2018.10.10
            案ずるよりも

                         堀田あけみ

 最近は、メール時々ランチ、だけのママ友関係の交遊ですが、子ども達が小さい頃は、毎日のように顔を合わせていました。公園や幼稚園の送り迎え等で。
 意外な顔をされることも多いのですが、うちの子ども達は保育園ではなく、幼稚園に通ってたんです。そのへんの事情については、稿を改めてお話ししようと思います。
 友達というのは、難しいものです。選び間違えてしまうということがあります。付き合いが深まってから、「あ、こんなはずじゃなかったのに」。そこからの人間関係再構築は、容易ではありません。
 これは、小さい子でもそうですし、ママ友さんでもそうなんです。

 長男が幼稚園の年少さんのときですから、もう二十年近く前です(と書いていて、ときが経つのはなんて早いんだろうと、本文とは無関係な感慨を、思わず記さずにはいられないんですが)。うちの子ども達が通っていたのは、私の職場の附属幼稚園です。
 また、余談に入ると、当初は本当に、9時から2時までしか、預かってもらえなかったんですよ。それから、4時までの延長保育が始まりました。私の子ども達は、ここで卒園してしまいましたが、その直後から母親が仕事をしている家庭に限り6時までになり、朝の早い時間も、受け付けてもらえるようになりました。そして、同じ敷地内に保育園もできました。加えて、認定子ども園も出来るようです。
 遅いよ、などと言わずに、子どもを育てる環境が整っていくことを、素直に喜びましょう。
 さて、私立の大学の附属幼稚園ですから、地元の子どもばかりではありません。遠方から、ベンツで送迎されるおうち(名古屋なんだから、プリウスに載れば良いのに)がだいたい3分の1くらい。3分の1が地元の女の子、残りが地元の男子です。
 となると、おかあさんのグループも固定されがち。本当に仲のよい人達だと、毎日のようにお茶やランチに出かけます。でも、仲がよいほど、こじれると厄介なのも事実で。
 とっても仲良しだった二人が、ある日を境に、目も合わせなくなりました。気の毒なのは、子どもの方で、昨日まで毎日一緒に帰っていたのが、突然遊べなくなってしまいます。幼稚園で一緒に遊ぶからいいっちゃいいんですが、一緒に幼稚園の帰りにケーキを食べにいったり、お洋服を買いに行ったりが、いきなりなくなってしまう。
 その理由は、互いの見解の相違だそうで。なんの。
「私は、私達がこのクラスでたった二人の20代ママだから、仲良くしてるつもりだったの。でも、あっちは、普通に気が合ってるだけだと思ってたって、バカにしてない?」
 特にしてないと思います。
「え、あなたそんなに若かったっけ、とか言うの。30よって言ったら、嘘、36に見えるって」
 あー。6歳は、きついかも。
「だって30なら20代じゃないじゃん、とかいうから、30代は31からでしょ、21世紀だって、2001年からだったじゃない、学校で習わなかったのかしら」
 すごくどっちでもいい話になってきた。
「でもね、一番腹立ったのは、36ってはっきり言われたこと。36ぐらいだったら、まだこんなに怒らなかったわ。36って断言したの、絶対許さない」
 大変に、どうでもいい例を見せていただきましたが、人間関係ってこんなもんかも、という意味では貴重な実例かもと思うのです。
 その後、一方は別のお友達をつくり、他方は誰ともつるまないことを選択したようです。

 家が近いとか、年が近いとか、子どもの性別とか、仲良くなるきっかけはそれぞれです。私が、こういう人は大切にしたら、と思うのは趣味の合う人。最初は子どもの話題からですが、それぞれの好きなものに話が及ぶと、やはり読書好き、手芸好き、演劇好きのお母さんとは、楽しい時間が過ごせます。子どものための演劇を一緒に見に行ったり。
 もちろん、子どもの問題一辺倒で、仲良くなるのもありで。
 上の二人が幼稚園のとき、仲良くしていたお母さん達は、みんな末っ子長女の母でした。幼稚園の隣で、4人の女の子を静かに遊ばせていたとき、若いお母さんが声をかけてきました。軽い世間話の後、
「ちょっと、込み入った話になりますが、みなさん、二人目についてどう考えておられるか、きいていいですか?」
 どうやら、それが本当に聞きたかったことのようです。
 その場にいた4人の女の子、合わせて10人のお兄ちゃんがいます。それで、ずいぶん驚かれて、よりによって、そういう人が集まっちゃったんですね、と言われたんですが。
 よりによって、じゃないと思うんですよ。やっぱり、子どもに対する価値観が似てるから、一緒にいたんじゃないかと思います。小学校低学年から幼稚園、複数の男子を抱える家庭環境も、共有できると支えになりますし。
 たまたま、通りすがりの方でしたが、
「案ずるより、産むが易し、なんですね。元気でました」
 と笑ってもらえて、幸いでした。
 実情は易くないけど、幸せです。




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