2009.04.01
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   NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です

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 堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第35回
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◇◆欄干の上の百円玉

「カイトは、最近、悪い子です。」
 連絡帳にそう書いたのは、2学期の始業式。時期的に、「魔王」という渾名を頂
戴したりもした日々から、月日は飛ぶように過ぎ、カイト、もう4年生、高学年
です。
 ここのところ、急速に魔王っぷりは、薄らいで来ました。てか、普通に良い子
です。
 ここで、私のカイトに対する魔王呼ばわりの定義を明らかにしておくと、「して
はいけない」ことを、繰り返しする、というものです。それは、ところ構わず「う
んちゃんマーク」と大声で言って、けたけた笑うので、特に飲食店ではやめてほ
しいとか、気に入らないことがあると(なくても)、ぶーっと口を鳴らして唾の飛
沫をあげるのを、やめてほしいとか、休み時間に外で遊ぶとき、泥んこしてはい
けない、特に人に投げてはいけないとか、いったこと。
 どれもたいしたことではありません。でも、「迷惑になるから」「不快感を与え
るから」と制止されることを、意図的に繰り返しするのは、社会に出たときに、
とてもまずいことです。自分に、利があるならともかく、無いんだから、なおさ
ら。不快にさせるためだけの行動は、つまり、嫌がらせという、人として、下の
下に当たる行動です。放ってはおけません。
 そこで、消極的な罰を与えることにしました。
 家では、「うんちゃん」のネタ元である、ポンキッキのゲームの禁止。学校では、
外遊びの禁止です。行動が改善されたら、許可することにしました。ゲームは、
なかなか解禁にいたりません。というのは、すぐ言うから。言うのは、只だから。
学校では、外に行かない限り、泥遊びはしないので、ほとぼりが冷めるころに、
許可が出ます。すると、すぐに、泥まみれで帰ってきて、また、お外禁止。これ
を繰り返しました。
 ゲームの解禁は、ごく最近です。だって、言うんだもん。
「言わなかったよ」「我慢したよ」が、ようやく3日続いた日に解禁しましたが、
もしかしたら、すぐに「うんちゃん」言って、また禁止かな、と思っていました。
 でも、続いている。CD?ROMのスロットゲームで、うんこのキャラクター
「うんちゃん」が3つ揃うと、とても嬉しそうにするけれど、言いません。
「我慢したー!」
 得意そうだ。
 学校でも、普通に外遊びをしているそうです。砂をちょっとはいじるけど、投
げたり、自分が泥まみれになったりはしません。
「カイトくん、我慢してるの!」
 うん。偉い。
 しかし、どうして彼は、自爆行為を繰り返したのでしょう。いや、彼に「どう
して」は無意味だと知りつつ。だって、外で遊びたいし、ゲームもしたいんです
よ。それに、「うんちゃん」言わない、泥投げないって、すごく簡単に守れそうな
約束じゃないですか。何の苦もなく。
 と、問いかけながら、その気持ちがわかるような気がする。
 以前、あるミュージシャンのエッセイを読んでいたら、知り合いに子どもが生
まれると困る、というのがありました。抱っこしてみる?といわれるのが、怖い
んだそうです。別に、子どもは嫌いじゃない。でも、無防備な赤ん坊を抱いてい
ると、すっと、落としたくなる衝動に駆られる。もちろんしないけど。でも、そ
の衝動が怖い、と。それは、余りに非道な感情である気がして、人には言えなか
ったんですが、あるとき、バンドのメンバーに告白したら、子どもの頃の自分が
していたことと一脈通じるのではないか、との答えが返って来たとか。その彼は、
幼い頃、橋の欄干に自分のお小遣いの百円玉を、よく、放置しておいたんだそう
です。そして、しばらくしたら取りに行く。ほとんどの場合、無事に戻ってきた
けれど、たまに、持ち去られたのか、川に落ちたのか、なくなっていることがあ
りました。そうすると、普通に落胆する。やめときゃいいのに、そんなこと、つ
い、やってしまうと。
 私はそのとき、「わかる!」と、膝を叩いたものです。好きな子に冷たくしたり、
助けてほしいのに断ったり、勝つわけの無い賭博にはまったりって、みんな、根
っこはそれですよね。「ツンデレ」とかさ。
「おかあさん、今日も、うんちゃん、我慢したよ。ゲームやっていい?」
 言ってるよ。
 それ、うっかり?それとも、わざと?
 やっぱり、魔王は侮れない。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫?自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第35回
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多くの赤ちゃんと出会っていくと、よく泣く子や静かな子、動きの多さやミルクの
飲み、表情や姿勢格好など一人ひとり全部違うことに改めて気づくようになります。
つまり赤ちゃんにも個性があり、子どもは生まれた時から一人ひとり個性を持ってい
るということです。お母さん達に聞くと実際には赤ちゃんは、お母さんのお腹の中に
いる時からそれぞれの個性を既に持っているようです。

 一般に育児というのは“真っ白な”赤ちゃんに大人や社会がいろいろなことを教え経
験させて“色”をつけていくかのように思われがちです。だから子どもは親が思うよ
うに育つものと思い込んでしまったり、育児が思うようにいかないと親の方に責任が
あるように誤解されてしまうこともよくあります。でも子どもが生まれる前から既に
個性を持っていることを考えると、そうではないと気づくことができます。また育児
書や一般的に言われていることが必ずしも自分達にあてはまるとは限らないのも、同
様の理由によるのだろうと思います。

 育児もやはり人と人との付き合いのひとつであり、お互いの個性を認め合い伝え合い
ながら段々分かり合えるようになっていくものです。子育ては毎日が試行錯誤の連続
ですがそれは自然なことなのです。
この「親子」という貴重な個性と個性の出会いを大切にしていきたいですね。


◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 現在に至る

 【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
 全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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