2017.10.10
乗ってしまえば
堀田あけみ
小さい子がいるときの移動手段は、そりゃあ自家用車最強です。玩具やCD、場合によっちゃDVD、毛布におやつ、飲み物、着替え、おむつ、おしりふき。
子どものために用意しておきたいものは、山のようにありますもの。文字通り。全部乗せっぱなしにできるんですよ。
電車で不機嫌になる癖のある子もいるし。あ、マナトか。車だと、泣いても他人に迷惑はかけません。
まあ、泣かなくなっても、おむつが必要なくなっても、目的地の近くに確実に行ける車は便利です。私なんて、運転免許持ってなくて、おとうさん任せだから、尚更。
でも、大きくなってくると、バスや電車に乗るのも楽しいなって思えるようになりました。
私は車窓の景色を見るのが大好き。趣味です。何時間見てても大丈夫。ニュージーランドで、ほとんど牧草地だけの景色を10時間見てたこともあります。今も、お仕事で電車移動するときは、夢中で景色を見てしまいます。車に乗っててもそうなんですが、電車は席が高くて、視界がいいんです。
それを、子どもたちと一緒にできるのが楽しいです。
「あ、綺麗な鳥、コトちゃん、見て」
スマホ見てる。
「なんで、もっと早く教えてくんないの」
現実はこんなもんですが。
我が家には、当てはまりませんでしたが、男の子が往々にして見せる、「乗り物大好き!」ビーム、あれ、なんなんでしょうね。男の人になっても、だけど。電車だったり、働く車だったり。
すごく小さい子が、
「ときMax、乗りたいよお」
って、泣いてたりすると、よく知ってんなって思います。電車が好きだから、見せに行くと、乗りたがって泣かれて困るとか、ありますね。
うちは、マナトとコトコが、ポケモン好きなので、ポケモン電車には、目の色が変わりました。そういえば、今年は走ってなかったような。夏の映画公開に合わせて走るんですが、私が一人で仕事に行くときとかに限って、来るんですね。日間賀島の合宿の送り迎えの、カイトしか乗らないときとか。無駄だ。
でも、乗ってしまうと、普通の電車。「こういうのに、乗ったよ」という事実だけがそこにある。乗るまでは テンション高くても、目的地に着くまで保たなさそうです。
先日、家族旅行に行った際、子ども達の行きたいところが割れて、二チームに分かれることになりました。
カイトはおとうさんと車で、大阪にある「みさき公園」というところへ。理由、マリオのレトロなゲームがあるから。こういうことの情報収集能力は、抜群に高いカイトです。
でも、マナトとコトコは、白浜アドベンチャーワールドに行くって、前から計画してたんだよね。カイトに付き合っても、別に面白いことなさそうだし。
で、和歌山で別れて、大阪で合流。白浜から大阪に行く特急は1日6本。最終の一つ前に合わせて、アドベンチャーワールドを出ました。白浜駅は、思ったより小さな駅で、切符を買った窓口で、親切そうなお兄さんが、
「この号、パンダ列車ですよ」
と教えてくれました。発車より、随分早くから停まっていたので、改札を入ったら、いましたね。パンダをはじめとした動物が、沢山描いてあるだけでなく、車体の正面がパンダの顔になっています。新幹線を、無理からパンダにしたような感じをイメージしてください。かなり邪悪なパンダです。
乗っかる子ども達は大喜び。でも乗っちゃうと、ただの電車。
あ、レアな電車なんだ、と実感するのは、沿線で三脚立ててる「鉄オタ」を見るときくらいで。
当然、飽きてきます。ぐずったりもします。昔は、電車や飛行機に乗るときは、時間をつぶせるものをいっぱい持ってたなあ。我が家の必殺兵器は、付録付きの雑誌でした。「めばえ」「よいこ」「げんき」、付録で遊んだり、シール遊びしたり、読み聞かせしたり。いろいろ使える有能な雑誌でした。版元は、講談社や小学館。さすが、大手出版社はよく研究して作ってると感心したものです。今は、スマホがあれば、子ども達の時間はどんどんつぶれます。充電がもつ限り。
酔っぱらいとか、バカップルとか、不快な隣人に会ってしまうこともありますが、私にとっては、思わぬネタを拾ったりもできる、公共の交通機関は、楽しい空間です。