2019.11.10
長男の小学校の途中から、運動会が5月末になりました。
きっかけは、校舎の耐震工事です。二学期は、それがあるから、今年は5月に行いますと、最初はその年だけ、という扱いだったと記憶しています。でも、行事が多い二学期から、運動会が抜けるのは、なかなか良い具合だったらしく、定着してしまいました。
梅雨が近いので、しょっちゅう雨が降ります。
秋にしたら秋にしたで、近年は雨が降り続いたり、台風が来たりしますけどね。
どっちも天候不順のリスクがあるなら、運動会は秋がいいなあ。小学校以外は秋で、やっぱりこれだよ、と感じたものです。
空が高くて、金木犀の香りがして、お弁当に青蜜柑が付いてくる季節。
子どもの頃、私の秋は運動会と神社の子ども獅子のお祭りから始まりました。

 さて、楽しい運動会ですが、全ての子どもが等しく全ての競技に参加できるわけではありません。身体的な問題で、余儀なく参加をしない、という状況はわかりやすいのですが、そうではないと難しいですよね。
例えば、気候に敏感で、ちょっとした風にも反応する子にとっては、一日中、外で座っているのは、大変なお仕事です。
 競技によっては、裸足になったりもしますが、足の裏に土がつくなんてとんでもない、という子もいますよね。同様に、衣装に鉢巻があったり、手首にリボン、なんてのがあると、それも駄目だったり。
そもそもちょっとしたことでスイッチが入って、いつもはできることが今日はできない、なんてこともあります。
こういったことは、さぼりとか、やる気がないだけとか、クラスの和を乱す、という扱いになりやすいのです。もっとちゃんとするべき、と言われてしまいます。普通級では、可能な限り担任の先生にご理解いただく努力をしましょう。
そして、親としては、普通に全競技参加して欲しいところではありますが、うまくいかないときには、そっとしておくしかありません。無理に引っ張り出そうとすると、余計に拗れます。

次男は、特別支援級に在籍していました。小学校では、「なかよし学級」と言って、可能な科目や行事のときに一緒に行動するクラスがありました。運動会のときも、そのクラスにいます。中学では、そういった制度はなく、支援級だけで活動していました。
なかよし学級にいるということは、支援級にいる子ども達がバラバラに座っているということです。そのときの担任の先生は分身の術を使っている、と支援級の保護者の間で言われていました。だって、私は、うちの子にずっと付いてるように見えて、他のお子さんに申し訳ないわ、とか思ってたのに、お友達のお母さんからは、
「ごめんなさいね、ずっとうちの子が先生独り占めしちゃったりして」
と言われたりしました。一日中、回遊魚のように、次々と出番を迎える子ども達のケアをしていらしたんですね。走り回るという印象はなく、静かに付き添ってくださっていました。もちろん、出られる子ばかりではなく、出られなかった子のケアも必要です。
練習中は出られたけど、急に出られなくなったり、直前で便意を催したり。

お母さんにもいろいろいらっしゃいます。3人の子ども達、障害があったりなかったり、男の子もいて女の子もいる私は、そう言ったお母さん達との交流から、心理学者としても作家としても様々なことを学びました。
次男がまだ低学年だったある年は、東京から引っ越してきたばかりのお母さんと一緒に運動会を見ていました。次男の徒競走、身長順に走ります。担任の先生は、ここでも抜かりなく、事前に何組目の何コースか伝えてくださっています。走るときには、伴走しながら写真撮影まで。
「ひまわりの子達みんな、普通に走るんだね」
そうです。うちの子達、身長は父親似で全員高いので、次男は後ろから2番目くらいで走ります。もちろん遅いよ。すごく遅い。でも、普通に走っても遅い子はいるし(うちの長男とか長女とか)、それでものすごく浮くということはない、と思います。
 うちの子より先に、ダウン症のお友達が走りました。高学年の女の子達から歓声があがります。
「かわいいー」
手を降って応えたりしているので、ただでさえ遅いのがもっと遅れます。
その様子が、そちらのお母さんには、意外だったようで。
 普通の子に混じって障害児が走るからには、手を繋いでみんなでゴールするとか、みんなで声援を送るとか、お約束に則った、ぬるい受け入れをするんだろう、と高をくくっていたんだそうです。
「かわいい、なんだ。頑張れ、じゃないんだ。すごく普通に受け入れてる」
言わされてるんじゃない、本音なんです。
だから、次男は特に何も言ってもらえません。キャラ立ってないんで。軽く「がんばれー」くらいです。
その人は、教養もあって、障害に理解があると自認していて、その分、他人は理解してないだろうと思い込んでもいて、子ども達のナチュラルさに戸惑ってしまったんですね。

スターターの音が怖かったり、みんなに手を振りながら走ったり、他のことは苦手でも、足だけは速かったり。
どんな子の、どんな結果も、親として笑顔で受け入れたいものです。
少なくとも、その日は。
反省会したかったら、別の日にしましょ。


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