2021.06.10
 前回、私が筋金入りのオタクであることに触れました。
 おかげさまで、成人済みも含めた子ども達とオタク趣味を共有しつつ、愉しい日々を送っております。オタクの気配が全く無い夫は蚊帳の外にいてもらいます。どうせ別居中ですし。
 彼の破天荒なキャラのおかげで、私の言ったり書いたりすることが深読みされがちなのですが、不仲が原因ではなく、コロナ別居です。昨年の春、動物写真家である夫はずっと家にいました。取材には行けません。結構需要のあった講演やセミナーも全てキャンセル。当然、身入りは零。
 これはいかん、と取材対象の近くに住まうことにしたわけです。彼が今撮ってるのは、モモンガとシマエナガ。どちらも北海道に生息する生き物です。そして、写真さえ撮れれば、どこにいても配信したり出版社や放送局と連絡したりできますから。

 もう一つ、深読みされるのは私達が結婚指輪をしていない理由です。今の日本で、既婚者でありながら指輪をしないというのは、かなりの少数派です。職場でも皆さん、しておられます。特に女性でしないのは珍しい。シングルマザーと勘違いされるときもあります。理由を訊かれることも多いので、正直に答えますとね。
「重いからです」
 これが仕事柄、束縛されたくないとか、彼の愛情が重いとかいう解釈になりがちなんですわ。
 物理的な問題なんです、シンプルに。
 重いんです、私達の結婚指輪。
 クリエイター同士がバブル期に結婚したんで、結構イキってたんですよ。凝ったデザインの太めの指輪をプラチナで作りました。若い頃は、それでよかった。お風呂に入るときも眠るときもしていました。私は。
 彼は早々に外しましたけど。理由はカメラに当たるから。
 子どもを連れて公園に通う頃には、日焼けの跡が残る程に、私と指輪は一体化していました。そして、月日が流れ四十路を越した頃、肩凝りに悩むようになりました。若い頃は、友達から肩凝りが酷いと言われても、肩凝りってどんな感じになるもんなんだろうって思うくらいだったのに。
 あるとき、エッセイ漫画を何気なく読んでいたら、作者さんも指輪をしていないとありました。理由は肩が凝るから、とあって、指輪で肩って凝るもんなのか、と外してみました。
 いや、治ったね、覿面に。
 以来、結婚指輪はせず、銀婚式以来は、そのときにもらったピンキーリングを外出時だけつけています。
 肩凝りと腰痛は、ニンテンドーのリングフィットアドベンチャーというゲームで更に改善しました。

 さて、そのように家族が分断されて新しい生活が始まりました。
 つくづく思うのが、子供が小さかったら、こういう選択はしなかっただろうということです。理由は二つあって、精神的に両親が揃っていた方が、子どもにとって良かったんだろうと思うから。これは、我が家の場合ね。二人でいることにデメリットがあれば、そこにこだわる必要はありません。いない方がいい親って、いるもん。これは、57年間生きてきて断言できる。
 どちらかの親が、理解がないとか非協力的だとかは良くある話ですが、それでも家族でいるべきかという問いの答えは、実は簡単で、家族でいたければいればいいし、そうでなければ、解体しても良いのです。答えを出すのと実行するのとではまた違いますが。
 もう一つは、シンプルに手の数ですよ。あと、外出するときの足。子ども3人いたら、世話をする手は多い方がいいし、車がなかったらかなり困っていたと思います。
 実際、彼が取材で長期に留守するときには、私の実家にかなり頼っていました。そして、帰ってくると、「誰、こいつ」状態でした。
 また、夫はバツ2なので、孤独への耐性が弱いのです。少しほっとかれると、自分が捨てられるという幻覚を覚えるらしい。別居なんて言ったら、パニックになっていたでしょう。
 家族が家族として時間を積み重ねて、それぞれが大人になったとき(我が家の場合、長女は現在17歳ですが、成人した兄達より成熟したメンタルを持っていると思われる)、離れていても家族であることができるようになるのです。
 ただ、それが成立するのは子どもの時代に、時間と思いをたっぷり共有し、正負の感情をしっかりと互いに分け合ったからです。
 私達は、どのような家族であるのかは、私達が決める。そこはぶれないようにしましょう。
 ママ友さん達の中には、上から物を言いたい人もいますから、こうしないと駄目、それはよくない、と言われることもあります。めちゃ経験したわ。先日などは、支配的なママ友さんの言いなりになって、母親が我が子を死に至らしめるという事件も報道されていました。
 さて、北海道で何十年かぶりに一人暮らしを始めた夫は、寂しいとか田舎だからとか愚痴りますがね。
 結構、楽しんでると思います。


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