2010.10.02
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2010、10月

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心地よい風に誘われて散歩に出ると、金木犀の香りが漂ってきました。
各地で秋の運動会も開催されています。
お子さんのベスト・ショットは宝物♪
楽しい思い出をたくさん作ってくださいね!

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    堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第53回
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◇◆小さな卒業
 
 ここんところ、カイトくんは英語づいています。知り合いに会うと”Hello,how
are you?、予想外の出来事に”Oh,my God!”、手を振りながら”Good-by.”。
 今日に始まったことではないんですがね。幼稚園の頃、教育テレビ「えいご
りあん」のホームページがいたく気に入り、繰り替えし見てたときも、会話の
かなりの部分が英語になりました。発話自体が今よりかなり少なかったので、
英語率はそうとう高かったんじゃないかと思います。中には、私にはわからな
い言い回しもありました。何かを命令したとき、”Talky,talky.”と答えていたの
ですが、「わかったよ」「うんうん」くらいの意味合いを持つ、今風の言い方だ
と、ニューヨークから戻ったばかりのお母さんが教えてるまでわかりませんで
した。このときは、「はい」をOK、「いいえ」をno wayと言っていたので、周囲
がカイトに合わせて、それを使ってくれていました。カイトがのぼり棒のてっ
ぺんにいると、お友達が、
「カイちゃん、あぶないよ。No way!」
 と叫んだり。
 言語の入力が良くない子なので、文法が単純な英語は便利なのかもしれませ
ん。少なくとも、自分を「僕」というか「俺」というか「私」というか、迷わ
なくては済みますもん。
 なんかの拍子に今回も英語脳に火がついて、大学について来た日にゃあ、ネ
イティヴの先生に声かけられて一番明確に答えるのがカイトときたもんだ。He
is autisticと言っておいた私の立場がない。人気者ですよ、カイト。マナト、
コトコに較べて、英語圏の人にも発音しやすい名前だし。
 担任の先生によると、「えいごであそぼ」の内容と、カイトの発言がリンクし
ているようです。朝、ひまわり学級では教育テレビがつけられているのです。
おそらく、子どもの気を引くものがあって、どこかへ行ってしまうことに対す
る対策ではないかと思いますが。
 そのお話を聞いて、あ、と思ったんですね。
 最近、うちでは「えいごであそぼ」見てないなって。
 マナトが生まれてから十三年、午後4時になったら、教育テレビをつけるの
がオハラ家の習慣でした。習慣なんぞという生易しいものではない。4時を心
待ちにして、子どもがテレビに熱中するのを見計らって、急いで晩ご飯を作っ
たもんでした。ずっと子どもの相手をしていて、どんなに可愛くて面白くたっ
て、疲れて来るから、家事さえ適当なリフレッシュになりました。子ども達も、
「おかあさんといっしょ」を中心に、熱中してました。昨年まで、そんなんだ
った気がします。
 これが、ここのところ、見ていないですね。その時間、誰かがテレビをゲー
ムに使っていることが多いのが一番の理由でしょうね。つけといても見ないし。
おかあさんから引き離そうと思ったら「おかあさんといっしょ」くらいしかな
い状態だったのに、つけなくても、一人もしくはきょうだいで遊んでます。
 あんなにも待ち遠しかった午後四時が、日常の時間の中に埋もれてしまいま
した。うたのおにいさん、おねえさんの交代に一喜一憂したものですが、これ
からはうちには関係ないことになるんでしょうね。
 手が離れることで、楽になると思うより、寂しいと思う辺り、子育てホリッ
クだな、充分。
 子ども達がもっと離れて行く、このさきの対策をしといた方がよさそうです。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)


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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第53回
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 今年の10月に愛知県名古屋市で、生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)が
開催されるのをご存知の方も多いかもしれません。
 生物多様性とは長い歴史を通して様々な生物と環境が織りなす豊かでバランスの
とれた生態系のことで、私達人間の生活もその一つです。COP10はこのような生物多
様性の意義とそれによる恩恵について皆で考えていこうというものですが、あらゆ
る生物において同じ種類の中にも多様性(個体差)が存在するように、私達人間も一
人一人個体差(個性)があります。
 もし人が皆全く同じであったとしたら、人と自分を比較する必要はなく悩みや嫉妬
はなくなるかもしれません。しかしその一方で、私達人間はそれぞれに個性(多様性)
があるからこそ、お互いに支え合い努力することができ、お互いの個性が織りなす人
の心を動かす様々なエピソードと創意工夫が生まれ、様々な状況に適応してここまで
発展してきたのではないかと思います。
人の個性(多様性)は点描画(点または短いタッチの色の集合で描かれた絵画)の
点のようなもので、素晴らしい絵画が完成するためにはどの点も大切であるように、
私達一人一人がお互いの“色合い”と調和を大切にしながら自分達らしく元気に生き
ていくことが、世の中が豊かになるためには必要なのではないでしょうか。
 そして私達大人は、そのことを子ども達にも伝えていけるような、そんな子育てを
していきたいですね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 平成22年4月 名古屋市あけぼの学園 勤務

【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
  http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html

◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
heart@as-japan.jp


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