2021.07.10
 三日坊主とは無縁です。
 育児日記は、長男が生まれてから二十年つけました。
 手作りのヨーグルトと黒酢ドリンクは、十年くらい欠かしていません。
 前回触れた「リングフィットアドベンチャー」は、子ども達の後からのんびり走っていたお母さんが、今や先頭を走っています。
 こうして見ると、私も結構こっちの才能あると思います。次男の自閉スペクトラムも、長男のアスペっぽさも、夫の血筋だと思ってたんですけどね。夫の生家は、長女をして「今なら全員診断出るだろ」と言わしめる家なので。
 良いこと長続きして結構じゃないですかって?
 ルーティーン以外のことを組み込むのが、とっても苦手なんです。
 習慣化してしまったら強いんですが。

 受験生の娘は、今になって後悔しています。
 もっと勉強しておけば良かったと。
 我が家で一番、真っ当にJKしている彼女も苦労しています。高校生活を勉強一色にしたくないと、敢えて選抜クラスは希望しなかったのですが、思うところあって2年生に進級する際、選抜入りを希望したんですね。無事に叶って、学校生活が薔薇色になったそうです。話の合うクラスメイトがいるって、こんなに楽しかったのかと。それに勉強したら、順位って上がるんだ、どんどん理解も増すんだ。中学は公立でしたが、周りの子が賢過ぎて、勉強してもしても、成績が上がらなかったのです。
 そして、外国語を中心にグローバルコミュニケーションについて学びたいと思っていた彼女は、希望をヨーロッパ文化史に方向転換します。すると、国際関係の学部はたくさんあったのに、歴史を専門にできる学科がほとんどないのに気付きます。それこそ、ヨーロッパ史なんて、国公立にしかない。
 もっと早くに勉強しておけば、名大を目指せたかもしれない。お母さんみたいに。
 もちろん、浪人して名大、という可能性は示しました。普通のことですからね。でも、浪人というチョイスは彼女にはないらしい。兄が二浪しているのを見ていたからでしょうかね。
 彼女が行きたい学科が見つからない、正確には自分の手の届かない大学にしかない、と泣いたときは、心が痛みました。
 でも、二つの意味で大丈夫だとも思いました。
 一つは、そのうち落としどころが見つかると思ったからです。今は、理想を見ているから辛いのです。現実とすり合わせていくと、ここで私は幸せになれそうだというポイントを見つけられます。だから大丈夫。
 もう一つは、こうして悩むことの重大さです。自分で進路を考えて泣くほど悩んだ人間は、結論を見つけられます。行き止まりについても、抜け道を自分で探せます。長男を見ていると、自分で進路を考えたことが無いように思います。実際に、今、大学にいてそこそこ好きなことを学べているわけですが、自分から「ここに行きたい」と言ったことがない。私は、進路の相談を受けたとき、「君の普段の言動から、こういう志向があるんじゃないかと思う」と幾つかの具体的な大学と学科名をあげたことを後悔しています。そこを、そのまま受けたから。高校受験のときもそうでした。
 やりたくないことは、やりたくないと言うので、やっているということは、やりたくないわけではないのでしょう。鬱病で二浪して半年休学したので今、24歳の大学3年生。絵を勉強しています。でも、自分が本当にしたいのは音楽ではないかと気付いたんだそうです。まだ、そう考え出したばかりなので、大学には通い続けています。卒業したら、今度は専門学校で音楽を勉強することになるかもしれません。
 私は、先のことなんかわかんないから、やりたいことが見つかったら、好きにしていいよ、というスタンスです。17歳のときから、大人に混じって仕事をしてきたので、いろいろな人と知り合うことになって、結構親しい関係で東大出て逮捕された人が二人います。実際に服役してきた人もいます。自分を殺していい子にしてると、大人になってから揺り戻しくるよなあ、と思います。
 何をするにも、親の希望より本人の希望。
 と言いつつ、親の希望を押し付けてしまったのが、長男なのかな、と感じています。
 そこで、反省したから、長女には何も押し付けない。それが不満だったと言われたのは、高校生になってからです。嫌だと言ったときにも、もう少し頑張ろうと背中を押して欲しかったんですと。
 押したら押したで文句言っただろうな、この子は。
 でも、そんな子だから、彼女はいろいろ大丈夫だと思っています。

 そんな彼女、最近もう一つ思い至ったことがあります。それが前述の「リングフィット」なんですよ。
 クラスメイトには、東大や京大、名大を目指して頑張っている子がいます。名大、行けたらいいよなーと思いながら(それは、世間体とかの問題ではなく、学びたい学科があるからということで)、でも、現実的ではない、と結論づけなければならない立場の彼女が思うのは、そういう子達はどこが違うかというと、意志が強く、根気が良いのだそうです。それで、我が家で一番意志が強く根気が良いのは誰かというと、お母さんだと。お父さんも意志が強いと思うのですが、あれは我が強いのであって、意志はころころ変わるんで強いとは言わないそうです。
「リングフィット」を始めるとき、毎回、登録者全員(我が家の場合は当然家族)の運動履歴が出るんですが、それで母親の値が突出しているのを見ると、ああ、あれが名大現役合格者の根気だあ、と思うのだそうです。お前とは違う、言われているとリングを立ち上げるたびに思うんですと。彼女が4歳の誕生日から中3まで通った極真空手の道場でも常に言われていました。
「継続は力なり」
 圧倒的な力を持っているわけではありません。一瞬に力を出してくる天才には敵わない。
 でも、何かを続けたら、それは続ける前よりきっとよくなる。

 長女は聡い子どもです。一を聞けば、十を推察します。
 長男は、一回ではわからない子でした。わからない、は継続中ですが、もう子どもではないので、過去形です。だから、十回くらい言います。
 次男は、時と場合によりますが、百回言ってもわからない子です。でも、二百回目にはわかるかもしれません。千回目かもしれません。だから伝え続けます。
 結局伝わらなかったら? そしたら、それはそういう案件だったんだと諦める。
 難しい子に向き合うときこそ、大切なのが継続なのでしょう。
 あれ、この子、これはできないのかな、と思っても、諦めるには、まだ早いことが、たくさんあるのかもしれませんよ。


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