2012.06.05
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、6月号
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新しい教室・新しいクラスメート・新しい先生。
今春、取り巻く環境がガラッと変わって戸惑っているお子様も
少なくないことでしょう。
そんな中、運動会がおこなわれる学校もありますね。
力を合わせ、勝利をめざして団結することで、新しい絆が育まれることでしょう。
元気な声で「ただいま!」と帰ってきたお子さんの輝く笑顔は、
保護者の方々にとって何より嬉しい宝物ですね。
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第73回
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◇◆たくさんの卒業
カイトの中学生活は順調です。いやもう、これでもかっていうくらい。
先生は自分のいうことに耳を傾けてくれる。優しくて、でも厳しいときは厳
しいのは、大好きな小学校のときの担任の先生と同じです。「中学生だから」と、
なんでも頑張る。脱いだ制服はハンガーにかける。なんでも自分からやる。以
前は、百回言ってもわからない子だったのが、最近は二、三回でわかるように
なった気さえする。
カイトは絶好調なのですが、絶好調過ぎて外した羽目に対する苦情を、クラ
スメートがマナトのところに持ち込むので、マナトは迷惑しているようです。
先生を通して、カイトが調子こき過ぎるのは、おにいちゃんとは関係無いと伝
えてもらいました。
いろんなことが出来るようになったカイト。中学校の制服が似合うカイト。
カイトにとっては、子どもっぽいことをしなくなるのはすべて卒業らしいと気
づきました。
発達指数は48くらいですが、単純に頭の中は7歳程度と考えるわけにはい
かないのが難しいところ。小学3年生のコトコのお友達と、最近、よく遊んで
いるのも、精神年齢が近いからでは片付けられない気もします。カイトの頭の
中が何歳くらいかは、実のところ、わからない。でも、世の中は肉体の年齢で
回って行くので、電車に乗れば大人の料金を払うし、オハラ家が頻繁に利用す
るバイキングレストランでも大人料金になりました。なに、これでも充分元が
とれるカイトくんですが。
これ以前にも、もっと切実な問題がありました。カイトはふわふわの類が大
好きです。大きな風船みたいなので、ぼわんぼわん跳ねるのね。でも、あれは
多くが8歳までの制限付き。只でさえ、平均よりかなり大きいカイトですから、
誤摩化して入るわけにも行きません。とっても入りたいんだけど、駄目。でき
るだけ、見せないようにしてきました。ときどき、小学生なら大丈夫なところ
もあったので、そういうところには絶対行かせてあげました。どんなに急いで
ても、コトコがあんな子どもっぽいの、もう行きたくないって言ってもね。
もういくらなんでも、駄目でしょう。
小学生なら入れてくれた、栄のオアシス21にときどき来るふわふわに、も
う入れないよって言ったとき、カイトは訊きました。
「卒業?」
そう、卒業なんだよ。よくわかったね。
それから、キッズプレートも、もう頼めません。バランスが良くてカロリー
が低いから、カイトにはうってつけなんだけどな。カイト、妙に好きなんだよ。
でも、
「卒業?」
うん、普通にカツカレーでも頼んでくれたまえ。カロリーがっつりだがな。
卒業しなければならないというルールがあるわけではないケースもあります。
本人は卒業したくない。でも、親は卒業してほしい。少なくともおかあさんは、
そう思っている。
アンパンマンに関するもろもろのこと。本人の趣味はしょうがないから、表
向きはやめてほしい。アンパンマンのゲームするとか、のりものに乗るとか。
居間を占領するアンパンマンの玩具も処理したい。しかし、減るどころか、お
とうさんとおばあちゃんによって増やされる一方です。
その癖、アンパンマンのキャラクターによる絵日記は、書き続けてほしい。
面白いから。おかあさんも、たいがいわがままです。
それでも最近、訊くようになってきた。
「卒業?」
訊かれたときには満面の笑みで答えるようにしています。
「うん、卒業!」
これで、年相応の行動をしてくれるのであれば、しめたものです。が、発達
障害児の子育てがそんな展開見せる訳がない。
「ねえ、卒業? 卒業? 卒業なのっ? もうしませんっ?」
いいよ、少しくらいなら。
小さい頃から、カイトのお楽しみはガチャガチャです。そろそろ卒業するか
と思いきや、ネットで最新のシリーズを調べて、何が欲しいか言ってくる始末
です。
いいのかな、これくらい。大人買いしてる人もいるし。
欲しかったシリーズが、店先のガチャマシーンに入っているときの、踊って
喜ぶ姿を見ていると、しばらくは、いいかと思います。
そのダンスが、一番やめてほしいことかも、という可能性には、目をつぶっ
ておきます。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第73回
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何かしらの理由で子どもを叱った時、次に大事なことは、“許す”という
ことでしょう。
“上手な許し方”には3つのポイントがあるように思います。
1つ目は“許しどころ”です。叱っていたらそのうち子どもが逆ギレしてしまったと
いう話がありますが、許しどころのタイミングを外してしまったためかもしれません。
しつこくなり過ぎず、細かな所まで追い詰め過ぎたりせず、子どもの気持ちをしっかりと
確かめていくことが大切なのでしょう。
2つ目は“許し方”です。前回お話したように、親が叱るということは子どもにとって
大事なことを教えたいからですが、その大事なことが子どもにとって分かりづらければ、
お互いに嫌な思いをしてでも叱った甲斐(意味)がありません。だからこそ、親として
子どもにどういう行動をして欲しいと思うのか、どういうことをすれば良いのかを丁寧に
教えてあげたいものです。
3つ目は“許し終え”です。叱りっぱなしではなく、子どもが再び元気にがんばって
いけるよう促すことも、”上手な許し方”の大切な要素であると思います。また、いつまでも
不機嫌でいたり愚痴をこぼしたり、昔のことを再び怒ったりするのは“許し終え”が上手くいっ
ていないと言えるでしょう。
叱ることがそれまでのこと(誤った行動)を終わらせるのだとすれば、許すことは
新しい始まり(正しい行動)を促すことです。簡単ではないですが、“上手な許し方”を
心がけてみたいものですね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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