2012.12.11
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、12月号

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 クリスマスのイルミネーションがとってもきれいな街並みは
 気持ちもウキウキ!足取りも軽やかになりますね。
 楽しいクリスマスをどうぞお迎えください♪
 
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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第79回
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◇◆たった一人のきみ
                      
 カイトは、つくづく良い指導者に巡り合うものです。常に、目の前の彼を等
身大に評価し、今の彼にできることを、どうアピールするかを考えてくれる先
生に出会えています。また、企画力もあるんだな。
 うちの学区では、学芸会と作品展が隔年で開催されます。2つとも毎年やっ
たら、先生が倒れそうです。余談ですが、私も今年度は業務の過酷さに、倒れ
そうです。
 今年は、作品展でした。コトコの作品を見に、家族で出かけましたが、カイ
トに声をかけて下さる先生の多いこと。現役のコトコをしのぐ程です。マナト
に至っては、6年生の時点で、過去5年間の担任の先生がすべて転任されてい
たので、誰にも声をかけられない始末。でも、コトコが周囲に「これ、私のお
兄ちゃん」とアピールしまくりです。
 コトコも頑張りましたが、やはり、ひまわり学級も気になります。カイトが
出品していないとはいえ。「お芋」をテーマに、力作揃いでしたが、担任の先生
が替わった今年は、ちょっと毛色が違うなと感じました。絵も工作も、他の子
ども達と同じ枠組みで、障害のある子が頑張った作品でした。カイト達は、い
つも他の子達とは全然違う次元で勝負していたと思います。枯れ葉だけで描か
れた絵、丸と四角だけで構成された図案、牛乳ボックスを使った巨大ロケット
やロボット等で、いつも会場に入ると真っ先に、カイト達の作品が目に飛び込
んで来たものです。まともに勝負したら見劣りするに決まっている。だから、
変化球で勝負する。実際に、枯れ葉だけとか、丸と四角だけとかだと、知的障
害のある子だからこそ、独特の表現を見せることもあるのです。何より、みん
なが「すごいねー」とか言って感心するのを見るのは嬉しかったものです。
 中学でも、カイト達「10組・11組」は常に外しません。先日、二学期最
後の大型行事である「合唱祭」が行われました。なんかあると、「公立中学校の
するこっちゃねえだろ」と、突っ込みを入れたくなる学校に、子ども達を通わ
せております。合唱祭も、中学校の体育館でなんかしませんよ。名古屋大学の
豊田講堂です。夏休みの自由課題の最優秀作品の発表もしちゃうぜ。中学生が、
豊講の壇上で、研究発表しちゃうぜ。学者がそこで基調講演するまでに、何年
かかると思ってるんだ。
 さて、各クラスが格調高く、合唱をしていくなか、昨年度の特別支援学級は
4名の生徒達がハンドベルの合奏をしました。今年は、10名の大所帯です。
来年度は更に増える予定だとか。普通のクラスは、一曲ですが、彼らは二曲。
 まず、合唱です。「世界に一つだけの花」。うん、このクラスにしか歌えない
曲だ。これを、振りをつけて歌います。上手いぞ。予想はしたけど、おかあさ
ん、だだ泣きだ。でも、うちのクラスの保護者でない人まで泣いてるぞ。すご
いです。このときばかりは、ブレザーの制服が映えます。アメリカのドラマ「グ
リー」に出て来る「ウォブラーズ」というチームのようです。ちょっとずれて
る感じが味なんだよね。
 二曲目はベートーベンの「第九」。二人がリコーダーで主旋律を吹き、残りの
みんなでハンドベルを鳴らします。よくぞ、十人が自分のパートできちんとバ
ルを鳴らしたものだと思います。
 各学年、最優秀1クラス、優秀1クラスが選ばれます。そして、10組・11
組は努力賞。どうも、毎年の鉄板らしい。毎年だと、なんかやらせくさいの
で、3年に一回くらいでいいんじゃないか、そしたら、みんなが一度は受賞出
来るし、と思わないでもないですが、確かに賞に値する努力はしています。
 トロフィーを囲んでの記念写真、みんな本当に嬉しそうでした。

 思えば、運動会のときも、クラス対抗大縄跳びに彼らは参加し、見事に跳ん
でいます。どちらもおとうさんが良い写真を撮りました。マナトとカイトが同
じ学校に行く最後の年、おとうさんはPTAの広報委員になって、特等席で写真
撮りまくりです。縄跳びの前に、担任の先生がやけに念入りなストレッチをし
ていると思ったら、かなり大きな男の子を抱えて跳んだのでびびったとも言っ
ていました。
 これからも先生方は、きっと楽しいこと、一杯考えてくれるんでしょう。彼
らだから、できることを。
 そこにいる君に、たった一人の君に、誠実に向かい合ってくれる指導者に巡
り会えたことに、カイトはちゃんと感謝できてるかな。
 きっと、できてる。カイトはそういうことは、得意な子ですから。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第79回
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 ある日、ラジオのDJが子育ての苦労話をしているのを聞きました。まったく
同じようなことで自分も悩んでいたので、「なあんだ。みんな同じなんだ。」と
ほっとしたことを憶えています。子育ては1人で抱え込まずに“仲間”を見つけら
れるとよいですね。もちろんそれぞれの感じ方や考え方は違うので、いつもお互いの
意見が一致するわけではありませんが、それでもお互いに話をしたり聞いたりすると、
自分を振り返る良いきっかけになったり、参考になる情報が得られたり、何よりも
「がんばっているのは自分だけではない。」と分かって少し安心して前向きな気持ちに
なれたりするものです。
 よく「子どもが1歳なら親も”その子の親“としては1年目。」と言います。子ども
が失敗や試行錯誤をしながら成長するのと同様に、親だって失敗や試行錯誤をしながら”
その子の親“として成長するものです。だから、あまり気負わず素直に”仲間“を求めて
も良いと思います。
 もしも身近に“仲間”が見つからなければ、ラジオや本などでも良いと思います。
ただしその際に1つ付け加えて言うならば、親(自分)と子どもと周囲の人達が元気に、
そして穏やかになれるものを選んでほしいと思います。結局、子育てにおいて最も大切な
ことは、単純ながらも皆が元気に、そして穏やかに生活することを目指していくことにつ
きるであろうし、そのような環境こそが最も子どもを伸び伸び育てるような気がします。


◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務


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