2022.08.10
 緊急事態発生につき、葬儀その他に関する話は来月です。コロナ下での葬儀のあり方も、共有するべき知識ではありますが。
 ついに次男が警察のお世話になりました。忘れもしない、auの大規模障害があった日です。私は長男と一緒に、名古屋駅にあるホテルで、亡夫の写真展の打ち合わせをしていました。とにかくauが使えず、打ち合わせ相手との連絡にも事欠く中で、次男からのLINE「すみません、しばらくおまわりさんに怒られました。」「長久手イオンにいます」と、次男の携帯を使ったおまわりさんからの電話が繋がったのは、本当に幸運だったと思います。

 こういう問題は、起こるものです。どんな不運も、降りかかってくるものと心得ておきましょう。「うちの子に限って」という発想は、まず捨てる。事前に、その心得があるかないかが命運を分けると言っても良いのです。
 それを心得ていれば、こう言った事態にも「まさかっ!!」ではなく「来たか」とおもむろに対処できます。腰の落ち着き方が違うと思考も変わるものです。「ばっちこい」は行き過ぎです。来ない方が良いものなので。
 私の対処法は以下の通りです。

何よりも先に会に連絡。弁護士さんが必要になる可能性があるので。
現場ではまず、先方に(この場合はお巡りさん) お騒がせしたことを謝罪する。「お忙しいのに」「お暑い中を」「お手数おかけいたしまして」と言った言葉を、局所に挟み込む。言われて悪い気はしないはずなので。
 息子に何があったかを自分で説明させ、「手を出したのは、あなたが悪い」と確認する。こちらは道理の通じる人間であるというアピール。それから、「大丈夫、落ち着きなさい。ツジイ先生にお願いしたから、必要ならいつでも会の弁護士さんが来て下さるから」とこちらもさりげなくアピール。
 落ち着いて、穏やかに控えめな笑顔でことを進める。警察相手にびびらない。

以前、別の問題で同様の立場になったことがあります。娘が中学校のとき。若い女性教師からの難癖ですが、大勢の教師の前に立たされました。私は状況から冤罪だと判断したので、これも終始、落ち着いた笑顔で対処しました。くっそむかつく、と思いながら。冤罪だとは主張せず、「あとは家庭にお任せください」と。そのときに訊かれましたよ。
「お母さんは、何してる人なんですか。随分、弁が立ちますけど」
残念な話ですが、これ、かなり正確な記憶だと思います。中学校の国語の先生が、敬語を正しく使えないんですね。と、失望したから、覚えてます。
「大学に勤めております」
「事務員さんとかですか」
「教員です」
「あ、講師の方なんですね」
 ここまで来るとなあ。普段は肩書き振りかざしたくない人なんだけどなあ。
「教授です。失礼」
 名刺置いてきたったわ。
 帰り道、
「国語の教員やろ、私の顔見たら、教科書(副読本の愛知県版のとこ)に載っとることに気づいてもええやろ」
 と憤慨する母に対し、打ちひしがれながらも娘は、彼女に非道な仕打ちをした教師を庇う度量がありました。
「年齢も体重も、今より20少ない写真で気づけというのは無理だと思う」
 あの先生は、気に入らない子に難癖をつけて、呼び出された親が動揺して泣いたり詫びたりするのを楽しんでいたのかなあ、と思っています。だとしたら、ご期待に添えなくてご愁傷さまです。
 先生だとか警察という立場にある人は、相手が下手に出るものだと思っています。その期待に添いつつ、こちらの品格を崩さないようにしていきます。まあ、私は先生にびびる要素がないのは当然ですが、何故かゼミ生が何人か警察官になっているので、お巡りさんに対しても同様なのです。先日も、研究室に遊びに来てくれましたが、お仕事の話の面白いこと。
 そんな立場だから、余裕を持って対処できました。
 事情を説明してくださったお巡りさんの言葉で、まずは私の対処方法が効いたことを確認します。
「ゲームセンターでお父さんがクレーンゲーム をしている横で騒いでいた5歳のお子さんを強く叩いたということです」
『叩いた』がキーです。印象が悪かったら『殴った』になっている筈です。
 
 さて、被害者の方には別室でお会いします。
このときも同様です。下手な対向意識を持たず、丸め込むように心がけます。
 今回は若いお父さんでした。
「この度は息子が失礼致しました。お子さんのお怪我の具合はいかがですか」
「あー、怪我っていうか、まあ、救急車で病院行ってます」
 つまり、これと言った外傷も症状もなかったということですね。叩かれたくらいで、そうそう怪我はしませんが、あたりどころが悪いということもあるので、これは安心材料です。
 障害があるということで、被害届も出さないとのことで、これも安心材料でした。奥さんがどうおっしゃっていたかを随分と強調されていた印象です。泣いていたとか(それはそうでしょう)、相手の連絡先を知りたくないと言っていたとか(なんで? 損害の請求とかに必要でしょうに。要は混乱しておられたのでしょうか)。
ここで奥様からの連絡まち。黙って待つのもなんですので、お巡りさんに追い討ち。
「お忙しいところ、お手数とらせてしまって」
そのうちに、今日の病院の請求書がLINEで送られてきます。もちろん、そちらはお支払いします。それには念の為、もう一度診察を受けるときの支払いも含まれているそうです。6千円とちょっとでした。この次に通院する際には、奥さんは運転ができないので、交通費もとなったとき、「では、タクシーをお使いください」と多めに渡しておきました。全部で2万円です。
「多過ぎません?」
とお巡りさん。
「もし余ったら、お子さんのお好きなものでも」
と私。
裸で失礼ですが、とお札を2枚残して、
「奥様にくれぐれも、よろしくお伝えください」
で、こちらは、退出します。
 
 以上で、やるべきことは終了です。
 でも、人生は続く。次回は、ここから派生する問題についてです。


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