2011.10.01
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2011、10月号
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秋晴れの日曜日、近所の小学校で運動会が行われていました。
がんばっている我が子のナイスショットを収めようと、カメラを
片手に奮闘中のお父さんの姿が、微笑ましく見えました。
例年になく自然災害が際立つ今年だからこそ、
普段通りの日常をありがたく感じます。
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第65回
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◇◆おかあさんの負け惜しみ
子どもの話となると、いつ原稿に手を付けるかで内容が変わってくるもので
す。今月はカイトの話にしようと思っていたのですが、原稿書き始めた時点か
ら見た昨日、マナトとコトコが極真会館の全東海空手道選手権に出場したので、
その話に変えました。というのも、同じスポーツをするにしても、二人のあり
方はこんなに違うんだなと、感じ入ったからです。
この地域の強豪選手が集まる全東海は、我が家にとって特別な大会です。私
にとって、というべきかもしれません。当の本人達は、普通の試合の延長だと
感じてるみたいだし、おとうさんは関東の人なので「全東海」がどの地域かも
実感としてわかってない気がします。でも、師範が認めた選手しか出られない
大会。マナトには、3年前まで縁の無い大会でした。他所のすごく強い子が出
る大会。うちの子は一生出ない。だったのですが、ここ3年は、有難いことに
続けて出ています。
今年、マナトは3月の愛知県選手権で、一回戦敗退でした。今回は主催する
のがうちの支部ということで、その関係のちょっと大きくなった枠の出場。コ
トコはそこで優勝しているので、余裕の出場です。但し、大きな大会なのでル
ールも厳しく、愛用のサポーターが規格外ということで、直前に変えたのが気
に入らない。でも、それは些細な問題です。彼女にとって、もっと大きな問題
は、女子が道着の下に着るシャツ(因みに、男子は道着の下は素肌がルール。
シャツ一枚でも、突きで受ける衝撃が随分違いますから)にも規定があること。
極真会館のマークが入っているシャツでないといけません。いろいろなデザイ
ンがありますが、趣味は乙女なコトコが好みそうなものは当然ありません。黒
地に「一撃」とデザインされたシャツを着るのは、彼女にとっては大問題のよ
うで、ご機嫌斜めです。出られるだけでありがたい大会だってのに。
そして、結果はマナトが中学生・重量級で4位。マナトは、2回泣きました。
トーナメントの4位は辛いのです。トーナメント戦は、原則、負けたらそこで
終わり。3位決定戦の出場者だけが、負けて更に戦います。そして、たった一
人、2回負けないといけないのが4位なのです。重量級と軽量級の境目は55
キロ。57キロのマナトの対戦相手は、70キロ以上の男の子ばかりです。ってい
うか、「男の人」です。風貌が。だから、「負けていい」とは、マナトに失礼な
ので言えませんが、母の本音は無傷で終えてくれたらそれでいい、に尽きてい
ました。一瞬、病院行く?という場面があったものの、たいした不具合も無く
(あくまでも、たいした、ね)自分の試合を終えました。負けたマナトの偉い
ところは、コート場で挨拶した相手に、改めて「ありがとうございました」と
言いに行くのを忘れないことです。これは、一人の選手に5試合くらい連続で
勝ったことがあって、その相手から学んだものです。おそらく、相手の選手か
らしたら、こいつさえいなければ、という気持ちでしょう。私なら、そう思い
ます。でも、いつも爽やかに挨拶しにくることを忘れない選手でした。まだ、
小学生なのに。そこも、頑張りどころなのです。負けても、礼を尽くせるかど
うか。負けて礼を忘れたら、本当に負けてしまうのが武道なのだと、彼は感じ
ているのだと思います。それが教えてくれることもありますし。一度、惜敗し
た相手に、挨拶しようと探していたら、倒れているところを発見したと。自分
は、ここまで力を尽くさなかったから負けて当然だと思ったし、次はここまで
やらなきゃとも痛感したようです。そして、もう一つの偉いところは、決勝を
控えた妹のセコンドに徹すること。相手の予選を偵察し、適度なウォーミング
アップを促し、適切なアドバイスを与えます。
それに引きかえ、決勝戦を迎えた本人は至ってお気楽極楽です。本人の主張
では、そんなことはないそうですが、おかあさんからはそうとしか見えません。
早く弁当が食いたいと5分置きに言い、相手の準決勝観てこいと言っても、だ
いたい手のうちはわかってるからいいと席を立たず、練習もしないでおかあさ
んにくっついて回り…。試合前には心の平穏を乱すような言動を慎もうと心し
ているおかあさんを、ついには、
「試合前に巫山戯るな!」
と怒鳴らせる実力の持ち主です。
でも、始まってみると、前回、辛勝した相手を破って勝ち上がって来た選手
に圧勝しました。普段は帯が解けることはなく、幼年部時代に使っていた帯留
めも使わなくなったのに、完全に帯が解けていたので、本気の動きをしたんだ
ということはよくわかります。でも、判定とは言え、5対0で戻ってきたコト
コは満面の笑みでした。勝っても負けても泣くマナトとはえらい違いです。
マナトは、試合のときは、ほとんど周囲の声が聞こえないと言います。でも、
ときどきすごくはっきり聞こえるんだけど、とも。
対するコトコはすごく聞いています。今回のご不満。
「○○ちゃん(コトコは、いつも相手の選手をこういう呼び方をするのです。
女の子の選手は少ないから、知り合いになりやすいんですね)を応援する声ば
っかり聞こえたの。私のは、マナトがいっぱい、おかあさんがときどき。決勝
なんだから、ちゃんと応援してくれなくちゃ」
大変に、コトコらしい意見だと思いますが、何故か思い出すとき、「グリー」
というアメリカのドラマの主人公・レイチェル(の吹き替えの人)の声で再生
されます。うざいけど、歌と踊りは最高、という女の子ですが、「歌と踊り」を
「空手」に置き換えると…。
二人揃って、トロフィーがもらえる機会はそうそう無いので、しっかり記念
撮影も沢山しました。二人とも優勝だったら、そりゃ嬉しいけど、でも、負け
て戻って来る子どもを元気づけるのも、母としての醍醐味なんですよ。負け惜
しみにしか聞こえませんけどね。
マナトくらいになると、そうそう母親を必要としてくれないから。勝ったら、
一言よかったね、だけど、負けたときには、ずっと慰めていられる。負けるの
も、本人はともかく母としては悪いことばかりじゃないってことです。
試合となると、一日、ずっと良い子で待ってるカイトの頑張りも、選手に負
けません。リュックに、おえかき帳とおりがみ、クーピー、鋏、テープを入れ
て、静かな場所を探して、作品に取り組みます。
三人が三様のあり方を見せてくれる、試合の日は休日なのに、家族全員休め
ないけど、ときにはいいな、と思うのです。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第65回
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特に年頃の子にとって、“自分で決めてやる“ということはとても重要な意味を
持っているようです。
親としては、子どもに失敗させたくない、嫌な思いをさせたくないという気持ち
から、子どもを諭して考えを変えさせようとすることもありますが、子どもの決意が
硬く、むしろより一層意地になってしまうこともあります。親にとっては意外なこと
かもしれませんが、その時の子どもは、まるで「自分以外の人が決めたレールに乗っ
て成功するより、自分が決めた道を進んで失敗する方がましだ。」と思っているように
さえ見えます。つまり、成功でも失敗でも自分で決めてやりたいという思いは、まさ
に自分自身の力で生きていると実感したいという気持ちなのかもしれません。
しかし、子どもの考えにまだ未熟さが感じられるような場合には、親としてはハラ
ハラさせられ、「やはりこうした方がよいのではないか。」と諭したくなることもある
でしょうし、もちろんそれが必要な時もあると思います。
子どもが自分で考え納得して生きていく力を身につけるためには、たくさんの経験
と、色々な人の考え方を学ぶことが必要です。つまり、親の意見に縛りつけてもだめ
ですが、逆に最初から子どもまかせに放任してもよくないのだろうと思います。そこ
にはやはり、親子の信頼関係とお互いの気持ちや考えを話し合い、良い方法を一緒に
考えようという姿勢が求められるのかもしれませんね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html
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