2025.01.10
 何がどうなっているかがわからない状態での幼稚園長業も、なんとか2学期まで終えることができました。お子さんと関わるということは、保護者さんと関わるということで、改めて20年前を思い出すことになりました。
 子どもをめぐる状況は、いろいろとメディアに取り上げられています。少子化が止まらない、という現実に、国の子育て支援が間違っている、という指摘がされるように。国だけですか、という疑問もあるかと思いますが、自治体によっては、すごく頑張っているところもあるんです。愛知県も名古屋市もこっちに入っていると思います。特に名古屋市は元市長のキャラがあれなんで、先の選挙特番で蓮舫さんは「名古屋の人は変わってる」とおっしゃっていましたが、増税した結果、税収を増やすという離れ技をやってのけたことや、子どもの医療費が一部条件付きとはいえ、高校生まで無料とか、高齢者がタダで市営交通を使えるとかいった名古屋市の実情をどう見ておられるか知りたいと思います。ただ、メディアが子育てのマイナス面ばかり報道するのも、一因ではないかと思うのです。もっと楽しいことをニュースにできないのかな、と。
 さらに、とりあげられない問題も深刻だという事実があります。
 例えば、いじめは社会的に取り上げられるけど、子ども達の間で深刻な問題になっている「執着・粘着」については、ほとんど触れられることはありません。「〇〇ちゃんは、私としか遊んじゃ駄目」という形で友人を束縛した結果、相手がうつ状態になったり、学校に来られなくなったりすることが、意外と多くあるのですが、大好きになった結果なので、マイナスの感情から来るいじめほど、重要視されないようです。
 長男は、いじめでうつになりましたが、長女は幼稚園のとき、こちらのターゲットにされました。執着を示すタイプにありがちなのが、執着する一方で、他の子に対してターゲットの悪口を言ったり、遊びに来て欲しいと言っておいて行けば動画ばかり見ている、といった行動をとることです。みんなが嫌いになれば自分だけのものになる、とか、自分のためにどこまで我慢してくれるかを試している、というのが根っこにありそうです。

 これは幼児で終わることではありません。大学になってもあるし、大人になっても生じ得ることです。例えば、留学に興味を示さなかった子がいきなり留学して、何かと思ったら、ターゲットの子についていくためだったりすることがあります。ターゲットにされた子にしてみれば、執着から逃げるためというのも留学の動機の一つだったりするので、大問題です。
 末っ子長女の逞しさというか、幼稚園で散々な目に遭った娘は、他人との距離の取り方がとても上手な大人になりました。今は京都で一人暮らしです。運が良いのもあって、中高と仲の良かった子が、京都にある別の大学に進学したために、彼女とオタ活に勤しんでいます。成人式の日も、式が終わったらすぐに二人で東京にライブに行って、そのまま一緒に京都に戻りました。
 今は、ドイツであちこち行っています。国内はだいたい日本人の友達と行きますが、国外に出るときは一人。もしくは、現地で仲良くなった人と一緒。友達に合わせると、時間もお金も余計にかかってしまうから、ということです。行きたくないところに付き合うことを考えたら、限られた時間とお金を有効に使うのは、一人がいい。
 親としては、誰かと一緒にいてくれた方が、安心です。でも、その理由で一人旅をする彼女は賞賛に値する。今は褒めることの方が大事ですよね。少なくとも、誰かのお荷物にはならないという点では安堵しています。
 ただ、お荷物になってしまうタイプのお子さんは、親御さんがそれを認めてるというのも大きいとように感じています。いじめているわけではないからいいとか、好きなんだからむしろ有り難いと思えとか。
 いじめ加害者(とても強い言葉で普段は使いませんが、こちらは「被害者側」でもあるので敢えて)の保護者さんをみていると、「いじめられるよりは、まし」と考えておられると思います。普段、どれだけ良い方でも。
 子どもの問題の原因として、親の在り方は絶対に関わってきます。他者との距離の取り方も、親の背中で教えられることは多々あるのです。
 難しいですけどね。


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