2011.12.01
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2011、12月号
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師走を迎えました!
なにかと気忙しくなってきますが、安全第一。
急がば廻れです。
大晦日を笑顔で迎えられるよう、踏ん張りましょう!
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第67回
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◇◆ はやくいきたいなあ
時間が経つのは本当に速いです。
二年に一度の学芸会が、もう終わってしまいました。カイトにとっては最後
の、コトコにとっては初めての、オハラ家としては感慨深い学芸会です。とい
うことは、狸から早二年ですわ。
二年前、私はカイトの肥満に頭を痛めていました。おりしも学芸会の季節、
4年生の演し物は「セロ弾きのゴーシュ」。カイトは、彼のおなかにおあつらえ
向きの狸役でした。茶色の服を探すのに苦労したものです。
うちの子ども達の学校は児童数が多いそうです。一学年、4クラスか5クラ
スあります。なので、学芸会も人数が多く、迫力のある舞台になるらしいです。
らしい、というのは、他の学校を知らないので。以前、保護者会で他所から移
って来られたばかりの先生が、そうおっしゃっていて、私が実感したわけでは
ないのです。
確かに、コトコ達の民話調の「ヤーレンソーランでどっこいしょ」という演
目は、フィナーレで全員が踊るのが圧巻で(振り付けの関係で、ものすごく大
規模なオタ芸にも見えましたが)、初めて学芸会を見たお母さんが、
「すごいですね、小学校の学芸会」
と感動しておられました。
PTAの広報委員長であるおとうさんは、カメラ係です。全学年の写真を撮り続
けて、コトコちゃんの演技が、他の子とは一線を画していると言っています。
確かに、良い表情の写真が撮れていますが、そこまで言うのは言い過ぎという
ものです。
それから、コトコちゃんが浴衣姿で登場するとは知らなかったので、すぐに
は登場に気づかず、どうして教えてくれなかったんだとの苦情もいただきまし
た。私と子ども達の間では常識だったので、わざわざ言いませんでした。とい
うか、なんで、狭い家で一緒に暮らしてるのに、そこまで情報に疎くなれるん
だ。
さて、6年生は毎年かなり力の入った舞台を見せてくれます。流石は最高学
年、飛び抜けて、質がいいのです。だから、6年生を学芸会で締められる学年
の子は、ちょっと得していると私は思います。ちなみに、3人とも当たり。
カイト達は劇団四季の「夢から醒めた夢」です。場面毎に主役を違う子が演
じるので、彼女達の「私が一番」オーラに、かなり圧倒されます。そしてカイ
トは、全然違う次元で、「こども12」かなんか、やってます。
今回の台詞は二つ、「おとうさんや、おかあさんにも会えるね」「はやくいき
たいなあ」。死んでしまった子どもの役ですが、とっても前向き。衣装は、オレ
ンジのマントでこれもお気に入り。何度も、大きな声で台詞を練習しました。
大き過ぎるときは、
「もっと小さく、楽しそうに言おうね」
と注意して。
でもって、本番にはニコニコして登場したのですが、肝心の台詞がささやき
声。最後なので、一番前で見ていたおかげでかろうじて聞こえました。担任の
先生はびっくりしたそうです。練習と、子ども達だけが観覧したときには、完
璧だったのに。
「本番に弱いです、ね」
お迎えに行ったら、カイトにそうささやいてくれました。
「がんばったよ」
カイトは言いました。
うん、頑張ったよ。ちゃんと、みんなと一緒に登場して、退場して、楽しそ
うにしてたカイトが、頑張っていないわけは無いと思う。
でも、おかあさん、欲張っていいかな、練習みたいなカイトくんがいてくれ
たらいいなと思った。
おかあさんの為にも、おとうさんの為にも、カイちゃんを気にかけてくれる、
いろんな人の為にもね。
思えば、学芸会デビューの牛役が、あまりに上手く行ったため、この子は本
番に強いという印象が強く残っていますが、2年前の狸も台詞言わずに、カス
タネットに語らせてたな。あれはあれで受けたからよかったようなものの。し
かし、今回は受けの要素も無いというか、もしかして、台詞飛ばしたことに、
観客は気づかなかったのではないだろうかという状況です。問題無いと言えば
それまでですが、それはそれで寂しい。
カイトは、言えなかった台詞を、家で何度も何度も言いました。うっさいわ。
「はやくいきたいなあ、ちゅうがっこう」
こんなアレンジでアピールできるようにもなりました。
相変わらず、いいオチ持って来るね。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第67回
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「僕、やってないもん!」
ある学校で、偶然テーブルにぶつかり、その上に置いてあった物を床に落として
壊してしまったA君は、責められそうな雰囲気の中でそう言ったそうです。みん
なが見ていたので物を壊したのはA君で間違いありませんでした。A君は下手な
言い逃れをしようとしたのでしょうか?開き直って意固地になったのでしょうか?
しかし、その時の先生は(A君は何を言いたいのだろう?)と思って彼の真意を確か
めました。するとA君はやっと本当に言いたかったことを、今度は正しく言葉にす
ることができました。
「僕、わざとやってないもん!」
“わざと“という3文字があるかないかでA君への評価は随分異なったものに
なってしまいます。もし先生がA君の最初の言葉だけですぐに判断や評価を下して
いたらと思うと、ぞっとします。
このエピソードは私達大人が、特にまだ表現力が幼い子どもの言動を捉える時、
表面的な捉え方や短絡的な判断をするのではなく、思い込みを捨てて、子どもの本当の
思いを知ろうとする気持ちを常に忘れてはいけないということを教えてくれます。
そして人は自分の思いを知ろうとしてくれる人に、もっと伝えたい(知ってほ
しい)と思うものですし、その相手の言葉にも耳を傾け素直になるものなのでは
ないでしょうか。
コミュニケーションとは、まず相手を本当に知ろうという気持ちを忘れず、
しっかりと相手と向き合うことから始まるのかもしれませんね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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