2010.03.02
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2010、3月

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この間、入園・入学したばかりと思っていたのに、もう卒園・卒業ですね。
なんだか寂しいような気分を吹き飛ばしてくれるのは、あの頃より
ひと回りもふた回りも、たくましくなった子ども達。
もうすぐそこまで春がやって来ています。

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 堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第46回
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◆◇カイちゃん式図書館利用法

 知的障害者の一つの課題は、余暇を自分で過ごすことです。誰にとっても課
題ですけどね。余暇を一人で過ごせない大人は、誰かに頼るしかないし、常に
構ってくれる家族がいると保証されてるわけでもない。
 カイトは、手のかかる幼児でした。動く画面が嫌いだったから、ビデオにお
守りを頼めなかったのです。だから、なんとなく相手してるしかない。それに
、一人で静かにしてると碌なことしてないもん。ブロックを一個ずつ、テレビの
後ろに落とすとか。あめちゃんを剥いて部屋中に撒いてるとか。
 それが、いつの頃からか、絵さえ書いていれば静かな子になりました。今は、
それに紙細工が入っています。「小道具ハンター」おとうさんに買ってもらった
iTouchでYouTubeのアンパンマンをしつこいくらい繰り返し見るのも好きです。
 うちの子どもの中では、一番余暇を充実させているのではないでしょうか。
まだ、お母ちゃんに相手して欲しくてたまらないコトコや、ゲーム以外の余暇
の過ごし方を知らないマナトに較べると。

 私の子とは思えないほど活字が嫌いなマナトの冬休みの宿題は、一つのテー
マについてお勧めの本を五冊紹介することでした。マナトは、宿題をしない子
でしたが三年生の冬休みが最悪で、全部を踏み倒しました。最終日に宿題の存
在が親にばれて大騒ぎになったので、私は冬休みの宿題にはナーバスです。五
年生のときも、書き初めをしなかったし。これは、書き初めを展示する先生が
「誰とは言わないけど、一人だけ出してない子がいるんだよね」と言ったこと
で、なし崩し的に逃げられるかと思っていたのが、どうやらそれは甘いと観念
して改めて書きました。一月下旬に。書き初めでもなんでもないわ。
 そんなマナトに本を五冊だと。これは、図書館行くしかない。どうせ斜め読
みだから。で、テーマは「海の生き物に関する本」。最近、ますますあてになら
ないおとうさんは抜きで、千種図書館に出かけました。
 結論から言うと、ここの図書館はあんまり揃ってないなあ。私が読みたい本
がすごく少ないって、異常だ。どこにいっても、読みたい本だらけで困るのに。
絵本も、児童書も古いのが多くて、ほしいものがみつかりません。マナトは、
最初、簡単に読めそうな絵本ばかり五冊選んだので、一発頭を張って、高学年
らしいものを選ばせました。
 そのような騒ぎを繰り広げる横で、
「カイトくんは、これ」
 静かに一冊差し出すカイト。大人用の本です。「手作りアンパンマン ぬいぐ
るみとマスコット」。
「お話の本じゃないよ。カイト、お話のにしたら?」
「これ」
 とても気に入ったようなので、借りてあげました。
 そしたら、家に常備してある色紙を使って、作りましたね。
 ぬいぐるみの型紙通りに折り紙を切って、貼り合わせて、ほら、アンパンマ
ンのできあがり。バイキンマンも、バタコさんもできるよ。慣れて来ると、型
紙のないキャラクターも作れます。
 冬休みが明けて、返却しに行ったのは、成人式の連休。これもみんなで行き
ました。カイト、今度は同じシリーズの「動くおもちゃ」を借ります。これぞ、
カイトの為にあるような本です。家に帰って、作る作る。
 読書できるほどの言語能力はないけれど、カイトは図書館が大好きになりま
した。こういう利用者にも、優しい図書館であってほしいね。
 おとうさんによると、名古屋市内の図書館なら鶴舞がいいって。
 これで、カイトの作る工作のレベルは飛躍的にアップしました。

 オハラ家恒例の雪キャンプにも、折り紙とはさみ、のりは持って行きます。
道中長いので、車の中でコトコと喧嘩します。
「カイト、おまえ車おりろ!おりて歩いて帰れ!できないだろ!」
 なんて勝手なこという、言葉遣いのなってない六歳女児でしょう。親の顔が
見たいものです。
 でもね、コトコ、間違ってるのはあなたの方だって気がしますよ、おかあさ
んは。
 元々、空間認知の能力が飛躍的に高い(どこのイオンでも、一度行ったらが
ちゃがちゃの場所が記憶される、視覚的なパズルの解答時間が短い)カイトは
歩いて帰ってきちゃいそうです。
 行く先々で、紙人形かなんか作って、おにぎりもらいながら。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第46回
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 子どもは親が望むような才能がないかもしれない
でも子どもは親が知らないような才能を持っている。

 ある日まだ幼い子どもに「寒いから暖かくしてね。」と厚手の服を着るよう促すと、
その子が「暑いからいらないの。」と答えていたずらっぽくニヤッと笑いました。
 その時、この子はもう“寒い“の反対が”暑い“であることを知っていて、わざと
反対の言葉を言えば面白いと思ったのだということに気がつき、まだ幼いと思って
いたのにいつの間にそんなことが分かるようになったのだろうと感動に似た驚きを
感じました。
 子どもは親が気づかないうちにいろいろ成長発達していることも多いものです。
きっと皆さんの中にも(まだできないだろう)と思っていたことを子どもがあっさ
りやっているのに気がつき驚いたという経験をお持ちの方も少なくないのではないで
しょうか。
 
 しかしその一方で(こんなことくらいできるだろう。)と思っていたことが、
実際に子どもの様子を見ていると思うようにできていなかったり、まだまだ手助けが
必要であることに気がつくこともよくあります。
 いずれにしても大人が自分達のペースや基準や常識でつきあっていると、つい見過
ごしてしまう子どもの“本当の姿”があるようで、そういうことに気がつく時、私は
以前聞いたことのある上記の言葉を思い出します。
 これからも私達は、子どもの“らしさ”や“本当の姿”を見失わないようにしてい
きたいものですね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 現在に至る

 【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
  http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html

◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
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