2007.12.01
◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆

    NPO法人アスペ・エルデの会「楽しい子育て応援団」です

◆◆◆◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◆◆◆

今年も「楽しい子育て応援団」を、お楽しみ頂きありがとうございました。
「カイトくんのカワイイ様子にワクワク!ドキドキ!」
「宮地先生のエッセイに勇気をもらいました」など、読者のみなさまからも
ご感想をいただきました。
子育て応援団はみなさまを応援しています!来年もよろしくね♪


■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
堀田あけみ先生の「子育て応援エッセイ」 第19回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■

◇◆あかだしみそ
                         
 学芸会が終わりました。カイトは、とても上手に牛さんを演じてくれました。
ツジイ先生いわく「ぴったりの役」。
 カイトは本番に強いのです。
 さすがは、カイちゃんだ、と満足してお迎えに行ったら、ここまでの道のり、
そんなに平板ではなかったみたいだ。
 出だしは順調だったそうなのですが。

 第一の関門、衣装をつけての練習。
 ご機嫌で牛さんになったカイトに、周囲の子ども達があんまり、かまうので、
床に寝てしまった。
 先生が子ども達に、説明し、あまりかまいすぎないように指示。ここまでは上
手くいきました。
 しかし、次の関門もあった。先生いわく「げらげらのスイッチが入っちゃって」。
 うちの学校の学芸会は、変則的です。いえ、今は、そういうのが一般的なのか
もしれませんが、私から見ると、複雑で奇妙です。
 各クラスが、AグループとBグループに分かれ、6学年で12のグループを作
ります。学芸会は2日間。初日は、Aグループの日。午前と午後の2回上演し、
午前は子ども、午後は家族が観賞します。2日めは、同様にBグループが上演。カ
イトはBグループだったので、初日は観賞のみでした。そこで、大笑いをして止
まらなくなったそうなんですが。
「カイちゃん、なにがそんなに面白かったの?」
「小麦粉、卵、砂糖、でぢばぼえぶばぼ」
 最後は爆笑して聞き取れず。再度挑戦。
「小麦粉、卵、砂糖、ばぢべごぶおうびお」
 やっぱり聞き取れず。
 しばらくしたら、向こうから振ってきました。
「ホットケーキは何作るの」
「ホットケーキ?」
 確かに、ホットケーキのお話ですよね、君らが上演するのは。
「おかあさん、ホットケーキ何作るの」
「小麦粉、卵、砂糖」
「でぢぶぼごぼぶば」
 だからなんだ。
 帰宅したマナトにきいてみました。
「それ、2年生の劇だよ。ホットケーキに何を入れるのってとこで、赤だし味噌
を持ってくる子がいて、それは違うでしょっていうんだ」
 どうやら赤だし味噌と言いたかったらしい。
 そして本番。やらかしてくれました。午前中の児童向けの上演では、
「あがだぢびぞ」
 と大笑いして言ったようです。ほとんど聞き取れなかったと言うから、きっと
そうでしょう。腹立つわあ。中途半端に面白いとこが、めっちゃ嫌。
 そこで、午後の保護者対象の本番中の本番を前に、先生が最終兵器を出してく
れました。ふざけて、
「カイトくん、下手にやるもんねえ、牛さん、へただもんねえ」
 と、これまたげらげら笑って言うことが多かったカイトですが、
「下手にやったら、先生泣くよ」
 と、担任の先生の名前を出すと、
「カイトくん、上手にやる!下手は嫌!上手にやるってばあ!」
 と、必死になることを、伝えておいたのです。
「カイちゃんが、舞台に寝ちゃったり、笑って何も言わなかったら、先生は泣い
ちゃうよ」
 と言ってくださったそうです。担任の先生が大好きなカイトとしては、それは
大変。がんばらなきゃ、となったに違いありません。
 台詞を言うだけではなく、ホットケーキを追いかけて、何度も舞台を横切らな
ければなりません。カーテンコールよろしく、歌って踊りながら、出演者が次々
に観客に挨拶する演出もあります。先生は、練習中はずっと黒子のようについて
いらしたそうです。本番、調子がよさそうだし、いないに越したことはないので、
いつでも出て行ける体制を取りつつ、袖に下がったことを、先生は「冒険」と表
現なさいました。
 そして、初めて一人で望んだ本番での大成功。もしかしたら、どきどきしてた
私より、苦労された先生の方が、喜びは大きかったのかもしれません。

 しかし、感動から開放されて、冷静になってみると。
 ちゃんとできるのに、土壇場になるまでふざけてまともにやらないってさあ、
大人を舐めてるってことか?もしかして。
 それとも、大人の感動のツボを押さえてやろうとでも?
 天使の笑顔の割りには、なんか、一筋縄ではいかない。
 妙に曲者感のあるカイトであった。

◇◆堀田あけみ先生の略歴
1964年 愛知県生まれ。
1981年、「1980アイコ十六歳」で文芸賞を受賞、文筆活動に入る。
その後、名古屋大学教育学部に入学、卒業後、同大学院教育心理学科に進学。
専攻は、発達心理学・学習心理学。特に、言語の理解および産出のプロセス。
現在、椙山女学園大学・中京大学で非常勤講師を勤める。

【主な著書(現在、入手可能なもの)】
「わかってもらえないと感じたときに読む本」「おとうさんの作り方」(海竜社)
「十歳の気持ち」(佼成出版社)、「唇の、することは。」(河出書房新社)
「泣けてくるじゃない」「あなたの気持ち」(角川書店)
「マナティ 夢の人魚」「大草原のプレーリードッグ」(共著、七賢出版)
「White Smile」(共著、ワニブックス)
「発達障害だって大丈夫?自閉症の子を育てる幸せ」(河出書房新社)


■□■━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
   小児科医 宮地泰士せんせいの「子育て応援エッセイ」 第19回
━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━■□■
 
 子どもが熱を出したりお腹が痛くなった時、親は子どもに何をしてあげられるで
しょうか。もちろん薬を飲ませたり病院につれていくのですが、それでもすぐに症
状が治まらないこともあります。そんな時親としては一刻も早く子どもを楽にして
あげたいので、何かやれることはないかと焦り、無力感や苛立ちを感じることもあ
るかと思います。しかし子どもにとって一番ありがたいのは親がイライラすること
ではなく、暖かい手でさすってくれたり、そばにいてくれることでそのぬくもりを
感じることではないでしょうか。
 今はスピードを求める時代ですから、問題は即解決することが良いとされがちで
すがそうはいかないものもたくさんあります。子どもの成長もそのひとつでしょう。
 幼い子がうまく気持ちが表現できずやんちゃを言って周囲を振り回したり、反抗
期や思春期の葛藤や混乱など、人には成長するために通過する“嵐”のような時期が
何回かあります。中には特効薬も具体的な手立てもなく、全体のバランス(調和)が
とれるのを待つしかない時もあるでしょう。でもどんな嵐もいつか通り過ぎます。
そして“嵐”の間そばにいてくれた親のぬくもりを、子どもはずっと憶えています。
 嵐が通り過ぎた後、再び広がる青空を子どもと一緒に喜ぶことが親にとっての大切
な役割なのでしょう。
 親子の間で求められるのは、結果の速さや効率のよさではなく、過程のあり方やぬ
くもりなのかもしれませんね。

◇◆宮地泰士(みやち たいし)先生の略歴
平成7年3月  名古屋市立大学医学部 卒業
同年4月    名古屋市立大学病院小児科 入局、勤務
平成12年4月 医学博士号 修得
平成15年4月 名古屋市児童福祉センター 勤務
平成18年7月 子どものこころの発達研究センター 勤務
現在に至る

【著書】
・可能性のある子どもたちの医学と心理学(共著)
(ブレーン出版 石川道子、辻井正次、杉山登志郎 編著)
・直ぐに役立つ発達障害の診断とサポート(共著)
(東海小児心身医学研究会 発行)

◇◆子育てに難しさをお感じのおやごさん、専門家のみなさんを対象に、
全国的に発達支援に関するセミナーを開催しています。
詳細に尽きましては、順次、当会ホームページにてお知らせ致します。
 http://www.as-japan.jp/j/index.html

◇◆「専門情報誌」アスペハート誌のご紹介
アスペハート誌は子育てに難しさを御感じの親御さんたちに、専門的で
先進的な知見をご紹介する専門情報誌です。発達支援に関わる多くの最新情報を
掲載しています。詳細に尽きましては、当会ホームページにてご覧ください。
http://www.as-japan.jp/j/heart/heart.html

◇◆「楽しい子育て応援団」へのご意見、ご感想をお待ちしています。
heart@as-japan.jp


****************
NPO法人アスペ・エルデの会
  「楽しい子育て応援団」

  http://www.as-japan.jp/
****************


BACK NEXT

Copyright(C) 2004,Asperger Society Japan.All Rights Reserved