2012.05.03
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、5月号
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芽吹いた木々の緑が美しい5月を迎えました。
新生活にも少しずつ慣れてくるこの頃ですが、疲れを感じる時期でもあります。
ホッと一息ついてのんびりできる空間や趣味をみつけ、ストレスとも上手に
つきあっていけるといいですね。
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第72回
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◇◆ありがとう、さようなら
月日が過ぎるのは本当に速く、子ども達はどんどん大きくなっていきます。
カイトは中学生になりました。
小学校で六年間同じ担任の先生について、カイトは沢山のことを学び、お友
達を作り、喧嘩もしました。
六年生になってから、カイトの口癖は、「最後?」「お別れ?」でした。口調
が疑問形になるのは、カイトのいつもの話し方。運動会も学芸会もお祭りも、「最
後?」だから、いつも、「そうだよ」と答えてきました。
カイトは、とても寂しく、悲しかったと思います。でも、もっと寂しかった
のは私です。カイトの正確な気持ちがわからないのに、断定しちゃいけないか。
忙しさにかまけて、まだまだ残っている筈の小学校での日々がどんどん残り少
なくなって、もう、ひまわり学級の先生ともお友達とも、会えなくなると思う
と、連絡帳を書く度にため息ばかり出ました。保護者会でも、ママ同士でも非
常に言葉少なで、ご挨拶もきちんとできませんでした。だって、泣くもん。口
を開いたら。
先生のことが大好きなカイトは、先生が他の子に優しくするのに(そら、す
るわな)嫉妬して、年下の子に意地悪したりもしました。二学期には、死にた
くなる程の悩みだったそれすらも、一つの救いになった三学期です。小学校を
去ることのメリットができたから。このクラスから離れたら、この悩みから解
放されるって。
卒業式の朝、カイトは初めて中学校の制服を着ました。当然、名古屋市立の
中学校ですが、ブレザーです。レジメンタルタイもついてます。背の高いカイ
トには、よく似合います。
卒業式では、証書をもらった後、一人一人が将来の夢を話します。カイトは、
「大きくなったら食べ物屋さんになりたいです。中学校になったら合唱祭を頑
張ります。」
と言いました。
予定では、ここで号泣だったんだけどなあ。
珍しく、泣けませんでしたよ、私。
多分、期待しすぎたんだと思います。もっと大きな声ではっきり言えるんじ
ゃないかと。それから、合唱祭じゃなくて、「おいしいものを作ってみんなに喜
んでもらいたい」が母の予定だったので。カイトは、合唱祭がとっても大きな
目標なんだけど。それは、おとうさんが去年の合唱祭のビデオを撮って、パソ
コンでいつでも見られるようにしてあって、何度も見たからなんだけど。でも、
他の人にはわかんないじゃん、カイトの夢。
でも、ちゃんと言えて偉かったよ。席にもついてたし。
言えるなんて思ってなかったよね。ほんのちょっと前まで。
少し欲張ったおかあさんの涙は不完全燃焼で、教室でのお別れのとき、一杯
泣きました。泣きすぎて、最後の挨拶はやっぱり、思うようには口に出て来ま
せんでした。
カイトは今、毎日、元気に学校に通っています。「中学生だから」が魔法の呪
文で、これでいろんなことに頑張れるのです。学校まで十分、歩道橋があるの
で信号はなし。一人で歩いて通います。お兄ちゃんには頼らないの。
いつまで、この呪文が効くかはわからないけど、
「中学生だもん」
というカイトは頼もしい。
みんなが新しい生活に、それぞれ馴染んで行きます。ありがとうとさような
らと、思い出を力にして。
十数冊に及ぶ、小学校での連絡帳のやりとり、先生からの最後の言葉は「カ
イトくんのこと、大好きでした」です。
そして、卒業式から戻る道、カイトはずっと、
「泣かないで、元気出して」
と私の肩をさすってくれました。
更には、カイトもこんなことまで言えるようになったんだっていう実力も見
せてくれました。
「もう泣くなよ、面倒くせーな」
今回もこういうオチか。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第72回
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前回、前々回と“褒める”ということについて考えてみましたが、その一方で
子育てにおいて、子どもを叱るという行為を皆無にすることは至難の業です。自分や
他人を傷つける行為をやめさせたい時や、本当に分かって欲しい重要なことがある時
など、親にとっては叱らざるを得ない場面もあるのが現実ではないかと思います。
しかし、そもそも“叱る”とは何かを突き詰めると、それは“相手にとって
大事だと思うことを教える”ということなのではないでしょうか。緊急的に
あるいは非常に強く、子どもにとって大事なことを教えたい行為が“叱る”と
いうことであり、そうでないのなら、それはただ単に“怒っている”だけで
“叱る”とは似て非なるものなのかもしれません。
ある子がこんなことを言っていたのを思い出します。
「怒られるのは嫌だ。でも注意されるのは仕方ない。」
子どもにとっても、親が“怒っている”のか、“自分に何か大事なことを
注意(教えようと)している”のかは大切なポイントなのでしょう。
“叱る”の本質は“教える”ことだとすれば、子どもに何がいけなかったのか、
どのような行動を求めているのかを分かりやすく伝えるためにも、“自分をちょっと
冷静にさせる技”を身につけることが大切なのでしょう。
そして、普段から叱るようなことが少なくなるように、皆で協力して子どもを見守り、
丁寧に教えることこそが“上手な叱り方”の極意なのかもしれませんね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html
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