2025.02.10
 ドイツ留学から娘が戻ってきます。帰国したらしたいことはいっぱいあります。私達の世代だと、外国帰りは「日本は駄目ねー」「あっちが懐かしいわ」と言ってたもんでしたが、今は圧倒的に日本が心地よい人が多い印象です。一番は安全かなあ。娘も現地の生活はもちろん楽しかったのですが、帰れると思うと嬉しくて仕方がないそうです。食べたいものもあるし、オタ活もしたい。T Verも海外では見られないし。
 でも一番は湯船。寄宿舎にはシャワーしかなくて、ヨーロッパのあちこちを旅しても安宿には浴槽はありません。親とカナダに行ったとき、バスタブがあったのは高い部屋に泊めてもらってたんだ、と改めて感謝したとか。それほど高級なホテルではありませんが、少なくとも子どもを連れて安全に泊まれそうな宿を選んではいました。
「帰ったら温泉行きたい! 有馬温泉!」
 京都の大学に通う彼女の周囲では、温泉といえば有馬温泉。下呂温泉とかいうと、めちゃくちゃ引かれるそうです。まあ、そうですね。字を見ないと、知らない人はびっくりしますね。そして、有馬温泉の旅館にうちのゼミの卒業生が勤めています。これは、久しぶりに会いに行きましょう。
 大学の教員の春休みは長いです。その間、入試業務を中心に仕事はあります。また、腰を据えて論文を書こうと思ったらこの時期です。暇ではありませんが、授業時間に縛られない、というのは大きなメリットです。だがしかし、私の場合は今年から幼稚園にも出勤するので、春休みはいわゆる春休みの期間しかありません。いや、それどころか短いですよ。幼稚園の春休みは3月20日から4月7日まで。ところが大学の新入生ガイダンスは4月1日からです。来年度はこれでもラッキーな方で、3月に食い込む年もあります。実質10日。春休み。
 その限られたお休みの中で、さらに会議や準備のない日を見ると、行ける日は限定されてきます。息子二人の都合を尋ねたところ、長男は「その辺に卒業旅行あるから」次男は「社会人グループで〇〇行きます」。〇〇のところは早口で聞き取れなかったんですが、都合が悪いという事実だけを押さえられたら問題ありません。
 つまり、行けない、ということです。二人とも。
「悪いんだけど、女子だけで(念のために書いとくと、私も女子)行ってきてくれる?」
 悪くない。むしろ大歓迎。女子(私も乗っかって使いますが)二人の方が男子の都合を考えて動くより、ずっとフットワークが軽くなる。ついでに、神戸でもう一泊しちゃうぞ。
 ゆうて息子二人とも二十代後半なので、本来なら親と一緒に動く年でもないわけで。でも、親と一緒でもないと旅行もできないと思って、こっちは誘ってるわけで。自分の都合で親と一緒に行動できないなんて、普通の青年みたいなことしてくれたら、こっちは嬉しくてたまらんよ。
 でもって、食事は長男がどうにかするし、次男は洗濯をしてくれるので、特に困らず。「普通の」家族でいたなら、数年前にはこんな日常だったと思います。でも、遅ればせながら、やってきました。
「悪いけど」じゃないんだよ、嬉しいんだよ、いろんな意味で。

 まあ、春はそんなんですが、暮れにはいきなりU S Jにも行きまして。これは、息子二人と私の3人。娘ドイツだし。大人3人ユニバ。
 始まりはマリオ大好きの次男が、
「U S Jのドンキーコングエリア、行きます」
 と言い出したことです。できたばかりのエリアだし、ニンテンドーの人気ときたら、ニンテンドーミュージアムの抽選に息子達が落ち続けてることからも、察せられるというもの。予約しないと、アトラクションに乗れないどころか、エリアに入ることすらできません。P Cで予約のページを見せて、
「ほら、みんなペケですよ。もう少し後でいきましょう」
「後はいつですか」
「夏休みかな」
言ってから、暑いのは嫌だなーと思いました。
「やっぱり、来年の冬休みですね」
 1年後に設定してこれでこの話は終いかと思ったら。
「さんかくありますよ」
 細かい碁盤の目の中に、一つだけある三角を次男が見つけました。私としたことが、見落とすとは。いやむしろ、A S Dあるあるか。
 それは、閉園の2時間前。いつも、早めに行って早めに帰るんですが、3時ごろに入園しても、まだまだ時間があります。混む前にお土産を買って、ハリーポッターのアトラクションに並んで、ご飯を食べて、ショーを見て。お目当てのドンキーコングに乗った後は、閉園近くなって待ち時間が短いからと、ヨッシーにも乗って、ギリ行けるんじゃないかって、マリオカートにまで乗れました。マリオは、最後から50人目くらいかな。結構前じゃんて思うかもしれませんが、最後尾が見えてる状況って初めてです。スリリングでした。
 あれ、なんか違う。今までと違う。
 並べないから、飛び込みでアトラクションには乗れなくて、パーク内でご飯は食べられなくて、事前にパスを買ったものだけに乗って、早く出てきてホテルでご飯だったのに。待てないからショーを見ることもできませんでした。障害者向けのサービスもありますが、それは列に並ばなくても良いというだけのものです。例えば2時間待ちの列があれば、その場を離れて2時間後に来れば良いのですが、その間、他のアトラクションには入らないよう言われます。何度か使いましたが、時間を潰すのも簡単なことではなく、我が家としては期待したほどの効果はありませんでした。
 今回は全体にそんなに列が長くなかったこともあるかと思います。タイミングよくショーが始まったのもあります。
 でも、いろいろなところに並んで、いろいろな経験をして、満足しきって閉園時にパークを出るって。
 随分と普通になったものです。私達。これは、成長なんでしょう。でもね、もう一つ。
 実は、待つのが一番苦手だったのは、次男ではなく夫だったのかもしれない、と今になって思うのです。
 翌日は、近くの温泉施設でのんびりして、特急ひのとりで帰りました。
 全く問題がなかったかというと、根本的なものが一つ。
 ドンキーコングのアトラクションについて、私達は事前の情報がなかったんです。マリオカートとヨッシーのたまご探しみたいに、ライドに乗って物語の中を進んでいくものだと漠然と思っていました。
 普通に絶叫マシンじゃん。
 あんなに乗りたがっていたのに、降りてきた次男が言ったのは、
「もう懲り懲りだよ」



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