2012.03.04
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 NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、3月号

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 期待と不安の交錯した春に出会った人たちとの思い出が詰まった校舎から
 旅立つ日がやってきました。
 まっすぐ前をみつめる瞳が輝く未来を確信しています。

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第70回
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◇◆コスプレ中学生

 カイトはコスプレが大好きです。
 正確に言うと変装、それとも仮装? 教え子の中にもコスプレイヤーはいて、
彼女達のコスプレへの思いは尋常なものではないので、間違った使い方すると
叱られそうです。
 だから、学芸会は大好き。衣装を着ると燃えるタイプです。毎年、お別れボ
ウリングをする近所のボウリング場には、ピンの着ぐるみがあるので、行くと
真っ先に着るのが既に風物詩となっています。「カイちゃんがボウリングのピン
になると春よねえ」とか。着るだけで済んでいたのが、昨年はついに着たまま
投げるという暴挙に出て、只でさえ残念なスコアが、壊滅的になりました。
 始まりは2歳の夏、浴衣着たときのテンションの上がり方、すごかったもの。
うちわ片手に走り回る姿は、心身共に健康な男子そのものでした。
 幼稚園の入園説明会のときにも、見本としておいてある制帽をいきなり被っ
て走り回りました。そんなことしても、微笑ましいで済んだ頃が懐かしいです。
 それから、小学校の入学式、ひまわり学級で、私達夫婦とシンちゃんちのご
両親が先生のお話を聞いているときに、何故か教室にあった、ライオンのたて
がみのようなかぶり物を頭に乗せて、わざわざ先生と親の間を通って行ったこ
ともあります。気心の知れた今だったら即座に大爆笑ですが、当時はまだ微妙
な雰囲気になったことも憶えています。
 流石に、着るものは少ないのですが、かぶり物なら、世の中には意外にあり
ます。ヘルメットの類いには、まず行く。空手のときに使うフェイスガードも
大好物。マナトは中学生になったので、普段の練習では使わず、公式戦でのみ
顔の部分の無いヘッドガードを使います。だから、マナト自前のLサイズフェ
イスガードは目下用無し。何故か、カイトのベッドに常備されています。捨て
たり、譲ったりしない理由は、今Mサイズを使っているコトコがもう少し大き
くなったときに使う可能性があるから。帽子はとりあえず被り、似合います。
着こなし上手と呼ばれています。それから、リトルワールドでは台湾の家で、
中国の面(昔、ビートたけしがよく被ってた奴)がお気に入り。

 そんなカイトももうすぐ中学生です。先日、制服を買いに行って来ました。
 うちの学区は公立の中学には珍しい紺のブレザーにグレイのチェックのズボ
ン、レジメンタルタイの組み合わせです。それに、襟元のリボンとチェックの
スカート、どの組み合わせでも自由だそうです。ときどき、ズボンを履いた女
の子は見かけます。スカート姿の男子は今までいないとのことでした。いたと
しても、見た目わかんないタイプの子が着るんじゃないかな。校則違反じゃな
いんとのこと。夏はポロシャツ。
 学校新聞読んだら、制服に関するアンケート結果が載ってて、不満として「夏
はポロシャツ暑いから、シャツかブラウスがいい」と贅沢な意見がありました。
ポロシャツ、いいじゃん。汗で濡れて、肌に引っ付いたセーラー服は容易なこ
っちゃ脱げんのを知らんのだな。
 すっとしてて、生徒には好評らしい。っていうか、うちの学区の子にとって
はこれが普通なので、好きも嫌いも無いみたい。親には不評。このスタイリッ
シュな制服がお気に入りのおとうさんにはそこが不可解。でも、母親にはわか
ります。まず、値段が高い。ネクタイをなくす。マナトが二年間なくしてない
のは奇跡と言って良いと思います。学ランやセーラーは適当に着てたらどうに
かなるけど、きちんと着ないと目も当てられない。
 最後のは、カイトにとっては大問題です。下に着ているシャツが多少ごちゃ
ごちゃしてても、学ランだったら上から着ちゃえば大丈夫。でも、襟元が見え
るブレザーは下のシャツからしっかり着ないといけません。ネクタイは、結ん
であるのをクリップでとめるだけなので、たいしたハードルではないのですが。
でも、体育の授業の後とか、自分で歪まずにとめられるかな。
 とりあえず、ベルトは六年生の秋、長ズボンを履くようになってから、練習
して試行錯誤を繰り返し、穴で留めないタイプのものに落ち着きました。

 親は思うところいろいろであるものの、当のカイトは試着した自分を鏡で見
て、満足そうなこと。
「カイトくん、中学生だねえ」
 うーん、中身はまだまだなのに、見えてしまうのは実は厄介だ。外側だけで、
本人は成長したつもりになっちゃってるから。それとも、これもカイトにとっ
てはボウリングのピンみたいなものなのかしら。飽きたら脱げば良いと思って
いたら大間違いですよ。
 それから、とっても大切なこと。
 カイトは、嫌なことがあると、着ている服を鋏で切ることがあります。今ま
で、いろんなものを切って来ました。パジャマ、買ったばかりのズボン、同じ
くTシャツ、お仕事先のご好意でいただいた非売品の貴重なシャツも。
「カイト、制服は鋏で切ったら代わりはないよ。鋏で切ったら、中学生じゃな
くなるよ。小学校に戻ってもらいます」
「大丈夫だよ。おかあさん、心配ないよ」
 あるわ。
 どんどん先に行く彼の思考にはつかれてしまいますが、行きたくないと言わ
れるより千倍まし。
 まずは形から。おにいちゃんほどではないけれど、充分身長のあるカイトは、
見た目は楽勝で中学生です。今は、コスプレみたいなもんでいいんだよ。
 中身は、ゆっくり中学生らしくして行こうね。
 今までと同じように。
 

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第70回
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 時、「がんばったね。」と褒められると怒ってしまう子がいました。「褒めて
いるのに何故怒るのだろう?」と皆で首をかしげていた時、お母さんは、「この子は
実は、本当は自分がやりたくないことも我慢してやっているのではないでしょうか。
つまり人から「がんばったね。」と言われると、自分が嫌なことを無理にやった
(やらされた)と思ってしまうのかもしれません。だから褒められても嬉しいと
思うどころか、余計に腹がたってしまうのかも・・・。」と言われました。
 私はその話を聞いて、ショックを受けるのと同時にハッとさせられる思いでした。
 よく「子どもは褒めて育てるのが良い。」と言われます。それは一見簡単そうにも
思えますが実はとても奥が深いことです。たとえば上辺だけの褒め言葉やただの
お世辞はすぐにバレてしまいます。また、先述の例のように子ども自身が褒められたいと
思うことを褒めなければ、それは大人の価値観を押し付けているだけになってしまいます。
 時には照れくさいのか褒めてもプイッと横を向いてしまう子もいたりします。
そのような場合には子どもが適度に心地良くなる対応(褒め方の工夫)に配慮する
必要があるのでしょう。
 これらのことは、そもそも“褒める”という行為が誰のためにあるのかを問いて
いるのかもしれません。そういう意味でも私達親は、大人側からの褒め方ではなく
子ども側に立った褒め方を心がけていきたいものですね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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