2008.11.01
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NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です
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お子さんは今、おいくつですか?
3歳の子は、3年間の、7歳の子は7年間の経験を生かして、がんばっているんですよね!
親に置き換えても、3年目のママや、7年目のお母さんなんですから
肩のちからをフッと抜いて、ゆっくり成長していきましょう♪
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堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第30回
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◇◆過去の呪縛
別のところで、最近のカイトは「魔王」だと書きました。
だって、ほんとに悪い子なんだもん。
でも、その手がかかる内容は、「わかってんのにやってるから困る」。
ちゃんとこちらの言うこともわかってくれて、自分のことが自分で出来るとい
う点では、カイトは流石に9歳になっただけのことはあります。
でも、やっちゃいました。先日、行方不明に。約20分のことだし、たいした
ことありません。私も、別に焦ってませんでした。でも、コトコの幼稚園の運動
会が終わったあとのことなので、多数の関係者を巻き込んでしまったことが、た
だただ、申し訳ないのです。
その日、おとうさんは不在。正確に言うと、愛しいコトコちゃんの為に、東京
へ行く新幹線の時間ぎりぎりまで粘って、かけっこの写真も撮って、風のように
去ってしまった後でした。
カイトは、いつになく上機嫌と言うわけではないものの、おとなしく競技を見
ていました。でも、流石に午後になると、
「噴水行っていい?」
コトコは大学付属の幼稚園にいるので、運動会はお向かいの中高等部のグラウ
ンドを借りて行われます。校門近くの池は、カイトのお気に入りです。カイトは
自分の縄張りから出るのを嫌うタイプだし、格別に好きな場所だし、大好きなお
友達も一緒だったし、最近は簡単な約束は守れるので、
「ちゃんとここにいてね。おかあさん、運動会終わったら来るからね」
と離れることに、特に不安はありませんでした。
でも、迎えに行ったらいない。探してもいない。
「あれ?カイちゃんは?」
私が、マナトとコトコだけを連れているのは、結構珍しい事態です。マナトは、
もう大きいので、いちいち連れて歩かないことも多いのですが。だから、声をか
けられます。
「見つからなくて。でも、どっかいっちゃう子じゃないから、そのうち見つかる
と思います」
でも、いない。
勝手のわからない高等部には、彼の行くところはありません。
「幼稚園かも」
でも、いない。
けど、園のお掃除のおばさんから、一人で歩いているのを見かけたとの報告が
ありました。方向は、自宅です。まず、マナトを一人で帰す。いてもいなくても、
自宅に戻ったら、おかあさんの携帯に電話をかける約束をします。園の隣の公園
を探しても見つからないので、こりゃ、本格的に自宅だわ、(カイトは空間認知に
関しては天才なので、道がわからないなんてことはない)と私も一旦家の様子を
見ようとしたところ、見つかったと先生がお知らせくださいました。
探してくださった先生も、お母さん方も、カイトの「ごめんなさい」に、いい
のよいいのよ、と笑ってくださいました。
カイトは謝るときに、にやにやしてることが多いのです。でも、このときは、
神妙で、ほんとうにしょげているようでした。
カイトには、自分の行動を明確に説明する能力はありません。
幾つかの単純な質問と、ちょっと複雑な選択問題と、私の推測を合わせると、
次のような経過だったようです。
待っていたら、運動会が終わって、予想外に多くの人が池の方に押し寄せてき
た。幼児は、お約束として、とりあえず、池に群がる。彼は、これを「来ないで」
と表現しています。
怖いので、思わずその場を離れ、人の流れに乗って、外に出る。
気がつけば一人なので、家に帰ろうとする。
よく考えたら、幼稚園なら、誰かが助けてくれるだろうから、戻った。地図上
の幼稚園を指差し、「先生、おかあさんは、どこ」と言ったので、そういうことだ
と思います。
帰る人が押し寄せることで、カイトが混乱することを予想しなかったのは、私
のミスです。カイトは悪くないので、叱りませんでした。
多くの方に心配をかけておいて、こんなこというのは不謹慎かもしれませんが、
そんな私に引き換え、カイトはよくやったと思います。
一度は混乱したものの、すぐに気持ちを立て直して、家に帰ろうとした。それ
ばかりではなく、計画を途中で変更することすら出来たのです。
そして、卒園して2年半を経て、カイトが咄嗟に「先生なら助けてくれる」と
考えたことで、改めて、ここでカイトが人を信じることを、親以外の人に頼るこ
とを学んだんだと実感しました。
先生方に頭を下げながら、私は、またやっちゃったな、と苦い思いでいました。
以前にも、園内で行方不明なって、先生方にご迷惑をおかけしたことがあったから
です。
入園前だから3歳のとき。そのときは、親が施錠されていると思って探さなか
った保育室にトイレから、入り込んで遊んでいました。6年前です。6年に一回
の割合でやらかすとしたら、今度は15歳だ。ずいぶん先だこと。今の私には、
15歳のカイトなんて他人みたいなもんだ。
でも、6年前は昨日なんですよ。またやっちゃった、私って学習能力無いのか、
ってへこみます。言ってみれば、9年間でたった2回なのに。過去の呪縛ってやつ
だ。
しかし、上には上がいます。カイトは運動会の当日、咳がひどくて、小さい子
が沢山いるところに連れて行くにはなんだかな、という体調だったので、咳止め
シロップを飲ませました。それを見ておとうさんが、明らかな非難の口調で、
「言っとくけど、カイトは、薬飲ませたときのほうが吐くからね」
自信満々におっしゃいますが、風邪というとのどに来るうちの子達、みんな咳
止めシロップ、毎冬、飲んでますよ。薬飲ませる現場に、いつもおとうさんはい
ないだけで。
カイトが風邪薬を吐いたのは、1歳のときの1回だけ。それも、飛行機に乗せ
る際に、よく寝るようにって、風邪でもないのに、眠くなる成分の入った薬を飲
ませたときだけです。北米では普通にすることだって言われて、やってみたけど、
やっぱり元気な子に薬飲ませるのは邪道なんだな、と私は思ったものでした。
かように、過去の記憶からは逃れられないものなのに。
油断しちゃう私ってばかだ。
その夜、カイトは39度の熱を出しました。体調もあるし、精神的に疲れたの
かもしれません。声もしゃがれて、いつもより1オクターブくらい低い。お薬飲
んで、眠るとき、
「カイトくんの声、可哀想ね」
と言ったら、当の本人は、にやりとして、
「イケメンカイト」
なんだか大人っぽい声が、本人はお気に入りのようです。
◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。
【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫?自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)
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小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第30回
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ある日、公園でこんな家族を見かけました。その時両親と思われる二人はキャッチ
ボールを楽しんでおられました。そこにまだ幼い子がなんとか自分も加わろうとして
両親の間に入りボールを追うのですが、ボールに手が届きません。一見ほほえましく
思えた光景でしたが、段々ある違和感を抱くようになりました。子どもが必死に加わ
ろうとしているのに、その両親は子どもの姿が見えないかのように無視し二人だけで
キャッチボールに興じているのです。しばらく後、子どもはついにあきらめてその場
を離れ、一人で土いじりをし始めました。そして両親は相変わらずキャッチボールを
し続けました。
その親子にどのような理由があったのかは分かりません。キャッチボールが余程楽
しかったのでしょうか。幼い子には無理だと思われたのでしょうか。それとも何かの
罰なのでしょうか。いずれにしてもなんだかとても悲しい気持ちになってしまいました。
私達親は子どものせっかくの発達の芽を見逃さずにいたいものです。子どもの自発
的な意欲のチャンスを大切にしたいものです。そして自分の興味や忙しさにばかり眼
を奪われていないかどうか、大人の思いや事情が優先されすぎていないか気をつけた
いものです。
最近秋らしいすがすがしい天気が多くなりました。この季節は多くの方が行楽に出
かけられることでしょう。どうか親子で楽しい思い出をたくさん作って欲しいと思い
ます。
◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月 名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月 名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
現在に至る
【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)
◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、保育士、教育関係者など
専門家のみなさんを対象に、全国的に発達支援に関するセミナーを
開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
http://www.as-japan.jp/j/index.html
◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさをお感じのおやごさんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページをご覧ください。
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