。




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