2012.01.01
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2012、1月号

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 あけましておめでとうございます。
皆さま、お健やかな新春をお迎えのことと存じます。
本年もなにとぞよろしくお願いいたします。

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第68回
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◇◆忘れられないという不便  
  
 まず、やたらと記憶力がいいのが、悩みの種です。見たもの、読んだもの、
経験したこと、片っ端から憶えてても、ほとんど役に立たないもん。学生の頃
は重宝しましたよ。だから大学入れたんだし。共通一次世代だから。あれ、記
憶力だけでも、700点くらい行けたでしょ。理解力なくても。大人は、今更、
テストも受けないから、徳川十五代将軍全部言えたってしょうがないし。明ら
かに役に立ってるのは、学生の顔と名前がすぐ一致するってことでしょうかね。
 それから、根気が良いのも難点。三日坊主なんてどこの国の単語だ。カメラ
以外の継続を知らないおとうさんとは、対照的です。やると決めたらとことん
やります。だから日記は形態を変えて35年程つけてます。マナトが生まれた
年から、20年日記というのにしています。通販のおまけについて来たので。
「○月○日」の頁が20行に分かれているものです。毎年1行ずつ書くの。
書いてますよ。今、14年目。
 だから、忘れないんです。嬉しかったこともだけど、辛いことも。一番よく
ないのは、腹がたったことを忘れられない。その日の日記を書くと、どうして
も、上の行を読んじゃいますよね。一年前の今日、自分は何をしていたんだろ
うって。そして、それを読んだら、今度はその前の年が気になりますよね。只
でさえ憶えてるのに、「カイトの調子が悪い。すべては私の育て方が悪いんだそ
うだ。だったら育児は全部てめーでやれ」とか読んじゃった日には。
 更に、おとうさんは大変に記憶力の悪い人です。特に、自分の言ったことは
言ったら忘れます。憶えてても得しないから。うわ、正しい。だから私は、相
手が忘れてること、つまりは相手にとっては最初からなかったのと同じことを、
いつまでも憶えて、悶々としてるわけです。
 カイトはそういうところが私に似ています。唐突に言います。
「1月25日、日曜日、おとうさんが喧嘩して遠くへ行っちゃったねえ」
「9月8日、コトコが泣いちゃったねえ」
 私の日記で確認すると、実に正確です。曜日まで、入っているところがカイ
トですね。彼の頭の中では、記憶がどんな形で整理されているのか、見てみた
いものです。
 私は、カイトではないので、そんなに明確には憶えていられませんが、キイ
ワードがあれば、詳細に記憶がよみがえって来ることがあります。
「カイトは本当にコトコが大好き。ずっと寄り添ってる」
 7年前の今頃の日記です。
 確かにそうでしたが、すっかり忘れていました。だって、今や二人は互いに
天敵ですもん。家族で席に着くときには、コトコとカイトを一番離れたところ
に座らせるのが原則です。飛行機や劇場みたいに、一列に並ぶときは、カイト
とコトコを隣にしない、且つ、カイト(他人が隣にいると、迷惑かけるかも。
それから、隣の人が五月蝿いと、カイトがストレスためるときもあるから)と
コトコ(とにかく知らない人の隣には座りたくない)の両側に家族が座る、と
いうパズルみたいな問題を解かないといけません。正解は、おとうさん・カイ
ト・マナト・コトコ・おかあさん。マナトをできるだけ静かなところにおいて
あげる、という条件が入ると、おとうさんとマナトの位置が入れ替わりますが、
そうすると、家族の中で一番話の合うおかあさんとマナトが離れちゃって、全
然会話ができないので、不正解。
 カイト、ほんとに赤ちゃんコトコは好きだったなあ。コトコも、カイトが大
好きで、ずっとついて歩いてました。マナトには目もくれず。マナトはマナト
で、毎日、本当に毎日、公園で遊んでいて、家にいなかった時期だし。コトコ
が生意気で口数の多い女の子になっちゃって、この蜜月関係は終結しました。
 一方で、言葉が出て来ないという加齢現象も普通に起こってきました。すご
く不安だったけど、調べてみると言われてみればそうだわ、があるうちは大丈
夫なようです。ちゃんと学生の名前も憶えられてるし。ただ、卒業生の名前を
忘れる速度は速まったかな、これといった特徴の無い場合には。
 忘れてしまえたら楽なことだってある。というより、そっちの方が多い、と
いうのが忘れられない性を持って生きて来た感想です。同様にやたら記憶力の
良いカイトと一緒に、その切なさを分け合って生きて行こうと思います。
 って、カイトは別に切なくないのか、忘れられなくても。                      

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 2011年現在 椙山女学園大学 勤務

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第68回
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 できることは面白い。
 面白いから練習する。
 上手になると大好きになる。
 そして次の段階に行きたくなる。
「ヨコミネ式子どもが天才になる4つのスイッチ 横峯吉文 著 日本文芸社」より

 この気持ちは子どもに限らず、本当は全ての人に当てはまることだと思います。
年を重ねると、義務感や使命感、賞罰などによる動機もありますが、特に年少児の
ように自分に正直に行動する子どもの場合は、自発的な行動の多くが上記のような純
粋な気持ちによるものであるように思います。
 しかし、これは裏を返すとこのように言うこともできます。

 できない(分からない)ことは面白くない。
 面白くないから練習(勉強)しない。
 上手にならないと嫌いになる。
 そして他の所に行きたくなる。

 子どもが自らの意志で成長していくことを願うならば、子どもの純粋な自発性を大
切にしてあげたいものです。そのためにも、子どもの気持ちをよく知り、困っている
時には助け、子どもが色々な事に対して「面白い!」と思えるように見守ってあげた
いものです。そしてさらに付け加えるならば、私達大人(親)自身が常日頃から色々
なことに関心を持ち、積極的に取り組むことが大切なのかもしれません。子どもの
心を刺激するのは、身近な誰かが実際に何かに興味を持って積極的に取り組んでいる
姿を見ることなのですから。
 どうか今年一年が、皆さまにとって有意義な年となりますように、
心よりお祈り申し上げます。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
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 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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