2011.07.02
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2011、7月号
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猛暑記録を早々と抜きかえる6月でしたが、
節電対策を考えながら、これからの夏本番を乗りきらなければなりませんね。
川へ行って釣りを覚えたり、山登りで高山植物を探したり、普段の生活では
経験できない思い出をいっぱい作りながら、エコできたらいいですね♪
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第62回
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◇◆やっと晴れたね
六年生になって、小学生としての生活が今年で終わりになることを、カイト
は自覚しているようです。何をするにも「これで最後?」「お別れ?」という発
言がついてきます。先生からも言われるのでしょうね。最後だから、しっかり
頑張ろうって。
頑張って欲しい行事その一、運動会はうちの学区では五月です。五月二十八
日の土曜日、おかあさんの誕生日が運動会でしたが、無情の雨。翌二十九日の
日曜日に頑張ろうと思ったら、また雨。なので、普通に起きて、お弁当もって、
一日授業受けてきました。日曜日なのに。月曜日は代休で、お休みして、火曜
日と水曜日は予備日として設定されておらず、木曜日は、また雨。
ここで、夫婦の明暗が分かれます。おとうさんは、金曜日から取材なので、
運動会を見られないばかりか、広報委員長なのに、写真撮影の指示もできない
ことに。おかあさんは、木曜日だと午前中は授業があるけど、金曜日なら見ら
れます。
六月三日、金曜日。なんだか、永遠にできないような気すらした運動会が、
ようやく実施されました。
今まで、カイトは運動会ですべての競技に曲がりなりにも出場できていまし
た。三年生くらいから、一生懸命探さないと見つからないくらい、馴染んでい
ました。でも、六年生の競技は、今までとはわけが違います。「流石は最高学年
だ!」と感心されるような、小学校生活の総まとめに相応しい感動的なもので
なければならないからです。いや、毎年、泣きそうになりますよ。自分の子が
いなくても。
その競技はと言うと、騎馬戦と組み立て体操。
先生は、随分苦労されたと思います。多分、今までなかった「参加せず」、も
選択肢の中にはあったでしょう。それでも、仕方ないと私は思っていました。
大きくなるに連れて、同年齢の子と較べて出来ないことが、どんどん増えると
言う、頭ではわかっていたことが、カイトと私の実感として迫って来ていたか
らです。騎馬戦はともかく、体操は何年か前まで、「ロック・ソーラン」という
かなり激しい、でもかっこいい踊りだったので、こっちのほうが、やりやすか
ったかもなあ、などと詮無いことに思いを巡らせたりもしたのです。
でも、やっぱり先生は、彼らを参加させるための力を惜しまない人でした。
また、学校全体も。
騎馬戦では、ひまわりの子は「しっぽ」。騎馬の後から、ついていきます。カ
イトの騎馬は、同じ子ども会のお友達が騎手。
「カイちゃん、しっかりつかまってろ!」
つかまったら、ズボンが落ちました。
「じゃなかった、しっかり押してくれ!頼りにしてるからな!」
馬の中にも、小さい頃からの仲良しがいました。何回戦もあったけど、最後
まで残る強い馬でした。ときどき、しっぽ、落としちゃったね。
組み立て体操でも、次々とフォーメーションを変えて、最終的には大きな塔
を作る、お友達の近くで、笛が鳴る度に、それらしいポーズを決めていました。
おとうさんに言われて、一生懸命撮った慣れないビデオの画面で、カイトは
とても楽しそうに笑っています。
ひまわり学級にも新入生が来て、以前は、かなりの時間ついてくれていた先
生も、一年生のお世話で、そうそうカイトの所までは来られません。でも、ち
ゃんと座っていました。ちょっとそわそわすると、近くの誰かが、肩をぽんぽ
ん、としたり、声をかけたりしてくれるので、また、気を取り直せます。
最後の運動会は、カイトの赤組の勝ちでした。
自分の組が勝っているのかどうかなんて、関心の外だった一年生の頃。
今は、帰り道で、
「おかあさん、赤の勝ちだよ。やったあ!」
と、はしゃいでくれます。
「でも、コトコちゃんが白組だから、お家ではあんまりその話ししないでね」
釘を刺したら守ってくれるのも、大進歩。
だって、
「コトコ、去年もカイトに負けたんだよねえ。自分の組、一生勝てる気がしな
い」
って言ってる子の前では、下手なこと口にできませんよ。
大丈夫、コトコには、まだまだ先があるから。勝てる日も来るよ。きっと。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 勤務
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第62回
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何かを目指す時、最初の一歩はとても大切であると思います。もちろん
子育てにおいてでもそれは同じです。
しかし、特に子どもに何かを指導する時や、問題を解決しようという
時は、すぐに100点満点の結果を求めてはいけないということを忘れては
いけないと思います。まだまだ未完成な部分が多い子どもなのですから、
何でもスムーズに思い通り事が運ぶわけはないのが自然だからです。
子どもができるようになるプロセスには様々なパターンがあります。も
ちろんスムーズにできることもありますが、しばらくは力を蓄える変化の
ない時期を通り過ぎた後に急にできるようになることもあります。あるいは
少しずつゆっくりできるようになることもあります。できたりできなかったりを
繰り返しながら段々完成していくこともあります。
だから親としては、仮に達成目標を10だとすると、まずはそのうちの2か
3くらいができれば良しというように心がけます。そしてそれができるように
なったら次は5か6を目指します。そうしているうちに気がつけば8や9、そ
して10できるようになるものです。
例えれば大きなタイヤを転がすようなものです。最初に一回転させるのが
最も労力がかかり大変です。しかし転がりはじめると押す力も軽く済み、順
調に回転し先に進むことが容易になっていくものです。最初から欲張り過ぎ
ないように、肩の力を抜いて子ども達を応援してあげたいものですね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html
◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
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