2012.07.02
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、7月号

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「子どもが育つってことは、未来が育つってこと。その手助けが出来るのは
 素晴らしいことだよ!」と、恩師が話してくれたことを、ふと思い出し
 ました。
 希望に満ちた未来を育む責任とその覚悟が、
 子供たちを取り囲む大人たちには委ねられています。
 

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第74回
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◇◆浦島太郎というか
                       
 職場では、個人の家庭の事情は鑑みていただけません。ちょっとは鑑みて欲
しい。いや、鑑みろ、ということもできないではない。こちらが言われたこと
はある。
 しかし、それをやったら組織なんてなりたたんだろー、というスタンスの堀
田です。
 というわけで、今年度、忙しい上に煩わしい、教務委員長という立場におり
ます。何故に、十何年かに一度のこの役割が、長男の初めての受験と重なって
んのかってことです。いや、勉強するのはマナトですが。
 というか、私、何かせにゃならんのでしょうか。
 先日、教育実習の巡回指導に出向いたときに、受け入れ先の先生から、ゆっ
くりお話したいけれど、受験生を抱えておられるのでは、お引き止めできませ
んねと言われました。高校の先生がそうおっしゃるということは、私はもっと、
長男の受験故に忙しくなっとらないかんのかと、不安になってしまいましたが
な。先生がお引き止めなさらなくても、職場が私をお引き止めくださいますし。
 そんなこんなで、マナトのテストの順位は、受験生になってから下がりまし
た。この時期に下げて来るかと、説教もしました。
 しかし、私もおとうさんもよくわかっているのです。
 自分の机すら持たずに、育児と家事に精を出して、名古屋市内でも屈指の、
公立の癖に妙に難しい中学校で、そこそこの成績をとっているマナトが、どれ
だけ偉い子か。

 中学3年生は、しんどい受験生であるだけではありません。修学旅行という
楽しみもあります。6月の初旬、マナトも行ってきました。
 日本中多くの中学に、かつてディズニーランドで先輩達がミッキーを池に落
としたせいで、出禁をくらっているという都市伝説があります。うちの学区も
そうです。後何年で、出禁が解けるのか、下の子には間に合わせたいわ、とお
っしゃる方もおられますが、私は東京方面にはしょっちゅう子連れで行くので、
マナトにとっても、改めて修学旅行で行くこともない場所かと思います。
 そんな彼らの行き先は、2泊3日の一日目が和歌山で体験学習、マナトは梅
干し漬けて、備長炭の風鈴を作ってきました。二日目、神戸で震災学習、及び
市内散策。三日目、USJ。うん、ちょうどいい。友達と行くんだから、こんな感
じがいいよ。
 でも、私は心配していました。マナトは、2年生のとき、複数の男子から「気
持ち悪い」「気持ち悪いのに息してる」「気持ち悪いのにランチ食ってる」等と
言われ続けて、学校に行くのが辛くなっていました。3年生になって、彼らと
は別のクラスになり、顔色もよくなったのですが、修学旅行が楽しみかと言う
と、特にそうでもない、むしろ知らない場所に行くのが不安だ、ということを
言っていたし、楽しそうに出て行ったわけでもないので、嫌な思いをしていな
いか心配で、帰って来る日には、好物ばかりを食卓に並べて待っていたもので
す。
 杞憂もいいところで、帰宅した彼は、
「むっちゃ楽しかった!」
 というなり、お土産を広げて、機関銃のように思い出を話してくれました。
ほんとうに、よかった。

 しかし、都会の学校なのか今時の学校なのか、彼らの修学旅行旅行は、私の
時代とも、私のイメージとも随分違っていました。
 まず、私服で行く事。高校のときは私服でしたが、中学は制服でした。
 それから、和歌山では民宿に泊まったけど、神戸はホテルだったとのこと、
ツインの部屋ですってよ。お風呂も大浴場ではなく、シャワー。枕投げもでき
んじゃないか。一日目にやってるか。
 ご飯はバイキング。朝食バイキングは許そう。いや、私が許可するしないの
問題ではありませんが。夕食もバイキングですよ。それも、ディナークルーズ
ですってよ。神戸の夜景見ながら。思わず叫んじまいました。
「なんだ、それ!」
「何が、なんだ?」
 叫ぶ理由すらわからないのが、行って来た本人です。
 時代について行けてるつもりが、やっぱり浦島太郎だったわ、私。

 とはいうものの、名古屋駅のコンコースを通ると、制服姿で大きな荷物を持
って整列している中学生をよく見かけます。そうそう、荷物も自分たちでは持
って行きませんでした。行きはまとめて宿に送ってもらったって。
 実家にいたとき、子ども達が驚いたように注目していたのは、白いヘルメッ
トを被って、揃いのジャージで自転車を連ねた十数人の中学生でした。どっか
に試合しに行くんですね。地下鉄どころか、普通の電車の駅でさえ、近くにな
いもん。
 だから、私がついていけてないのではなく、地域性の問題でしょう。
 私の母校、今でも制服で修学旅行行ってると思います、絶対。私服だったら、
何着て来るかわかんないもん。虎や龍の刺繍が入ってるとか、水商売と見まが
うというレベルで。マナト達の学校、派手な服装の心配はしてないからなあ。
高価な持ち物の注意はあるけど。そうなると、制服着て、いかにも修学旅行で
すって顔で、トラブルに巻き込まれるより(主に、他校からの因縁ね)、動き易
くて汚れても大丈夫な私服を着せておいた方が安心です。 
 そうだ、私は別に遅れてない。

 といいつつ、いろんなものに、へー今はこうなんだ、と思う体験は続くわけ
で。
 台風一過に油断して、大雨をくらった今日。三人とも、足元をびしょびしょ
にして帰宅しました。夕食後、子ども達の靴に新聞紙詰めて乾かそうとしたら、
乾いてるじゃありませんか。速乾性素材って、すげえ。そういえば、制服のシ
ャツも、なんでっていうくらい、速く乾きます。
 こんな小さな事に、時間の流れを感じることが多くなった、この頃です。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第74回
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 どのようなことでも偏らずバランス良く行うことは大切です。そしてそれは
子育てについてもあてはまると思います。
 例えば、叱ることも褒めることも、そればかり行って日常化し過ぎると、効果も
意義も薄れてしまうかもしれません。そういう意味では私達親は子どもの言動に
対する応えとして様々な“カード”を持つ必要があると思います。

 例えば「できたね」、「やったね」、「OK」、「そうだね」、「いいね」、
「お疲れ様」などの、“認める”というのも子育てに大切な“カード”なのでは
ないでしょうか。

 褒めるほどではないにしても、日々の生活の中で子ども達はちょっと良いことを
していたり、ちょっとがんばろうとしていたりします。そんな子どもの様子に
気がついた時には、是非“認める”で応えてあげたいものです。
 
 叱るとは誤った方向へ進むのを制し方向転換をさせることであり、褒めるとは
正しい方向を示し進むことを促すことだとするならば、認めるとは今の気持ちや
行いを共有することで、子どもに自信と安心を与えることなのかもしれません。
そしてその自信と安心は、やがて子どもに主体性と生きる元気をもたらしてくれる
ことでしょう。

 このように考えると、“褒める”、“叱る”、”認める“以外にも、親が持つべき”
カード“はもっといろいろありそうですし、きっとこうした“カード”の種類が
多いほど子育てのバランスは良くなり、楽しく幸せになるような気がします。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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