2012.08.04
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、8月号

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 夏休み、楽しんでいますか?!
 暑いけれど、あんまり冷たいものばかり食べたり、飲んだりしていると
 夏バテしちゃいますよ!
 牛乳やヨーグルトを積極的に摂って、暑さを乗り切りましょうね〜!

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第75回
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◆◇諸行無常
                           
 マナトは中学三年生です。うちは、公立に行かせているので受験生でもあり
ます。
 先日、学生の教育実習の巡回指導に行きました。今年、うちのゼミからは一
人しか実習にいかなかったのですが、マナトの第一志望の学校に行った子がい
たので、そこにも行かせてもらいました。
 見事な研究授業を見た後、余りゆっくりできない旨をお伝えすると、担当の
先生が、
「ですよねえ。受験生のおかあさんですから、お引き留めするわけには行きま
せんね」
 え?
 受験て、本人がするもんとちゃうんですか?
 親、なんかすることありましたっけ。
 いや、いろいろしてますけど。
 でも、今から帰りたいのは、教授会に出るためです。

 定期試験の前に、スーパーで同級生のおかあさんが、お夜食用の材料買って
ました。
「マナトくん、大きいから、よく食べるでしょう?」
 どうしましょう、180センチの中学生、小食なんですよ。
 それから、私は夕食後に何かを口にする習慣なく育ったので、子ども達も、
夕食後にアイスや果物を食べたら、すぐに歯を磨きます。これで、義母の深夜
に幼児にものを食べさせる習慣にびっくりしましたなあ。
 なので、夜食という発想は無いし、テスト前には手際よく勉強して早く寝る
よう言ってます。

 早くから受験対策をどうこう言われているおうちは、ともかく、全体にのん
びりしたマナトの周囲も、受験のことを考え出すと、ぶつかってしまうのは、
私達の時代とは違うという事実です。私なんて、無作法な中学生から出身高校
を訊かれてお答えしたら、「案外バカだったんだ」という評価をいただきました。
で、次に大学訊かれたので、名古屋大学と言ったら驚かれました。
「なんで、あんな高校から名大行けたんですか?」
 昔は、良い高校扱いだったんだよ。今は、オール3なくても行けるらしいが。
 母校の凋落ぶりはおいといても、以前はとにかく公立だったのが、今や私立
も特進コースがかなりの高校にあり、データを見てみると、公立より国立大へ
の進学率が高かったりします。
 5教科ではそこそこ頑張れてるものの、実技が駄目な我が家の子ども達には、
朗報です。私立は、内申の影響が公立に関してすごく小さいそうですし。愛知
県の公立高校は、内申書が重視されているのと同時に、誰が得をしているのか、
皆目わからない複雑なシステムで受験をするので、公立に的を絞って考えると、
呼吸困難になりそうでしたが、私立でも大丈夫となると、随分楽になりました。
 住んでるところが、田舎か都会かという差もあるかと思いますが、受験事情
も変わり過ぎるくらい変わったんだと実感します。

 変わらないのは、愛知県が十五歳の心を不必要に悩ませて、高校本体にとっ
てもマイナスの要素をもたらすとしか思えないシステムで、高校受験をさせて
いることですね。
 私は、名古屋市に学校群があった時代に高校生でした。今、その話をすると、
中学生は大変に驚きます。「鬼じゃん」とか言われる。それを経験していない大
人からもです。
 本人の希望を全く訊く事なく、勝手に学校を振り分けるんだもん。
 結果、誰もここに来たいと思ってなかったというとんでもない学校が存在し
てしまいます。私の母校、中村高校がそうでした。名古屋5群(名古屋西・中
村)と名古屋6群(中村・明和)を受験して入って来る生徒は、6群だと明和
狙い、2つの群の偏差値の開きが大きかったので、5群から来る子は、できた
ら西に行きたい、そんな子が多く、中村高校に行きたいと思って入って来る子
は非常に少ないという状況でした。これ、不幸だよなあ。田舎の子なので、近
所では学校群受けるだけで秀才扱いだったけど、自分はここの学校だ、と納得
して地元の学校を受ける友達が羨ましかったのを憶えています。
 今は、説明するのもめんどくさい複雑なシステムによっているのですが、2
校の受験が可能な為に、他県では見られない「玉突き不合格」という現象が出
て来ています。トップの学校に第一希望が集中し、そこを落ちた子が第二希望
の学校になだれ込むと、なだれ込まれた学校は、そこに本当に行きたいと思っ
て受験した第一希望の子ではなく、点数の良い、ほんとうは別の学校に行きた
かった子を入れることになります。ほんとは、別の学校に行きたかった子があ
ふれる入学式。住めば都は体験してるし、毎年、学生にも言ってるけど、いや
だろ。なんで、わざわざそんな状況をつくるんだ。

 今年度、私がマナトの受験対策に投入したお金はざっと50万くらい。小出
しにしてるとわかんないもので、今、真剣に勘定してびびった。
 点数は、お金で買うものなのです。
 こんでも、中学に入ってから焦って付け焼き刃で教育熱心な振りをしている
レベルで、小二くらいから、塾に行ってるとかだと、もう大変です。
 不器用だけど、とことん真面目なマナトでこうなので、ああいえばこういう、
こちらの要求には「今○○してるから」で、ろくに応えたことがない、都合悪
くなると泣く、でもって、要領よく人生渡ることしか考えてないコトコの事態
が思いやられます。
 でも、ゲームばっかりやってるように見えて、実は、自分で百円ショップで
裁縫道具と端切れ買って、お人形のお洋服やお布団を作っているコトコは、大
変なリアリストなので、将来、何になったらいいのか、何になれるのか、全く
見当のついていないマナトより、苦労しないのかもしれません。
 2年生のときは、日本史が大好きな担任の先生の影響で、
「椙山女学園大学の国際コミュニケーション学部で歴史のお勉強をする」
 と言っていたのが、学園祭のときに、うちの大学で一番偏差値の高い(つま
りは扱いのいい)生活科学部の校舎に入って、おかあさんの研究室のある校舎
より、断然設備が整っているのを見て、
「やっぱり、お洋服の勉強するね」
 に変わりましたから。

 いずれにせよ、油断は出来ません。
 その頃には、状況がどう変わっているか、予想できませんから。
 バブル世代のおかあさんは、痛感しています。
 一年先はわかんないってね。
 だけど、努力だけは無駄にならない。状況の違いに振り回されるのは運だけで。
 今日出来る事をするしかありません。
 上手く行かなかったら? 次の手段を考える。
 諦めるな、風向きは常に変わるんだ。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第75回
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 子どもを教え育てていくうえで、ポイントとなる関わりとして、“褒める”、
“叱る”、“許す”、“認める”の他に“感謝する”ということがあると思います。
 特に褒めたり叱ったり許したりするのは、場合によってはどこか
“上から目線”的な雰囲気が漂い、子どもから反発を受けることがありますが、
“(真に)感謝する”場合は違います。
だからこそ、多少の照れ隠しがあったとしても、人は感謝された時が一番素直に
自分の行為に誇りと自信を持ちやすいのではないかと思います。また、感謝されると
いうことは、自分と相手との絆や自分自身の存在意義を感じられる大切な瞬間でも
あります。もちろん感謝する側にとっても、その時相手が自分のことを思ってくれ
たことや、自分のために何かしてくれたことを知って(気づいて)いるわけですか
ら、やはり自分と相手との絆や自分自身の存在意義を感じられる幸せな瞬間となる
でしょう。
 大げさな言い方をすれば、人として本当に幸せなことは、人に感謝し、人から
感謝されることなのかもしれません。
 だからこそ私達は、親として大人として、子ども達に感謝の言葉をかける瞬間を
見逃さないようにしていたいものだと思います。そして付け加えるならば、
私達大人同士もお互いの気持ちを認め合い、お互いの心ある言動に気づき合い、
感謝し合うことが、自分達のためにも、それを見ている子ども達のためにも大切な
ことなのではないでしょうか。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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