2012.10.07
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、10月号
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小学生の兄弟が、稲刈りのお手伝いをしている光景を目にしました。
お祖父さんの手ほどきを受けながら作業をしている子ども達。
その貴重な体験を“幸せ”と感じられるのは、もしかしたら
ずっと先なのかもしれません。
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第77回
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◇◆シード選手
マナトが高校受験という現実を認識したのは、いつからなのでしょうね。
いつまで経っても、自分の受験と言うより、親に言われてする受験勉強で
あるような気がしてならんかったんですが、どうやら、自覚も出て来たようです。
でも、高校調べて、ここの高校に行きたいってのは、ないんだな。うん、調べ
る気もない。なんで、義務教育終わっちゃうんだろう、めんどくせえな、くら
いにいしか思っていないようです。
でも、マナトは親孝行ないい子だと思います。一年生の最初のテストこそ、
すんげえ成績でこれじゃ、公立どころか、高校行けねえじゃん、と思わせてく
れたのですが、塾に入れたら、ちゃんと成績上がったし。何より、私の歩んで
来た道を考えると、こんないい子を授けて下さった神様は、なんて慈愛の心が
深いんだろうと思えて来ます。
私だって、どの高校が良いかなんて、考えてなかった。いや、考えたんだけ
ど。そのとき好きだった、男の子が第一希望にしてた高校に行きたいと思って
ました。
「はああああああああっ?」
って、担任の先生に言われましたね。まあ、私の成績で行く高校じゃないっ
てことです。でも、高校なんて、どこでもいいと思ってたから。
当時は、「中統」と呼ばれる試験を、中学3年生は受けていました。学校から
受けさせられます。他の学校まで、わざわざ出向いて受けます。そして、この
高校を希望してる子は、こういう点をとっていて、何位なんですよというのが
全員分、一覧表になっています。だから、自分が志望校として提出した学校の
欄で、自分のとった点数を見れば、志望者のの中で何位かわかるということで
す。それで、自分がそのまま受験すると、一人だけ飛び抜けて成績がいい事が
クリアにわかっちゃって、流石に私も考えました。
当時、私は周囲の中学生との間に違和感を覚えていました。いじめられても
いたかな。で、それは悩みじゃないんだ。悩みとは違うんです。いじめてた側
は、悩ませたかったんだと思うんだけど、別に彼らと一緒にいられなくていい
けど、ちょっと困ったなって。多分、このままだと、違和感抱えたまま、進学
しちゃうな。そこで、担任の先生が勧める通りの学校群を受ける事にしたんで
すが、私、根っからのめんどくさがりで、遠くの高校行くのめんどくさい、と
思ってしまって、先生とは相談せず、名古屋学校群で家から一番近いところに
志望校を変えてしまいました。
親と一緒に呼び出されて叱られて、でも、もう出した願書は戻らない。先生
に「お母さんは、どこの学校に行ってほしかったんですか」と訊かれて、「本人
の行きたいところ」と答えてくれたのは、私の味方になってくれたのか、天然
なのか。
両親からは、何も言われませんでしたが、きっと、姉のように、普通にすん
なり、高校・大学・就職と行ってほしかったんでしょうね。高校入試で一悶着、
高校生で作家になり、就職しないで大学院に行くなんて、親不孝です。
それを考えたら、マナトなんてほんと、いい子ですよ。ちょっと勉強に身が
入らないくらい、なんでしょう。おとうさん、怒り過ぎ。
きっと、おとうさんが私の父親だったら、私、すっごく怒られてたと思いま
す。いやあ、今考えても、とんでもないガキだわ。
高校受験で、もう一つ思い出すのは、受験や合格発表のときに、名古屋市内
から来ている中学生が、とっても都会の子に見えたことです。何がどう違うと
いうのでもないけれど、都会の匂いがしました。入学した後も、家の近所で、
厚化粧したり、制服に大きなイヤリングつけてる子達より、髪型も持ち物もさ
りげなく大人っぽくすることで、自分の優位性をアピールする高校の先輩達の
ほうがかっこよくみえました。私の高校生活は、田舎者としてのコンプレック
ス、それから、中学までは優等生の近寄りがたいキャラクターだったらしいの
が、高校に入ると同時に、見た目から妹系キャラになったことで始まりました。
クラスでの位置づけが全然違って、とても楽でした。可愛がってもらえるし、
仕切んなくていいし。「川向こう」ってからかわれるのも、全然気になりません
でした。実際、学校の隣を流れる川の向こうに、私の家はあるんですから。
そんな私が、マナトを連れて、高校のオープンキャンパスに行って来ました。
って、高校からあるんですよ、オープンキャンパス。これも、私達の時代とは
違います。夏休みに行ったのは、家の近くの私立高校。うちの学区は、制服が
ポロシャツにグレンチェックのズボンなので目立ちます。お友達も見つけ易い。
あ、そうか、この子達は、あの都会の子なんだ。遠くから、どきどきしなが
ら来ている子が多い中で、ちょっとそこから来ている子。
以前、ナンシー関さんが、地方から東京に出て来た自分から見ると、東京出
身の人は、シード選手みたいなもの、と表現されたことがありますが、この子
達はそっちなんだなあ。私がかつて感じたものは、当時の自分には咀嚼できな
い感情だったけど、今から思えば、予選から地味に勝ち上がっていかなければ
いかない選手が、シード選手に向ける、憧憬だったのでしょう。
でも、名古屋市内で子どもを育ててると、いろいろな競争も田舎より、遥か
に厳しいのは、実感されるわけで、シードくらいもらっとかないと、割に合わ
ないのも事実です。
余談ですが、うちの子ども達は、空手の試合でシードをもらうのが苦手だそ
うです。勝った直後の、のってる選手が初戦の相手になるから。
私立大学に勤める私としては、私立の高校が、ここにどれだけ力を入れてる
かがよくわかります。そして、見事にマナトがはまりました。ようやく、高校
生である自分がイメージできたみたいです。
その一方で、先のことが気になってしょうがないカイトは、自分の将来計画
を周到に立てようとするのですが、そうそう先が見えませんからなあ。基本、
特別支援学校高等部に行ってから、お仕事をすることまでで、納得してもらっ
てます。今まで、おにいちゃんと同じ学校だったのに、違うところに行くんだ
ってことも。
「おにいちゃんは、どこの学校に行きますか」
とっても、デリケートな問題なので、あまり大きな声で訊かないで下さいね
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第77回
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ある本を読んでいて、こんな言葉を目にしました。
“子は言うようには育たないが、するように育つ”
子どもにとって親をはじめとする周囲の大人達は重要な“お手本”です。我が
子がいつの間にか親の口真似や普段やっていることを真似していて驚いた経験を
お持ちの方は多いでしょう。特に幼い子は、良くも悪くも貪欲に周囲の人の言動を
真似し、学んでいきます。子どもの年齢が上がると、“お手本”は親だけではなく、
自分が興味を持つ有名人やキャラクター、先輩や友達であったりもするでしょう。
このように、人には自分が感動したり興味を抱いたりした“お手本”を真似した
くなる心理があり、子どもはそうやって色々な“お手本”を真似しながら、最終的
には自分らしいやり方や考え方を確立させていくのでしょう。だから子どもに対する
教え方としては、言葉で言って聞かせるよりも、まず大人(親)が“お手本”として
実践している姿を見せることが、もっとも説得力のある教え方なのかもしれません。
つまり、子どもが元気に成長していくことを願うのであれば、まず親自身が元気で
ある(元気であろうとする)ことが大切であり、子どもに何か教えたいことがあった時は、
まず自分達が実践し“お手本”を示すことが大切なのでしょう。
改めて、相田みつおさんの、この言葉を思い出します。
“親は子どもを見ている。でも子どもも親を見ている。親よりもずっと澄んだ目で。”
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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