2009.02.01
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  NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です

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 幼稚園や保育園では、子ども達の成長ぶりが楽しみな学習発表会がおこなわれる
 ところもありますよね。
 自分の子育てを振り返ってみると、親子で共有できる時間はわが子の幼い頃が
 圧倒的に多かったように感じます。
 一番手がかかって大変な子育ての頃が、一番楽しかったなあ?と思い出に浸って
 しまう今日この頃です。

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 堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第33回
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◇◆もういくつ寝ると

 発達障害の子には、先の見通しを与えるといい、というのは、まあ、講義のとき
なんか、真っ先に教える、私流に言えば「鉄板事項」です。実際、カイトにもイラ
ストでこの先のことを説明する、という手順を、特に幼児期には大事にしていたし、
そうすることで、ずいぶん上手くことが運んだと思います。
 最近、カイトは、時間を表す言葉に気がつきました。だから聞きます。
「次のクリスマスまで、後、何日?」
 知るか、そんなもん。
 ともいえないので、適当に答えておきます。どうせ、「352日」なんてイメー
ジ、彼は持ってないし。近くなったら、正確に答えられるからいいんです。
 時間の経過もイメージしてます。
「クリスマスはもう終わり?」
「終わり」
「お正月はもう終わり?」
「うん」
「じゃあ次は?」
 次って言われてもなあ。何を基準にお答えして良いのやら。学校の行事で言えば、
校外学習だし、オハラ家では、おとうさんの誕生日が2月2日だし、建国記念日も
ありますし。とりあえず、
「ひなまつりかな」
「バレンタインデイは?」
 わかった。なんかもらえるってのが、ポイントだな。
「あー、ありますね、バレンタインデイ」
「次は?」
「バレンタインデイ」
 私の同意が得られたところで、
「バレンタインデイまで、後何日?」
 このカウントダウンが当日まで続くわけです。
 この分で行くと、その次は4月9日、カイトの誕生日かな。4年生になるの通り
越して。

 もっと、短いスパンの時間についても、一日に何度も訊かれます。学校でも、時
計の読み方を習って、分単位で読めるのですが。
 時計の針が何時をさしているのかがわかることと、時間の概念を理解することは、
別なのです。
「おかあさん、イオン行こうよ」
 カイトは、イオンが大好き。がちゃがちゃ、一杯あるから。
「4時に行くよ」
「今、何時?」
「カイト、時計わかるでしょ。今、何時ですか?」
「1時32分」
「じゃ、まだです」
 数秒後(分じゃないよ)、
「4時になった?」
「時計、何時ですか?」
 こうなったら、向こうも意地だ。
「4時です」
 洒落こいた、板に針がついただけの時計を使っていたときには、指で短針を4の
ところに持ってくるというベタもしました。だから、時計の4時はわかるんです。
 わかんないのは、今からどれくらい待てば、4時になるのかということ。だから、
今年のクリスマスなんて、わかんない。ずっとずっと先ってことしか。

 こんな風に、カイトはいつも先のことを考えています。他にも、この先、一週間
の予定は繰り返し訊かれます。特に、土曜日と日曜日を中心に。
「土曜日は?」
「おばあちゃんちに行きます」
「日曜日は?」
「もう一日、おばあちゃんちです」
「月曜日は?」
「小学校です」
「火曜日は?」
「小学校です」
「水曜日は?」
 以下、略。ああ、大変だ。言わんでも、わかろうが。でもときどき、行事とか、
祝日で休みとかあるからな。
 そうそう、お迎えのとき、飛び出してくるなり、第一声が、
「晩御飯は何かなっ」
 なので、ひまわり学級の関係者は、みなさん、オハラ家の献立を良くご存知。
 こうしてみると、カイトの生活は楽しいことが一杯なんだね。次にどんな楽しい
ことがあるか、待ちきれないなんて羨ましい限りです。
 私なんて、嫌なこと早く終わらないかなって、過ごしてることのほうが多いです
から。おとうさんと子ども達の大好きなキャンプだって、私には、準備大変だし、
その日は大好きな原稿が書けなくて、大好きなテレビも見られなくて、帰ってくる
と、洗濯物一杯でって、そんなことばっかり気になります。
「今日は、どこ行くの?」
 楽しそうに訊いてもらえることに、感謝をしなければ。人生が、楽しい証拠だも
の。答えが、
「どこにも行きません」
「ええっ。そんなあ」
 だとしてもね。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
 1964年 愛知県生まれ。
 1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
 その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
 専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
 現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
 「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
 「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
 「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
 「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
 「White Smile」(共著、ワニブックス)
 「発達障害だって大丈夫?自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)

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   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第33回
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小児科医は確かに“子どもの専門家”ではありますが、“○○君や○○ちゃんの専
門家“ではありません。小児科医は確かに多くの子どものことを知っていますが、
やはり○○君や○○ちゃんのことを誰よりも知っているわけではありません。そう
いう意味ではお母さんやお父さんこそが○○君や○○ちゃんの専門家であり、この
世で一番よく知っている人になるわけです。もちろん親だって最初から子どものこ
とを何でも知っているわけではありません。正確にいうと調子の良い時も悪い時も
含めて一番多くの時間付き合っている人が、その子のことをよく知るようになり専
門家になっていくのだということです。

 だからこそ子育てにおける試行錯誤には自信を持ってほしいと思います。それは子
どもをよく知るために大切な作業なのですから。ある意味その子に一番降りまわされ
る人が一番その子のことを知っている人なのかもしれません。
 
 しかし専門家といえど、時には迷ったり分からなかったりすることもあるのはどの
分野でも同じです。そしてそういう時はいろいろな人に相談し、いろいろなアドバイ
スや情報をもらって自分達に役立てていくのもまた専門家の役目です。
 
 親が「自分は我が子の専門家だ。」と言えるようになると育児が楽しくなると思い
ます。また子どもが「親は自分の専門家だ。」と思えるようになると親子の絆はより
一層深く暖かいものになっていくのではないでしょうか。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
 平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
 同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
 平成12年4月 医学博士号 修得
 平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
 平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
 現在に至る

 【著書】
 ・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
   (ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
 ・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、保育士、教育関係者など
  専門家のみなさんを対象に、全国的に発達支援に関するセミナーを
  開催しています。
 詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
   http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
 アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
 先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
 掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
  http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html


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