2011.04.02
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2011、4月号
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東北地方太平洋沖地震に被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
一日でも早い復興をお祈り申し上げます。
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第59回
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◇◆いつかのはなし
もし、私だったら?
被害に遭わなかった日本人のほとんどすべてが自問したと思います。
自分が被災者でもなんの不思議も無いんだ。
人は、自分だけは大丈夫だと思いがちです。災難がよけて通ってくれると。
でも、今回の惨事は、そんなこと思わせてくれなかった。
テレビでパソコンで携帯で、圧倒的な量の情報が映像を伴って流れ込んで来
る時代になって、初めての大規模災害でした。津波がライブで見えてしまうの
です。編集なしに。それは遠くのことを他人事にしてくれないのです。
私は、カイトの母親です。
「うちのこにかぎって」を裏切られた経験を持っています。自分だけが安全地
帯にいるとは、とても考えられないのです。
昭和39年生まれの私は、小学生のときに東海大地震の可能性を報道によって
知らされました。それは、柔らかい心にしっかり食い込んで、自分がいつ地震
で死んでも不思議は無いと思い込んで生きてきました。
カイトが診断をもらってからは、そういうとき、どうしようかと考えて、で
きるだけ避難しないでいようと決めていました。避難の基準は、家が住めない
状態になっていることで、一応、うちのマンションは施工主さんとは違う、管
理会社さんの診断で、震度6でも最悪部分壊と言われています。想定外の事態
はいつだって起こりうるものですけどね。
難しい子どもさんをお持ちのおとうさんやおかあさんは、今回、改めてこう
いうときどうしようと考えられたのではないかと思います。
ツジイ先生から、実際に、避難所で困っている人がいるから、動くよととい
うお話が届いています。
名古屋市千種区の震度は4とされています。私には、随分揺れたように感じ
られましたが、下校途中のコトコは気づかなかったそうです。途中の道で、怖
がっているかと迎えに行ったのに。一年生が三人で帰って来て、それぞれの親
が歩いてくるのを、不思議に思ったようです。
ひまわり1組は授業中でした。
「地震、隠れろ」
先生の一声で、みんな机の下に入ったそうです。
「みんなかくれた。じょうずにかくれた」
カイトが自慢げに教えてくれました。
ひまわりの仲間は、ちゃんと先生のいうことを聞いて、誰も騒いだり、怖が
ったりしなかったということです。
我が家に、東京から高校生のおねえさんが避難して来たりもしました。
「スーパーにものがあって、電気がついてるの久しぶり」
でも、名古屋のスーパーからも一時的には、インスタント食品とお米、電池
が消えました。
いつか、自分の身にこういうことが起こるかもしれない、と私は思っていま
せん。
きっと起こる、と思っています。
そのときに、カイトがどういう行動をとるのか。いろいろな可能性を考えて
います。
そんな自分を、おかあちゃんになったんだなあ、と今更ながらに思うのです。
若い頃の私は、不安から逃げてばかりいたから。嫌なことは考えないように
していたから。私に何かが起こっても、私一人の問題だから。
さっき、おとうさんが言いました。3月のカナダ取材は流氷が溶けてキャン
セル、4月の北海道取材も、流氷は無いし、今や日本中がそれどころではない
ので、家にいます。
「災害があっても家族が一緒にいられるからいいね」
珍しくいいこと言った。
他人に責任を持たなければいけないと思うと、万一の事態が怖くなります。
でも、一人でいるより、一緒が良い。
何があっても今しばらくは、私は彼らのおかあさんでいます。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
2011年現在 椙山女学園大学 国際コミュニケーション学部 表現文化学科 准教授
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第59回
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以前、このような言葉を聞いたことがあります。
「“あたりまえのこと”が、あたりまえにあることこそ幸せ。」
東北、関東方面を中心に甚大な被害をもたらした東日本大震災が起きてから
1カ月がたとうとしています。今でも現地や当事者の方々は、一刻も早く平常な
生活を取り戻すために日夜尽力されていることと思います。
また、被災地ではない地域でも連日地震関連の報道が流れ、物資や電気、燃
料不足などで大人達が不安と混乱を抱く姿を見て、子ども達自身も夜泣きや爪
かみなど、様々なストレス反応を見せているという記事がありました。経験も理
解も十分ではない子どもにとって、いつもと違う世の中や親の雰囲気は言いよう
のない不安を感じさせたのでしょう。子どもにとっても、“あたりまえのこと”が、
あたりまえにあることは大事なことなのでしょう。
“あたりまえの日常”は空気のようなもので、私たちはそのような平常の生活が
続くことの大切さを忘れないようにしたいと思います。
育児においても、子どもが朝元気に起きてくること、お互いにあいさつして食
事を共にすること、それぞれが家を出てその日一日を無事に過ごして帰ってくること、
いたずらや失敗をして怒られたり怒ったり、面白い話に一緒に笑ったり、そして夜子
どもが穏やかな寝息をたてて夢を見ることなど、“あたりまえのこと”が、あたりまえ
のように繰り返されることへの感謝を忘れずにいたいものですね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html
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