2012.09.10
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、9月号

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 運動会の練習が始まった学校も多いのではないかと思いますが
 まだまだ残暑のきびしい日中での練習はさぞかし大変でしょうね。
 日焼けした顔で頑張っている子ども達を応援したいですね。

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第76回
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◇◆夏休みの運動会

 名古屋市には、特別支援学級・学校全体で行われる連合運動会という行事が
あります。今まで、毎年十月の火曜日に行われて来たので、私は授業と会議で
出られませんでした。あっさりと、説明してしまいましたが、大変な規模です。
ですから、児童一人につき、付き添いは一人。更に、先生方はそれぞれに係の
お仕事があるので、保護者は必須。我が家のような形態の家庭には、なかなか
ハードな条件です。なに、事前に予定がわかっているわけですから、おとうさ
んがその日に仕事を入れなきゃ良いだけのことです。仕事、暇な時季だし。で
も入れるんだなあ、この人は。わざとかと思うくらい、ピンポイントで。
 
 二年連続で、実家の母に来てもらったこともあります。お弁当まで作っても
らって。お弁当くらいは私が、という健気なアピールもありなのですが、うち
の母は料理上手なのです。普通のご飯は、月一くらいでおよばれしてますが、
滅多に食べられないお弁当の機会は、カイトにしたって逃したくないはず。
 しかし、関門があります。私は、もっと母に頼ることもできるのです。預け
るのではなく、来てもらうという形で。でも、母は完璧な主婦。パーフェクト
なるハウスキーパーなのです。当然、娘もそうであるべきだと思っている。だ
って、彼女がしつけたんだもの。私は、自分で言うのもなんですが、よくしつ
けられた娘です。おとうさんも、結婚の挨拶に家に来たとき、両親にそういい
ました。ところが、夫に整頓能力が無く(開けた抽き出しを閉められない。出
したものを、元の場所に戻せない。パッケージのセロファンや箱をゴミ箱に入
れられない)、自身が忙殺されているとなれば、家は荒れますわ。この状態、絶
対、見せたくない。
 
 ので、朝、カイトを託すとき、母に言いました。
「お母さんも、お忙しいと思うので、カイトの運動会が終わったら、どうぞど
うぞ、お帰りください。カイトは一人でお留守番できます。本日は、誠にあり
がとう存知ます」
 その日は、非常勤先の大学から、地下鉄名城線に乗って帰宅しました。運動
会の会場である瑞穂競技場から乗って来たらしき人も多く見受けられます。ら
しきというか、どの車輛にも一人は、車内アナウンスが完璧に再現できる子が
乗ってる感じです。これは、かなり前に、終わってますね、運動会。
 帰ってみたら、母の靴が玄関に。
「お前は、この家の現状を三児の母としてどのように思っているのか」
 と、正座して小一時間。
 私が観に行けたら、こんなことも無いんだけどなあ。

 と、思っていたら、今年はまさかの夏休み開催。会場は日本ガイシホール。
外に長時間いるのは辛いという声を受けての変更だとのことです。
 私は観に行けるし、暑くもないけど、お盆近くなので、帰省や旅行で欠席者
も多かったので、どちらが良いかは微妙かな。とにかく、大変な大人数(それ
も、全員なんらかの障害がある)で一斉に競技をするので、自分の子どもを捜
すのが大変です。捜してたら終わることもあります。
 
 でも、自分の子が出てなくても、楽しい。区対抗のリレーなんて、速い遅い
より、会場の外に走り出す子や、次の子にバトンを渡したくない子、バトンの
受け渡しがやたら丁寧な子ども達等、学校の運動会では見られない微笑ましさ
に、嬉しくなります。
 そして、カイトにとっては、いつもと違う運動会になりました。おかあさんが
いるとか、会場が違うとかもあるけれど、会場に入った途端、
「せんせーい!」
 偶然にも、小学校のときの担任の先生が目の前に。
「見るからに、もう、小学生じゃないですね。大きくなったね、カイちゃん」
 と言われて嬉しそうな顔を皮切りに、小学校時代の友達を見つけ、転任された
通級の先生を見つけ、小学校の主任の先生を見つけ。
 ここは、頑張る場所であると同時に、懐かしい人に会える場所でもあったのです。

 来年は、どうなるかわかりません。無くなるかもしれません。
 多分、無くなったら、先生方のご負担は減るでしょう。みなさん、ほんとうに
働き者です。私も、お弁当作ったり、早く起きて一緒に電車に乗ったり、夫婦で
スケジュール調整しなくて良くなります。
 でも、見てしまったら、なくなるのは寂しいなあ。
 特別支援学級の子は、学校の運動会では主役になれないもの。
 カイトも去年は、区代表のリレーの選手としてバトンを持って走ったそうです。
 懐かしい人に、カイトを会わせてあげる、そして、おかあさんも会えることも
含めた(もしかしたら、それが一番大きい?)、こんな運動会、素敵だなあ。
 今あること自体が、奇跡かも。よくぞ、こんなめんどくさいこと始めたなって。
折角あるものなんだから、もう少し。
 親という微妙な立場から、控えめに、そのように思っております。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第76回
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 先月はロンドン・オリンピックで世界中が盛り上がり、今回もまた数々のドラマが
生まれました。私達日本人にとって今回のオリンピックは、とりわけ選手同士のチーム
ワークや選手と家族や支援者達との絆が印象に残る大会だったように思います。どれだ
け力のある選手でも、その人1人だけでは良い結果を招くことはできません。個々人の
がんばりとともに人と人とのつながりがあってこそ、真に素晴らしい結果と感動のドラ
マが生まれるのだと思うと、子育てにおいても、人と人とのつながりを大切にしていき
たいと思わずにはいられません。
 
 子どもはまだ未熟がゆえに失敗したり、がんばり方がまだよく分からなかったり、
子どもががんばりたいものが親のがんばって欲しいと思うものとは違う時もあるでしょ
うが、基本的に全ての子どもは皆、毎日をがんばって生きています。だからこそ私達大
人(親)は子ども達にとって良き先輩であり、良きコーチであり、良きスタッフ、良き
仲間(時にはライバル)でありたいものです。
 そして、もちろん親だって毎日がんばっているはずですから、さらに子育てをする親を
応援し、協力し、支援するような社会を作っていきたいものです。
 
 こうして人と人とのつながりの輪が広がっていくことが、日常生活においても様々な感
動のドラマや真の幸せをもたらし、眼には見えないけれど私達1人1人に人生の金メダルを
与えてくれるのではないでしょうか。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
  http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html

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