2018.07.10
              ホラーな季節

                         堀田あけみ

 ホラー映画やおばけ屋敷が苦手です。
 その一方で、ダークファンタジーや心理サスペンスは好き。往年の特撮ドラマ「怪奇大作戦」には、名作として、半端ないリスペクトを感じております。
 おとうさんも、怖いものは嫌い。高所恐怖症なので、絶叫マシンも駄目。ディズニーランドではイッツアスモールワールド、ディズニーシーではシンドバッドをエンドレスでリピート。カイトと。
 そんな二人の血を受け継いで、ビビリの三人ですが、コトコが一級品です。マナトは、小さい頃こそ、苦手だったものの、順当に学校の怪談的なものに興味を示す子どもになりましたが、コトコは中3になっても駄目。何が潜んでいるかわからないため、学校のトイレには極力行きません。パロディで最後のオチで笑わせてくれるとわかっていても、怪談ものはうけつけません。
 そんな彼女を悩ませる季節がやって参りました。受験生ができる範囲内で、友達と楽しい時間を過ごすことを一番重要だと感じている様子で、時間があれば友達とお出かけ。周囲はそろそろ、お化け屋敷とか行きたいわけで。最近のお化け屋敷、半端な怖さじゃないのでね。
「なんで夏には怖いイベントがあるんだろう」
「ぞっとして、涼しくなりたいからでしょ」
「エアコンかけとけよ」
 うむ。正論。
 我が家は名大が近いので、名大祭は近所のお祭り扱いになっております。コトコは美術部の仲間と一緒に行くのがお約束。
 私はとんと行ってないけど、今でもファイヤーストームの体育会対抗おかま大会があるのか気になります。少なくとも名称は変わっていそうです。私の所属していた弓道部は、連続優勝していたのですが、私の2学年下以降、見事にごつい男子しか入部せず、連勝ストップのまま卒業したのが心残りです。
 楽しかったら、今年は夜までいても良いのよ、と言おうとしたら、塾の実力テ 街のお化け屋敷は、怖いと同時に高いので、只で入れて、かなり力の入った名大祭のお化け屋敷はとっても手頃。コトコはずっと悩んでいました。
「どうやったら、断れると思う?」
ストがありました。
 キャラ的に、怖いから入りたくないって言えないとか、雰囲気を壊したくないとか、いろいろ考えちゃうんですね。結局、整理券が遅い時間しか取れなかったので、帰りましょうということで決着して、コトコとしてはハッピーエンドだったんですが。
 人は、どうして怖い思いを、わざわざしたいと思うんでしょう。すべて作りものだとわかってるのに、怖いんですから。でも、作りものだから怖くないとなると、なんのために入るんだか。
 以前、栄のオアシス21に夏季限定のお化け屋敷が造られました。名付けて、「都市伝説あきら2」。結構な入場料ですのに長蛇の列。中の悲鳴がリアルタイムで外に聞こえるシステム。なのに長蛇の列。
 出てきたときにはマジ泣き、なんてのは良い方で、途中で泣いてリタイアし、「入場料幾らしたと思ってんの」と親にキレられ、さらに号泣、というケースもございます。
「中、どんななんだろうね」
 コトコの疑問には、いい加減な答えを返しておきます。
「太った親父が、カメラに関する蘊蓄を語りながら、どこまでも追いかけて来んだよ」
 私は、本名は漢字ですがペンネームとして同じ読みの平仮名を使っています。偶然にも、おとうさんはその逆で、本名と同じ漢字を、なんていうんでしょう、アーティストネーム? として別の読みで使っています。その本名が「アキラ」なんですな。
 ちなみに、マナトは、
「今、友達にすんげー怖いお化け屋敷入ろうって誘われたらどうする?」
 と訊いたら、
「普通に入る」
 と答えました。
 私? 好き好んでは入りませんよ。どうしてもって事態になったら、すっごいびびりながら、平然とした態度を装って進みますけど。
 10年以上前ですが、メーテレで深夜に「ダムド・ファイル」というホラードラマを放映していました。名古屋の都市伝説をテーマにしたもので、半端ではない怖さでした。また、各回のサブタイトルがシンプルに怖い。「千種区・マンション」とか「北区・病院」とか。当然、夏の話ですから、見ているところにおとうさんが蛍の取材から帰ってきて、怒ること怒ること。
「なんで、そんなもん見てるの、辛い取材終えて家に帰ったら、いきなりグロ映像とか、なんなの、たった一人で旧の伊勢神トンネル抜けてきた直後に何すんの」
「一人でよかったですね。窓の外をばーさんが並走してなくて」
 こういうとき、すぐにネタを思いつく女と結婚したことを後悔するらしいです。
 コトコのビビリは、確実にこちらの血筋です。






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