2011.02.01
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2011、2月号
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寒い毎日が続いていますね!
今月は、堀田先生から長編が、
宮地先生からも心温まるエッセイを届きました♪
暖かいお部屋で、どうぞお楽しみください!
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第57回
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◇◆極寒ボーイ
オハラ家には珍しく、おかあさんが家族をかき回す展開で、年末にアメリカ
に行ってきました。もちろん目的は、マナトにマナティを見せること。駄洒落
かって言われるけど、マナトはそもそもマナティのような人になって欲しくて
つけた名前。体が大きいから天敵を持たない、草食性だから誰の天敵でもない。
でも、不安はありました。やっぱり事故や怪我のことを考えちゃうし、マナ
トの場合、異常気象を呼ぶ男なんですよね。マナティに会いに行くのは、フロ
リダ。冬でも半袖、短パンで暮らせる地域です。でも、ちびマナトと3回行っ
て、3回とも寒かったのをはっきり憶えています。向こうで家族全員の長袖を
買って、散財したので。
そもそも彼には「エルニーニョ」という渾名がついたことすらありますから。
マナトが生まれて初めて迎える3月、私達はおとうさんと一緒にあざらしの赤
ちゃんに会いにカナダのマドレーヌ島に行きました。私達が知っている3月の
流氷は、水平線までずっと続いていて、そこが海であることを忘れるくらい頑
丈で、トイレも小屋もヘリで持って行って、お泊まりもできるところだったん
です。だから、赤ちゃんマナトがあざらしの赤ちゃんと並んで座って遊ぶこと
なんて楽勝でできる筈でした。でも、その年、流氷は島の近くに来ませんでし
た。あざらしウォッチングを主催するホテルには、世界中からあざらしを観に、
観光客が来てるのに。お天気も悪い。気温が高いと雲が出るらしいんですね。
ホテルの雰囲気は最悪です。エルニーニョ現象が原因だと言われていました。
そんな中でも、特に不機嫌だったのがイタリアから来た大観光団。いたりあ
ーのは陽気な人種かと思っていたら。添乗員さんがすごく責められて可哀想で
した。普通、数泊で島に滞在しますから、一日天気悪いと、タイムリミットが
確実に一日縮まります。激しくいらいらした添乗員さんから観ると、のほほん
とした顔で、特に目的も無く、3週間くらい滞在している母子なんて、実に目
障りな存在だったのでしょうな。マナトを見ると、にやっと笑ってはいますが、
吐き捨てるような調子で、
「エルニーニョ!(当然、巻き舌)」
スペイン語で、「男の子」という意味なんですよね。間違ってはいません。
島にいても特に娯楽は無いけれど、都市に戻れば観光する先は幾らでもあり
ます。その団体は、半数が島を出て、半数が残るという選択をしました。そし
て、覿面に半数が出て行った日、天候は回復、一時的にでしたけど。それでも、
流氷に行き、あざらしの赤ちゃんに会えました。戻って来た団体さんは、すっ
かり陽気なイタリアーノになっており、マナトを見るなり、昨日までとは全く
違う語調で、
「エルニーニョ!(やっぱり巻き舌)」
単に「男の子」という他に、「イエス・キリスト」「神の子」という意味もあ
るのだそうです。
マナトを氷の上に連れて行くつもりだったけど、それどころではなく、ホテ
ルもクローズしてしまうというので、何日か早く、経由地であるトロントに戻
りました。時間があるので、ナイアガラの滝でも見るかと出かけたところ。
濃霧。
滝見えねえ。音はする。
更に我が家の男達は、フロリダに行くと熱を出す。島では元気なのに。きっ
と、流氷の島では、ばい菌が死んじゃってるんだと思います。
とりあえず、事前に現地の天候チェックは怠りませんでした。
寒い。半袖じゃ寒いわ。長袖持って行こう。あ、どのみち、日本から来てく
か。
便利な物です。以前は、こんなふうにネットで世界の天気がわかるなんてな
かったから、現地で大変だったのです。
ついでに、性能が良くて軽いノートパソコンを持って行けます。日本の情報
もなんでもわかる。日本に帰って、えーってことはありません。大桃美代子が
ツイッターでなに呟いたかも分かるんです。
なので、ついた途端に天気予報を見ます。
寒い。
ディズニーランドに行く予定の日は、とりあえず20度あります。でも、半
袖ってことはない。そして、マナティに会いに行く予定の日の最高気温は、9
度。それ、今の日本だろ。普通に寒いだろ。それも、私達がマナティの町に滞
在する間だけ寒い。シーワールドに行く予定の日は23度。帰国した翌日は2
5度の予想です。25度なら、普通に半袖ですね。
急に予想が変わったりしないかなと期待してても、全くそんなそぶりは無く、
船に乗る日の朝、気温は氷点下で外は一面の霜できらきらしていました。フロ
リダの霜!レアもの好きのマナトにはうってつけかも。
本当は家族で水に入る予定でしたが、ちび二人はとてもじゃありません。マ
ナトとおとうさんも、ウェットスーツではなく、念のために持って行ったドラ
イスーツで入りました。ドライスーツというのは、私も彼と結婚しなければ知
らなかったかもしれない、一般的にはなじみの無いものだと思いますが、全身
がすっぽり入る、濡れない潜水具です。着心地は、けしてよくありませんが、
寒くはない。寒い分、マナティはあったかい水域に集まっていて、マナトは堪
能したようです。コトコは船の上からぶーぶー言っていましたが、船の周りに
もわさわさ来てくれて、碇についたロープで遊んでたりしたので、水の上に乗
り出して触ったりしていました。
二日続けて船を出し、今日は帰るという日の朝刊、第一面は寒波についてで
した。10年前、同じモーテルについたときには、急に前も見えない大雨が降
り出して、急いでマナトとカイトを抱えて部屋に入れたけど、あのときも、翌
日の新聞の一面は暴風雨についてだったな。
どこにいっても異常気象を巻き起こすエルニーニョくんは、大きくなっても
極寒ボーイでした。
でも、思い切って連れて行って本当に良かったと思っています。何も信じら
れなくなる年頃のマナトが、自分が何によって名付けられたかを実感したこと、
遠い国に自分を待っててくれる人がいると知ったこと。緊張して、自己紹介す
るマナトにモーテルのオーナーは答えました。
「知ってるわよ。あなたが生まれたときから、ずっと」
マナティのように大きく優しくなってほしくて名付けた男の子は、見事に名
前の通りに育ってくれました。文字通りの草食性。誰の敵でもなく。そして、
大きくて空手だけは強いので、ちょっかい出したい天敵も、なかなか手は出せ
ないのです。
良くなかったのは、帰国便で荷物が一つなくなったこと。状況からして、盗
難でしょう。
とっても大切な物を沢山なくしました。代表として、コトコが友達の為に一
つ一つ選んだお土産と、私の完成して原稿をあげときましょうか。
でも、みんなが元気で戻って来られたので、贅沢は言いません。盗んだ人は、
許せないけどね。
五人家族として、大きな思いでを作れて、良かった。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第57回
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今シーズンの冬は、たくさん雪が降り、受験生やそのご家族は大変なご様
子です。でもそれぞれが自分の進路に向かって、最後までがんばって欲しいと思
います。
さて、子どもの進路について考える時、とても大切なのは、その子の長所や得
意なこと、好きなことは何かということだと思います。本人はもちろん、親や
先生など周囲の人達も、その子の良いところをよく知っていると、将来の進むべ
き方向が見つかりやすくなるように思います。そしてそのような状況にいる子は
大抵元気です。
以前、TVでこんなCMがやっていました。
学校の授業参観の場面なのですが、そこでは子どもが教室の後ろで授業を
見学し、親が授業を受けているという、通常とは立場が逆の設定です。
あるお父さんが先生にあてられ、自分の息子の長所を述べるよう言われます。
お父さんは「うちの息子は自慢の息子です。」と言ったまではよいので
すが、その後どこがいいのかが言えず、額の汗をぬぐう。その姿を見てい
た子ども達は失望と怒りの表情を顔ににじませます。
自分の子どもの短所は言えても、その子の長所や、得意なこと、好きなことが
何か、全く知らないという親御さんがいるとしたら、親子ともに大変悲しいこと
だと思います。
子どもを将来支えるのは、その子の短所ではなく長所であり、好きなことで
あるのですから、私達親はいつもそのことを忘れずに子ども達を見守っていきた
いものですね。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html
◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
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