2021.02.10
 子どもに見せるもの、触れさせるものに、どのように介入するか。
 子育てをしていると、考えさせられる機会は、絶対にありますね。
 最近だと「鬼滅の刃」を子どもに見せるべきかどうか、とか。
「見せるべき!」と力説してる人の言い分読んでると、ちゃんと見てねえんじゃねえの、と思うこともあるのですが、これ、議論することじゃないですよね。それぞれの家庭で決めたらよろしい。親の意向と、子の性格。
 それから、私、敢えて「見せていい」じゃなくて「見せるべき」という言い方をしました。だって、そういう論調多かったんですよ。「見せて良いか」という問いに対する「見せるべき」。実は答えになってない。
 そして、見せるべきマンガなんかねえわ、と私は思っています。好きなものを選べばいいんですよ。個人が。
 そもそも私が子どもの頃は、マンガなんか読んでると、テレビなんか見てると、アホんなるって言われてたんだから。
 私なんか、いつまでも(高校生になっても)マンガ読んでアニメ見てたから(本も半端なく読んでたけど)、すんげーバカとして扱われてたんだから。後に、高校生で作家になって、名古屋大学に入るまでは。 
 今なんか、マンガは紙媒体であるだけ、テレビは決められた時間にしかやらないだけマシ、とう位置付けです。
 スマホから無制限に流れて来る、動画やゲームの洪水に、子ども達をどこまでなら、晒して良いのでしょうか。だって、動画見てたらおとなしくなるもんね。これも、ケースバイケースですよ。
 私は、親が話しかけたり、一緒に遊んだりする時間が確保されているのなら、制限は不要だと思います。あと、親が不快に思う限界を超えなければ。

 子ども達の学習能力の発達は、大人から見ると羨ましいほど、速くて柔軟です。我が家の子ども達もスマホを手に入れた途端、次々と機能を駆使してできることを増やして行きました。それが最も顕著に見られたのが次男です。
 全体的には長男の方が、デジタル機器の扱いは得意です。ですが、次男は知的障害があるにも関わらず、いろいろできてしまうので、傍目には「できてる感」が高いのですね。教えなくてもできることも、沢山ありました。
 私が育児をしていた頃は、スマホはありませんでした。CD-ROMをパソコンにセットして、知育ゲームをさせていた時代から、インターネットで動画を見たりできるようになりかけた頃です。
 私が仕事をするときは、家族が寝静まってから、居間のパソコンに向かいます。今まさに、そうしています。ですから、パソコンで「遊んでー」と言われたときに立ち上げた画面がワープロソフトであることもあります。
 ある日、仕事をしようとしたら、ちょうど開いていたワープロソフトの画面に見慣れない文字列が並んでいました。
「あんはんまん はんこさん しのむおしさん ちれす」
 衝撃的だったので、今でもきちんと思い出せます。これ、「アンパンマン バタコさん ジャムおじさん チーズ」と書きたかったのですよね。当時、3歳くらいだった次男が勝手に入力したものです。私のキーボードはローマ字入力です。親の手元を見ての観察学習と、ローマ字の知識との合わせ技でしょう。基本は平仮名の平音で、濁音と半濁音は使いこなせていません。ですが、キーボードをこう押せば、文字がこう出る、と推測した能力は大したものです。しかし、日常生活に使うには、まだ当然ながら足りません。
 しかし、これは彼の強みになると思いました。育児をパソコンに頼らない、ではないのです。得意な分野は伸ばして使う、のです。小さい頃から、キーボードを自由に使わせたおかげで、彼は知的障害は中度でも、パソコンの操作には困らない大人になりました。
 でも、見かけの使いこなしに目を取られないようにも自戒しています。特別支援校の高等部では、キーボード入力の検定試験が受けられました。次男にとっては得意分野ですから、もちろん受験しました。日本語の文章入力に加えて英文も。実は小さい頃、次男は場合によっては英語の方がわかりやすい、という時期もあったのです。これは、様々な要素が絡んだ結果ですが。
 この検定は、準備用サイトもあるので、自宅で練習することもできます。普段、学校でしていることは、よくわからないので、家でできることがあると、嬉しくなります。英文の入力練習を見守りました。結構なスピードで、英文を打って行きます。でも、間違いを見つけたので、注意しました。
「esteemのeが一つ足りませんよ」
 彼は、心底わけがわからんという顔で聞き返しました。
「えすてぃーむは何ですか?」
 なるほど、文章を打っていたわけではないのだ。と得心した次第。
 彼は、目に入った文字を次々とキーボードで打っていただけでした。そこに、自分が打っているものは文章だとか、単語だとかいう概念はなかったわけです。意味がわかっているのと、わかっていないのとではえらい違いなのですが、高速でタイピングができている、という事実に目くらましをされていることがあります。過剰な期待は、人を幸せにしないので、気をつけましょう。

 デジタルツールとの相性の良い子であれば、日常生活の中で使い方を見ているだけで、自分のものにして行きます。それが、実は小さいうちは問題を起こすこともあるのですが、大人になってから大きな味方になることもあります。
 情報をうまく検索する能力を身につけるのは、今日の社会では大きな力になります。諸刃の剣ですが。
 次は、その諸刃っぷりについて、お話ししましょう。


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