2010.02.01
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です 2010、2月号

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子育ては体力勝負!
寒い日々が続いていますが、体調に気をつけて頑張っていきましょうね!

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 堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第45回
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◇◆花子さん、こんにちは
 
 マナトは泣き虫です。
 でも、弱虫じゃないと信じたい。
 だって、極真空手の試合では、負けたって後ろには下がらない。
 苦手なものは多い子だけどね。
 まず、父親譲りの高所恐怖症です。歩道橋でも怖いそうです。最近、
かなり克服できてきましたが、ジェットコースターには乗れません。デートのとき、
どうすんだ。
 怖い話も嫌いでした。「コロコロコミック」で、うっかり怖い話を読んでしま
ったら、ずっと気にしてる子でした。
 でも、最近学校の怪談とか大好きです。小学生、誰もが通る道ですね。うち
は遅い感じ。
 さて、怪談に興味を持ち始めた子どもは何をしたくなるか。他人を怖がらせ
たくなります。一緒に怖がって欲しいんです。
 だけど、大人はそんなに簡単に怖がってくれません。だって、自分が子ども
だった頃にさんざん怖がって、もうネタ知ってるもん。学校の怪談のフォーマ
ットは、昭和の時代とそんな変わってないのです。それに語り口も稚拙だし。
 夜に友達とお外にいるという関係で、キャンプに行くと語りたくなるようで
す。オハラ家恒例、6月の蛍キャンプでは、以前はよく小学生が語りだしたも
のでした。
 一生懸命、怖さを演出しようと、演出を工夫します。聞いた話を、いかにも
自分が経験したことのように話した子もいます。彼の話の中では、彼は夜の理
科室を一人で歩いています。忘れ物を取りに行ったそうです。
 行かんだろ、普通。
 行かせんだろ、親が。
 入れんだろ、学校。
 大人なので突っ込みません。
「そこで俺が見たのはなんだと思う?」
「何?」
 マナトくんのおかあさん、ここは真剣に聞きます。どういうネタを提供して
くれるか、興味津々だからです。エッセイに使えるようなクオリティかしら。
「ガイコツなんだよっ!ほんものだよっ!」
 こんなつまらんネタに、どう反応したもんだか。
 もっとないかなあ、こう、歩く人体模型とか、ホルマリン付けの蛇が動くと
か、メンデルがエンドウ豆もって追っかけて来るとか。
 リアクションを決めかねていると、隣でたき火をつついていた、別の子のお
父さんが一言、
「ガイコツだったらおじさんとこにもあるわ」
 そう言えば、接骨院を開業されていました。
 こんなんではつまらないので、てきめんに怖がってくれる、自分より小さい
子に語ります。
 というわけで、マナトのターゲットはコトコ。
 ほんとに、一人でトイレ行けなくなっちゃったじゃないか、入学控えたこの
時期に、どうしてくれるんだ。
 いちいちついてくのは面倒だから、ついつい対応が無愛想になります。そう
するとコトコは、カイトあんちゃんにお願いします。絵を描くの中断して、つ
いて行ってあげるカイトはほんと、優しいあんちゃんです。
「おかあさん、ほんとに、花子さんているかな」
「いないよ」
 即答。
「どうして、わかるの?」
「あんな新しいトイレにいるわけないでしょ。怖くないじゃん、トイレ。水洗
だし」
 怪談のフォーマットは変わらないと書きましたが、トイレの花子さんは比較
的新しいキャラクターです。私たちのときは、トイレにいるのはもっと得体の
知れない、声だけとか手だけの存在でした。これは、学校のトイレの水洗化に
伴うものだと思っています。いわゆるボットン式のは、文字通り底知れない怖
さがありましたが、水洗トイレでは底が見えてますから。
 私の母校では、河童でした。田舎の伝統校という、怪談にはもってこいのシ
チュエーションです。トイレも暗かったですよ、当然、汲取式でね。穴ん中、
真っ暗でした。
 蛍光灯が煌煌とついた水洗式のトイレに妖怪がいるわけないだろ。ぼっとん
トイレなめんな。
 でも、怖いんだけど、実際に会うなんて絶対嫌だけど、いることにしたい。
 小学生はこうでなくちゃ、とも思います。
 無害で可愛くて愛嬌のある妖怪を、沢山生んで来た日本人の精神性は、こう
いうところにちゃんと受け継がれてるんだなあと、嬉しくなったりするのです。
 授業参観について来たコトコはひまわり学級の先生に訊きました。
「トイレの花子さんはいますか」
「T小学校では、誰も見てませんよ」
「でも、3階にはいるって噂」
 これは、カイトのお友達。
 いないんだよ、コトコ。いるわけないよ、そんなもの。
 だけど、もしも会えたら、よろしくね。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫−自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第45回
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 情報化社会の現代では育児や親子に関する情報もよく目や耳にします。
 いろいろな人の話を聞いて新しい事を学んだり、それらを基に自分達をちょっと
振り返ってみることは大切ですが、あまり情報が多過ぎるとどの情報を信じていいか
分からなくなってしまったり、「自分のやっていることは正しいのだろうか?もっと
良い方法があるのではないだろうか?」と不安になり思うように行動できなくなって
しまうこともあるかもしれません。
 しかし「育児に正解も不正解もない。」と言われるように、情報はあくまで参考に
しつつ“自分達らしさ”を忘れないことも大事です。
それに子育てはリアルタイムで常に進行中なので、あれこれ思い悩んで立ち止まって
しまうより、とりあえず良いと思ったことをやる、まずできることをする、やることを
やる、といった割り切りも必要です。そのようにとりあえず動いてみることで(動いて
いるうちに)、物事の見通しが開けて悩みが解消されることもよくあることです。
 何事もあまり「上手にやろう。」、「正解を出したい。」と考え過ぎず、多少要領が
悪くても、回り道をすることになっても元気に動いていることが大切なのかもしれませんね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 現在に至る

 【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
  http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html

◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
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